はじめに

タバタ式トレーニングは、タバタプロトコルとも呼ばれ、欧米ではアスリートだけではなく一般のフィットネスプログラムにも採用されています。
もともとはスピードスケートの入澤孝一氏が考案した方法ですが、田畑泉氏らが研究し、論文を発表したことで世界に広まりました。

この記事では、研究された理論、実践方法を踏まえてタバタ式トレーニングについてのメリットや効果などを解説していきます。

タバタ式トレーニングとは

タバタ式トレーニングとは、短い時間で高強度のトレーニングを間欠的に行い、有酸素運動と無酸素運動の両方の効果を得られるエクササイズです。以前は、有酸素運動と無酸素運動を別々で行わなければいけないというのが常識でしたが、タバタ式トレーニングでは両方同時に効果が得られるのです。

有酸素運動の主な目的は、呼吸器循環能力(酸素を多く取り込んで身体中に供給する能力)を向上させ、運動に対する持久力を向上させることです。その他にも脂肪燃焼効果があるとされ、ダイエットでは有酸素運動が主に行われます。

無酸素運動は、酸素を身体に取り込まずにエネルギーを作り出す必要があるため、短時間で行われます(短距離走、ウエイトリフティングなど)。大きな力を発揮したり、早い動きをするために必要な運動です。

タバタ式トレーニングの運動強度

タバタ式トレーニングの強度は、最大酸素摂取量170%を指します。一般的な有酸素運動に用いられるトレーニングは50~70%が適切とされ、それ以上は無酸素運動の状態です。わかりやすく心拍数を目安にすると最大心拍(220-年齢)の90%になります。20歳では、180の心拍数になる運動を行います。

運動時間はたったの4分間です。ただ、高強度の運動のため、ウォーミングアップ5~10分とクールダウン10分を合わせて行うことが推奨されるため、30分弱の時間が必要です。

20秒間の高強度の運動と、10秒間の休憩を6~7回反復するのがタバタ式トレーニング方法です。この反復運動を4分以内で行います。

タバタ式トレーニングのメリット

タバタ式トレーニングの一番のメリットは、短時間でも十分な運動効果が期待できることです。4分間の短時間のエクササイズであってもカロリー消費量は、1時間のジョギングと同等です。そのため、仕事や家事、育児などが忙しく、ジムや長時間のジョギングができなくても、僅かな時間でそれらと同様の運動効果が得られるのです。

本格的にスポーツをされているアスリートの方にもメリットがあります。ほとんどのスポーツ競技は、無酸素運動と有酸素運動が組み合わされています。それぞれのトレーニングを行うと時間もかかり、長時間の練習による疲労が溜まりやすくなります。
タバタ式トレーニングでは、4分間で有酸素運動と無酸素運動が行えることから、効率的に練習に取り入れられます。

タバタ式トレーニングの効果

タバタ式トレーニングを週2回を6週間行った場合の効果が、田畑氏の論文で発表されています。

・持久力を示す「有酸素性エネルギー(最大酸素摂取量)」が10%上昇
・中距離走の能力を示す「無酸素性エネルギー(酸素借)」が30%上昇
・最大酸素摂取量があがるため、糖代謝(インスリン感受性)が上がり、糖尿病のなど生活習慣予防になる。

最大酸素摂取量においては、60分間の有酸素運動を週5回、6週間行ったときと同等の上昇効果が認められました。

有酸素運動の効果があることから、脂肪燃焼やダイエットにもよいと伝えられることも多いようですが、田畑氏は短時間で行うため「脂肪燃焼効果をねらったものではない」としています。
ただ、タバタ式トレーニングで体重が減ったという報告も数多くあります。持久力の向上に伴う運動量の増加や、高強度運動によるカロリー消費がダイエット効果ももたらすといえます。

タバタ式トレーニングのメニュー

タバタ式トレーニングのメニューに特別決まったものはありません。しかし、気をつけたいのが運動強度です。6~7回で疲労困憊になる高強度の運動でなければ、論文で発表されている効果は得られません。

高強度の運動で単純なものは、ランニング(20秒間全力で走る)やエアロバイク(20秒間全力でこぐ)です。ポイントは全力で行うという一点だけですので、試してみてください。

最大酸素摂取量を増やすためには、大きな筋肉を使ったトレーニングが有効です。そのため、下肢のトレーニングメニューがタバタ式トレーニングに取り入れられることがい多いです。
注意として、運動を日常的に取り入れている上級者の方は、高強度の運動に入らないトレーニングもあります。6~7回で疲労困憊にならない場合は、メニューを変更してください。

では、メニューを紹介していきます。

バービージャンプの方法

① スタートポジションは立位になります
② しゃがみ込んでから膝を伸ばします。腕立ての状態から床に胸をつけます
③ ②の状態から立ち上がると同時にジャンプします。手を頭上でタッチします

①②③を繰り返して行いましょう。

ジャンピングスクワットの方法

① スタートポジションは、膝を45度程度に曲げます
(この時につま先→膝→股関節の付け根が一本のラインで繋がるようにしましょう)

② ①の状態からジャンプして、そのあとにスタートポジションに戻ります
※スタートポジションの膝の角度を深くすれば、負担が大きくハードなとトレーニングになります。

①②を繰り返す

ジャンピングランジの方法

① スタートポジションは、脚を前後に開くランジ姿勢にします
(前側は膝が90度、後ろ側は膝が床につくくらい)

② ①の状態からジャンプします。その時に、脚の前後を入れ替えるようにして着地します

①②を繰り返す
はじめは勢いをつけてやってしまうことが多いので、ゆっくり丁寧に行いましょう。
また膝を使うスクアットやジャンプは動きが正しくないと怪我をします。
極端に膝が内側に入ってしまったりしないようにしましょう。
つま先と、膝、股関節の付け根部分が線で結ぶと一本の線になるように使うと怪我の防止にもなります。
正しい動きを心がけて、安全にトレーニングできるようにしていきましょう。

タバタ式トレーニングの注意点

タバタ式トレーニングは高強度の運動です。疲労困憊まで繰り返すため、身体への負担も大きいです。ケガのリスクを最小限に抑えるために、しっかりと5~10分間のウォーミングアップを行いましょう。また、タバタ式トレーニングでは、クールダウンも推奨されています。疲労を回復させるという意味では、タンパク質、炭水化物などの補助食を摂取することも大切です。

運動初心者の方の場合は、ケガやモチベーションの低下で続けられなくならないよう、いきなり高強度にチャレンジするよりも徐々に負荷を増やしましょう。

おわりに

今回は、タバタ式トレーニングの方法や効果などをご紹介しました。4分間と短時間ではありますが、運動内容が「キツそう」と感じた方も多いのではないでしょうか?しかし、短時間で効果的に身体能力を向上させるには、タバタ式トレーニングはとても有効です。一つ上の身体能力を求める方にはおススメのエクササイズなので、この記事を参考にチャレンジしてみてください。

監修

・救急医、内科医 増田陽子

・救急医、内科医 増田陽子

専門分野 
微生物学、救急医療、老人医療

経歴
平成18年 Pittsburg State大学 生物学科微生物学・理学部生化化学 卒業
平成22 年 St. Methew School of Medicine 大学医学部 卒業
平成24年 Larkin Hospital勤務
平成26年 J.N.F Hospital 勤務

資格
日本医師資格
カリブ海医師資格
米国医師資格

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