はじめに

「肩甲骨」は背中の両側にあります。肩の後面に天使の羽のように見える三角形の骨です。
手足の骨と違って一見、役割があるようには見えませんが、下半身が骨盤を基盤として動いているように、上半身は肩甲骨を基盤として動いています。
そのため、肩関節をはじめとして腕の動きにはとても重要な骨です。
肩甲骨は、鎖骨や上腕骨と連結して肩や上肢の動きを作っています。
そこには多くの筋肉が関係しており、バランスを構成しています。
今回は、全身の健康に大きく関与する肩甲骨についてそのストレッチ方法や効果についてご紹介します。

肩甲骨ストレッチとは

肩甲骨は肋骨、胸骨、脊柱で成る樽上の胸郭(胸をとりまく骨格)にピタッと沿うようにして背中に位置しています。よって、肩甲骨から肋骨、上腕骨、頸部から背部に付く筋肉によって固定されることで位置が定められています。

「肩甲骨ストレッチ」とは、肩甲骨に付着しているそれらの筋肉を動かし、肩甲骨の動きを改善する体操のことを言います。

肩甲骨ストレッチのやり方

それでは、具体的な肩甲骨ストレッチのやり方をいくつかご紹介します。

1. 胸張り

1、両腕を身体の横に置き、腕は動かさずに肩甲骨を背中の内側に寄せます。
2、寄せれるところまで寄せたら脱力して元の位置に戻します。
3、肩甲骨を内側に寄せる動きがつかめてきたら、手を後ろにまわして両手でタオルの端を持ち、タオルを後ろに引くようにしながら肩甲骨を寄せます。このとき、腕だけが後ろに引かれるのではなく、肩甲骨の動きを強調することを意識しましょう。

どちらも10回程度行ってください。

2. 肩甲骨引き離し

1、身体の前で両手を組み、手のひらが自分の側に向くようにして思いっきり両手を前に出して両側の肩甲骨が外に離れるようにします。
2、しっかりと背中が伸びることを感じたら脱力し、また伸ばします。

この動きを10回程度繰り返します。

3. 頸部伸ばし

頸は正面を向いて背筋を伸ばし、頸だけを左右どちらかに倒します。
倒した方の手を頭の上にぽんと置くことで、手の重みを頭にかけるようにします。
倒した方と反対側の頸に伸張感を感じたらそこで10秒程度静止します。
ゆっくりと頸の位置を正面に戻したら、左右を反対にします。
左右のストレッチを1~2回ずつ行って下さい。
頭の上に置いた手で頸を引っ張ると神経を傷つける恐れがありますので注意してください。

4. ネコののびポーズ

正座で床に座り、手を伸ばした状態で手のひらを正面の床につけ、お尻が浮かずに前に伸ばせるところまで手を前方に伸ばします。猫が伸びをするときと同じポーズです。

背中が少し反るような形になり、背中から脇の下に伸張感を感じたら10秒程度静止します。

5. 背中擦りポーズ

1、両手でタオルの端を持ち、背中をお風呂で洗うときのように身体の後ろに回してタオルが縦になるようにします。
2、上になった方の手でゆっくりとタオルを引き、下になっている手が上に持ち上げられるようにします。
3、下になっている手の側の肩甲骨周囲に伸張感を感じたら10秒程度静止し、ゆっくりと元の位置に戻します。

この動きを10回程度繰り返します。引っ張り過ぎて下になっている側の肩関節(特に前側)に痛みを感じることのないように気をつけながら行って下さい。

6.肩甲骨回し

1~5のストレッチが終わったら、肩甲骨を大きく動かすことを意識して肩を前から後ろ、後ろから前に数回ずつ回してください。

肩甲骨ストレッチのコツ

1. ゆっくりとした呼吸をしながら行う

全てのストレッチはゆっくりとした呼吸でリラックスした状態で行って下さい。呼吸を止めてしまうと必然的に身体に力が入り、筋肉を伸張したり、大きな肩甲骨を動かすことができません。

2. 肩甲骨の動きを意識して行う

今回のストレッチは肩甲骨の動きをよくするために行っています。同じようなポーズをとっていても、肩甲骨があまり動いていない状態でできるものもあります。

しかし、それでは本来の目的が達成できませんので、ストレッチを行うときには必ずそのとき肩甲骨がどのように動いていて、どこが伸張されているのかを意識するようにしてください。

3. 無理のない範囲から動かしはじめて徐々に動きを大きくする

肩甲骨にかかわらず、関節の可動域を改善する際には一回のストレッチや体操では大きな効果が見られることはありません。ストレッチをやり始めるときは無理に大きく動かさないようにしてください。無理のない範囲で動かしていき、慣れてきたら少しずつ動きを大きくするようにしましょう。

肩甲骨ストレッチの効果

1. 肩こり、五十肩・六十肩の改善効果

肩甲骨ストレッチを行うと肩回りの血流が促進されます。肩こりは肩から頸部の血流が滞り、筋肉の動きが悪くなっている状態なので、このストレッチを行うことで肩こりの症状改善につながります。

また、五十肩・六十肩の方の多くは肩関節だけでなく、肩甲骨の動きが悪くなっています。肩甲骨の動きが悪くなることで肩関節に負担がかかり、余計に悪循環に陥ってしまいます。逆に肩甲骨の動きをよくすることで肩関節の負担を減らし、五十肩・六十肩の症状を改善できることもあります。

肩関節の炎症や運動時の痛みが強い方には専門家によるストレッチが必要ですが、軽症であれば肩関節の動きの少ないストレッチでも効果は十分期待できるので、無理のない範囲で行ってください。
肩甲骨ストレッチを行う事により、肩甲骨の動きを良くし
肩こりや五十肩・六十肩の改善が期待できます。

ただ、重度の方の場合ストレッチのみでは中々改善しずらいかと思いますので
一度身体の専門家にみてもらってはいかがでしょうか?

どの店舗/セラピストを選べば良いのか分からない、病院なのか治療院なのか
どこに行ったら分からない。

そのような方はこちらからケアくるLine@を友達追加し専門家に相談してください。

2. 姿勢の改善効果

日本人は猫背になっている人がとても多く、猫背は肩甲骨が外に開いた状態のまま動きにくくなってしまいます。肩甲骨ストレッチによって肩甲骨を動かすことで猫背姿勢が改善されます。姿勢が改善されると、頸部痛や肩こり、腰背部痛など姿勢に関与する症状が緩和されます。

3. 代謝向上によるダイエット効果

肩甲骨を動かすと、背中周りの筋肉や鎖骨周りの筋肉が動き、その周囲の血流やリンパの流れがよくなります。すると、その部位の代謝が向上し、脂肪が燃焼しやすくなります。肩甲骨ストレッチのみで体重の変化や全身のダイエット効果があるわけではありませんが、背中や鎖骨周りの脂肪が減り、シャープなラインのデコルテや肩甲骨がくっきり見える背中美人に近づくことができます。

4. ケガの予防効果

最初にも述べたように、肩甲骨は肩関節をはじめとする上肢の動きの基盤となる部位です。物を投げるという動作を例にしても、肩甲骨の動きに協調して肩関節、肘関節、手関節が動いています。ですから、その基となる肩甲骨の動きが小さければ大きい振りで躍動感のある投げを行うことができません。

肩甲骨が動いていないまま大きい動きをしようとすると、肩関節から先の関節の動きを大きくすることで投げようとしてしまい、肩関節から末端の負担が大きくなるので、ケガにつながってしまいます。肩甲骨をよく動かすことはケガの予防にもつながるのです。

おわりに

今回は肩甲骨のストレッチについてやり方や効果をご説明しました。

肩甲骨ストレッチは、現時点で肩甲骨周りにトラブルを抱えておられない方でも、肩こりや五十肩・六十肩の予防からスポーツによるケガの予防まで老若男女全ての方に効果的なストレッチになります。慣れてきたらさほどケアに時間も要さない簡単なストレッチですので、是非続けてみてください!

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野 
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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