首や首の後ろの痛みの原因

首の痛みが起こる原因として主なものをご紹介します。

■姿勢不良

脊柱(背骨)は、頸部(首)から腰部までが、積み木が重なって並んでいるような構造をしています。横から見た時に『生理的弯曲』と呼ばれる滑らかなS字カーブを描くことにより、脊柱にかかる衝撃を緩和したり、重心のバランスをとったりしています。
頸部は『軽度前弯(前方に凸のカーブ)』になっているのが通常ですが、猫背になって首が前に出た姿勢になると、その弯曲が崩れます。頭部が前方に出ることにより、頭部の重さを支えている首の負担が増してしまいます。

このような状態が長期間続くことで、首周りの筋肉のこりや頸椎の変形することがあります。また、頸椎ひとつひとつの間にあり、クッションの役割をしている『椎間板』が変形し、『頸椎椎間板ヘルニア』などの疾患を引き起こして首の痛みを発症してしまいます。

■首に負担のかかる作業の継続

普段姿勢が良い方でも、パソコン作業や洋裁などを行うときには、首が前にでた姿勢になりがちです。前に述べた姿勢不良の方のように、負担が首にかかってしまいます。
また、肉体労働などで重たい荷物を肩や頭の上に担ぐことが多々あると、首には圧縮ストレスがかかり続けます。

こうなると、頸椎椎間板ヘルニアや頸椎の関節の炎症を起こしてしまいます。

■首の筋力不足

頸部周囲の筋力が弱いと、頭部の重さを支えるだけですぐに筋疲労を起こしたり、頸椎の関節に負担がかかりやすくなったりするので、首のこりや痛みにつながりすいです。
また、頸部に衝撃が加わった際、頸部周囲の筋肉がしっかりしていれば力を入れて首を正しい位置に保持することができますが、筋力が弱いと、支えきれず首を傷めてしまうリスクが高まります。

■事故などによる頸椎捻挫

事故や転倒などで大きな衝撃が首に加わると、普段動かしていない範囲や本来動かない範囲まで頸椎が動いてしまうことがあり、頸椎の関節が炎症を起こす原因となります。
また、衝撃が加わるときに反射的に首を守ろうとして首の周囲の筋肉に普段以上の力が入ることにより、筋肉痛を引き起こすこともあります。

■寝違え

寝て起きた時から急に首に強い痛みを伴い、うまく動かせない状態が数時間から数日続くことを一般的に『寝違え』といいます。
これは首を横に捻ったり、上を向いたりした姿勢のまま長時間過ごすことが原因で起こります。筋肉や関節が伸びすぎた・短縮しすぎた位置で固まり、動かしにくくなってしまいます。

極端な姿勢を長時間続けたことで、筋肉や関節に炎症を起こしている場合もあるので、無理に動かすことは禁物です。時間をかけて徐々に動かしていく必要があります。

首の痛みに効くストレッチ

筋肉をゆっくりと伸張するストレッチを行うことで筋肉の緊張を緩和し、こり固まっている筋肉の血流を促してくれます。
ここでは、簡単にできる2つのストレッチをご紹介します。

■首のストレッチ(斜め)

1. 立位または座位で背筋を伸ばし、首を右斜め下に倒したら、右手を頭の上に軽く乗せます。
2. 首の左後方の筋肉に伸張感を感じたら、そのまま20間ほど静止します。
3. 手を離して頭の位置をゆっくりと元に戻し、左右を逆にして右後方の筋肉も伸張します。

■首のストレッチ(後ろ)

1. 立位または座位で背筋を伸ばし、下を向くように首を曲げます。
2. 頭の後ろで両手を組み、頭の上に軽く乗せます。
3. 首の後方の筋肉に伸張感を感じたら、そのまま20間ほど静止します。

ストレッチを行う際、頭の上に乗せた手で頭を強く押さえると、首の神経を引き伸ばして傷めてしまう可能性があります。手は頭の上に置き、手の重さを軽くかけるのみにしましょう。
首を振るような反動をつけながらのストレッチも危険ですので、一度頭の上に手を置いたら、静止してゆっくりと呼吸を続けてください。

首の痛みに効くマッサージ

マッサージにはストレッチ同様、筋肉の緊張を緩和するほか、周囲のその他の組織をほぐしたり、血流を促したりする効果もあります。
ここでは、安全で効果的な3つのマッサージのやり方をご紹介します。

■首の側面マッサージ

首の側面には『胸鎖乳突筋』や『斜角筋』と呼ばれる筋肉があり、縦方向もしくはやや斜め下に向かって走行しています。

1. 両手を軽く握ってこぶしを作り、左右それぞれの首の側面にあてます。
2. こぶしを軽く首に押し当てた状態で、ゆっくりと円を描くようにマッサージします。

強く押し当てすぎると血管などその他の組織を傷めてしまいますので、心地よい強さで行ってください。

■首の後方マッサージ

首の後方には『脊柱起立筋』や『板状筋』、『僧帽筋』の上部線維などがあり、いずれも縦方向に走行しています。

1. 両手の人差し指から薬指までの3本をそろえ、指先の腹を首後方の筋肉にあてます。
2. 縦方向の筋肉に対し、押し当てた指を外側から首の中心に向かってゆっくりと左右同時に動かします。筋肉を横断しては離すという動きを繰り返してください。
3. 一か所に対して何回か横断マッサージを行ったら、少しずつ上がったり、下がったりして部位を変えながら行います。

■首から肩のマッサージ

肩こりで不快感が起こる代表的な部位には、『僧帽筋』と『肩甲挙筋』という2つの筋肉があげられます。これらは、頭部後ろの下の方や、頸椎の側面から肩甲骨に向かって走行しています。

1. 左手なら右肩へ、右手なら左肩へというように左右どちらかの手を反対の肩にかけるように置き、人差し指から小指までの4本の指が肩にかかるようにします。
2. 肩にかけた4本の指をゆっくりと曲げ、肩の筋肉を圧迫しては離すという動きを繰り返します。

早いペースのマッサージでは、筋肉の深部までしっかりほぐすことができないので、ゆっくりと圧迫して離すようにしてください。

マッサージやストレッチの注意点

手足の関節に比べて脊柱(背骨)の関節は、可動域が小さく、周りにはたくさんの神経が走行しています。そのため、マッサージやストレッチを行うときは、いくつかの注意が必要です。

■強い炎症のある部位には行わない

マッサージやストレッチを行うと、筋肉やその周囲の組織の血流が促されて温まります。
痛みの原因が主に炎症である場合には、患部の安静をできるだけ保ち、炎症を抑制するために冷やすことが最適です。マッサージやストレッチを行うことにより、患部が温まると、逆に炎症を強めてしまうことになります。
頸椎捻挫による痛みや、ずきずきするような鋭い痛みがあるときは、炎症が強い可能性があるので、マッサージやストレッチは行わないようにしましょう。

■痛みを感じない強さで行う

マッサージやストレッチを行うときは、「気持ち良い」もしくは「いた気持ち良い」程度で行うようにしましょう。
痛くても我慢した方が効果的だろうと思う方もおられますが、強い痛みや鋭い痛みを感じるときは、筋肉や神経、関節を傷めてしまっている可能性があり危険です。

■呼吸を止めない

マッサージやストレッチ中は呼吸を止めないようにし、ゆっくりと心地良い呼吸を続けながら行ってください。
呼吸を止めてしまうと、無意識に体に余分な力が入ってしまい、マッサージでうまくほぐすことができなかったり、ストレッチで十分に筋肉を伸ばせなかったりすることがあります。

■後で痛みが増していないか確認する

マッサージやストレッチが強すぎて筋肉などを傷めてしまった場合や、炎症が原因の痛みでマッサージやストレッチ自体適していなかった場合、マッサージやストレッチの最中は痛みを感じずに気持ちよく行えた場合でも、その直後や翌日以降に痛みが増してしまうことがあります。
マッサージやストレッチを行ったあとには、必ず直後から数日後までに痛みの増強がないかどうかを確認しましょう。痛みが増してしまっている場合には、直ちに中止するようにしてください。

おわりに

今回は、首の痛みを引き起こす原因をご紹介するとともに、自分で簡単に行えるストレッチやマッサージのやり方をご紹介しました。
日常生活内の何気ない負担などで、誰でも首の痛みに悩まされる可能性があります。しかし、早い段階で対処することによって悪化を未然に防ぎ、こりや痛みと上手く付き合うことができます。
少しでも痛みや違和感があれば、ぜひ今回の内容を参考にし、マッサージやストレッチを試していただきたいと思います。

監修

・救急医、内科医 増田陽子

・救急医、内科医 増田陽子

専門分野
微生物学、救急医療、老人医療

経歴
平成18年 Pittsburg State大学 生物学科微生物学・理学部生化化学 卒業
平成22 年 St. Methew School of Medicine 大学医学部 卒業
平成24年 Larkin Hospital勤務
平成26年 J.N.F Hospital 勤務

資格
日本医師資格
カリブ海医師資格
米国医師資格

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