背筋とは?

『背筋』とは身体の背部にあるさまざまな筋肉の総称で、主に背中から腰にある筋肉が含まれます。
背筋に含まれる筋肉はそれぞれ少しずつ異なる役割をしていますが、全体としては体幹を伸展させる(身体を反らす)ことが主な作用になり、身体の前面にあり体幹を屈曲させる作用を持つ腹筋群とバランスを取りながら体幹部をコントロールしています。

自分でできる背筋のストレッチ

自分で行うことのできる背筋のストレッチの方法をご紹介します。
腰や背中の筋肉のコリや痛みは、ストレッチを行うことで症状が改善することが多々あるので、ぜひ試してみてください。

■広背筋ストレッチ

『広背筋』は背中から腰にかけて背筋の中でも最も大きな面積を占める筋肉です。体幹の伸展はもちろん、重たいものを持ち上げるときなどに大きな力を発揮します。
重労働をすることの多い方は、硬くなりやすい筋肉でもあるので、しっかりとストレッチをして柔軟性を保つことが大切です。

① 足が床につく椅子に座り、両足を軽く広げて踏ん張りやすい状態にします。
② 背中を背もたれから離して背すじを伸ばしたら、両腕を上に伸ばし、片方の手でもう片方の手をつかんでそのまま斜め前に身体を倒します。
③ 倒した方と反対側の腰に伸張感を感じたら、20秒間ほど静止します。
④ 片方がストレッチできたら、身体を倒す方向を変え、左右ともストレッチしてください。

■脊柱起立筋ストレッチ(頸背部)

『脊柱起立筋』は首から腰部まで背骨の両側に沿って走行する筋肉です。『最長筋』、『腸肋筋』、『棘筋』という3つの筋肉からなります。
体幹の伸展や側屈(身体を横に倒す動き)に作用しています。
ここでは、首から背中あたりの脊柱起立筋を伸ばす方法からご紹介します。

① 足の裏がしっかりとつく椅子に座り、両足を開いて踏ん張りやすいような体勢にしておきます。
② 頭の後ろで両手を組んだら、首、背中の順で上から身体を前に倒してゆっくりと丸めていきます。
③ 背中に伸張感を感じたら、その状態で20秒間ほど静止します。

■脊柱起立筋ストレッチ(腰部)

脊柱起立筋の中でも腰部の筋肉が硬くなると、腰痛になってしまうことが多いです。しっかりとストレッチを行って柔軟性を高めておくことが必要です。

① 床やマットに仰向けに寝て両足を両手で抱えます。
② お尻から腰にかけて伸張感を感じたら、その状態で20秒間ほど静止します。

膝を抱えるだけでは伸張感が感じられない場合は、頭も一緒に起こすようにすると伸張感を感じやすくなります。

■菱形筋ストレッチ

『菱形筋』は肩甲骨の内側にあり、肩甲骨を内側に寄せる(内転させる)筋肉です。
背筋とは異なりますが、背中のこりや痛み(背部痛)を感じるときには、菱形筋が原因となっていることもありますので、ストレッチ方法をご紹介します。

① 立位または椅子座位になり、両手を胸の前で組みます。
② 両腕を前に真っ直ぐ伸ばし、背中を丸めながら手ができるだけ身体と手が離れるように伸ばします。このとき、両方の手のひらは自分に見えるようにします。
(上の写真では手のひらが外向きですが、実際は自分に見えるように内向きにしてください)
③ 左右の肩甲骨の間に伸張感を感じたら、その状態で20秒間ほど静止します。

自分でできる背筋のマッサージ

背筋のコリを改善には、ストレッチの他にマッサージも効果的です。
背部に手が届きにくかったり、マッサージする部位に力が入ってしまったりして難しいと感じる方が多いと思いますが、一度やり方を覚えればしっかりとほぐせるはずです。
また、自分でマッサージを行うと、強さの調節がしやすく、気持ちの良い部位も自分でわかるので、必要な部位を必要なだけ手軽にほぐせるというメリットもあります。

マッサージには様々な方法がありますが、ここでは、『圧迫法』と『強擦法』を用いたマッサージの方法をご紹介します。
圧迫法とは、筋肉に対して垂直に数秒間圧をかけ続けてマッサージをすることです。解放した瞬間に筋肉への血流が良くなり、筋肉がほぐれます。
強擦法は、筋肉の線維に対して直角に横断するようにマッサージを繰り返してほぐしていくというものです。
いずれも強さは「痛気持ち良い」程度にし、強い痛みを感じることのないようにしましょう。

■自分の手でマッサージ

最も基本的なのは、自分の手でマッサージを行う方法です。
背中は人差し指から小指までの4本を当てて圧迫したり、圧迫した状態から動かしたりします。
腰部の場合は、親指を使ってマッサージをすると良いでしょう。座ったり立ったりしたままでもできますが、姿勢を維持するだけで筋肉に力が入ってうまくほぐせないこともあるので、こういった場合はうつ伏せになって行うと、やりやすいかもしれません。

■テニスボールマッサージ

自分でマッサージを行う際に役に立つのがテニスボールです。
テニスボールは身体にあてても痛くなく、体重をかけてもつぶれないので、マッサージにとても適した硬さです。大きさもちょうど良く、価格も手ごろです。
やり方は、テニスボールを床に置き、そこにほぐしたい部位が当たるように仰向けに寝転びます。そのまま数秒間圧迫し続けたり、少しずつ身体を動かしてほぐしたりすることができます。

■壁や椅子でマッサージ

背中のマッサージを行う際には、壁の角になっているところや木などの硬い素材でできた椅子の背もたれの角やでっぱりを使うと便利です。
ほぐしたいところを当てて体重を後ろにかけて圧迫したり、少し身体を動かしたりしてほぐします。

整体・整骨院、リラクゼーションサロンのメリット

ここまで自分で行うマッサージについてご説明してきましたが、整体や整骨院、リラクゼーションサロンといった場所でも施術を受けることができます。
セルフマッサージがうまくできない、なかなか効果が現れないなどの場合には、こういった場所で施術を受けるのも良いでしょう。
内容によって保険が適応される場合や、自費での施術になるところなど、形態はさまざまですが、お金を払って第三者に施術をしてもらうことのメリットもあるので、ご説明します。

■専門家の施術が受けられる

整体は整体師、整骨院では柔道整復師、鍼灸院では鍼灸師などの免許を持った方が施術を行っています。
また、マッサージ店には、あん摩マッサージ指圧師の資格を持った方が在籍しています。
身体の構造や筋肉のことを一般の方よりも詳しく知っている専門家ですので、自分で行うよりも効果的な施術を行ってくれることが期待できます。

■リラックス効果がある

筋肉のこりや痛みを感じたとき、いつでも自分でマッサージができることは一つの安心材料になります。
しかし、やはり整体やサロンなどで横になった状態で第三者に施術してもらうと、全身脱力した状態でマッサージができるので、リラックス効果が高まり、精神的にも癒されます。

おわりに

今回は背部のストレッチやマッサージについてご紹介しました。
コリや痛みを感じなくても日常的な身体のケアとしてストレッチやマッサージを行うことで、腰痛や背部痛を予防したり、身体の柔軟性を高めたりすることにつながります。ですので、ぜひ腰背部のケアを生活の一部に取り入れていただきたいと思います。
また、自分でケアを行っても症状が長引く場合は、整形外科や治療院などで専門家から治療を受けたり、ケアのアドバイスをもらったりするのも良いでしょう。
自分に合ったケアの方法を見つけ、痛みやコリのない生活を送っていただければと思います。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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