関節痛の原因と種類

『関節痛』とは、疾患の名前ではなく、症状のことです。ここでは関節痛の定義を「炎症や外傷など様々な要因によって関節部に痛みが生じるもの」とします。

この関節痛ですが、原因と種類は多種多様となります。そのため、今回は代表的なもの2つに限定し、原因と種類をご説明します。
(ここでご説明する分類は学問的に使う分類でなく、一般の人に関節痛を分かりやすく説明するための分類と考えてください)

1. 関節軟骨の変性や摩耗による関節痛

関節は骨が連結している部分ですが、この連結している部分は、非常に滑らかで滑りやすくなっています。この滑らかな部分を、『関節軟骨(硝子軟骨)』と呼びます。

関節軟骨は関節内にあります。
普通、体内の組織には血液によって栄養が運ばれますが、関節内には血管がありません。
関節内に血管がないため、変性や摩擦によって破壊されると、血液による回復が起こりにくく、元の状態に戻らないことが多いと考えられます。

この破壊された部位が進行すると、関節軟骨の下の骨から、滑らかでない骨が出てきます。この骨がトゲのようになるのが要因で、関節痛を起こすことがあります。
これの最も代表的な疾患が、『変形性膝関節』と『変形性股関節症』です。※参考1

その他にも、膝関節中に存在する『半月板』の損傷も、関節痛の要因となります。こちらはスポーツする人や過去に前十字靭帯断裂をしたことがある人がなりやすいようです。

2. 関節の支持組織の損傷による関節痛

関節は『関節包』と呼ばれる袋で覆われています。
関節包とは別に、関節の安定支持のために働く繊維の強い部分を『靭帯』と呼びます。関節はこの関節包や靭帯、周辺の筋肉により、関節が外れたりしないように良い状態を維持できるのです。

これらの組織に外からの力や変性が加わって損傷した場合、関節痛が発生します。
代表的な疾患は『関節捻挫』や、肩の痛みの要因となる『肩関節周囲炎』などが有名です。

関節痛を予防するエクササイズ

始めにご紹介した「関節軟骨の変性や摩耗による関節痛」の原因として代表的なものが、『変形性膝関節症』です。
これは高齢者が患う骨・節疾患では、腰痛や背中の痛みと並ぶ、最も多い疾患です。
症状が進行すると、最終的には、手術によって人工の関節に置き換えなければならないので、できるだけ予防したいものです。

そこで今回は、変形性膝関節症予防のエクササイズをご紹介します。
変形性膝関節症の予防で大切なのは『筋肉のサポーター』を作ることです。※参考2

関節痛予防のエクササイズⅠ

太ももの前側にある『大腿四頭筋』と、後ろ側にある『ハムストリングス』を同時に収縮されるエクササイズです。これにより、膝関節の痛みを予防できます。

① 足を投げ出して長座の姿勢で座ります。
② 片方の膝の下にタオルを丸めて入れます。タオルは膝がある程度曲がる厚さにしてください。
③ 膝の下のタオルを潰すように力を入れ、足が真っすぐ延びた状態で5秒間維持します。
④ 足の力を抜いて元の位置に戻ります。
⑤ 手順③~④の運動を10~20回繰り返します。これを1セットとし、3~4セット実施しましょう。

関節痛予防のエクササイズⅡ

お尻の外側にある『中殿筋』のエクササイズで、膝や股関節の痛みの予防につながります。

① 横向きに寝ます。
② 上側にある足を床から10~20cm程度浮かせ、5秒間維持します。
③ 足の力を抜いて床に下ろします。
④ 足を浮かせて下ろす運動を10~20回繰り返します。
⑤ 身体の向きを変え、反対側の脚も同じように動かします。
⑥ 片側10~20回を1セットとし、3~4セット実施しましょう。

関節痛予防のエクササイズⅢ

下肢全体を強化すことができるスクワットをご紹介します。

① 足を肩幅より少し広く開き、つま先を外側に向けて立ちます。
② やや胸を張り、顔は常に真っ直ぐ前を向きます。手は組んで頭に乗せるか、腰に手を当てます。
③ 腹筋とお尻に力を入れ、膝が前に出ないように意識しながら、膝を曲げて椅子に座る感覚でお尻を下げていきます。ゆとりがあれば、ゆっくりと下げましょう。
④ お尻が膝よりやや下まで来たら、元の姿勢に戻ります。
⑤ お尻を下げて上げる動作を10~20回繰り返します。これを1セットとし、3~4セット実施しましょう。

関節痛を予防するストレッチ

変形性膝関節症を予防するストレッチⅠ

太ももの裏側にあるハムストリングスのストレッチです。

① 右脚を伸ばして座ります。左脚は膝を曲げ、足の裏を右脚の太ももにつけます。
② ゆっくりと息を吐きながら、へそを右脚の先へ近づけるように上体を倒します。
③ できる人は右足を両手でつかみながら体を引き寄せます。
④ 20~30秒間ほどキープしたら、元に戻します。
⑤ 脚を入れ替え、反対の脚も同様に行います。

変形性膝関節症を予防するストレッチⅡ

太ももの前側にある大腿四頭筋のストレッチです。

壁に向かって立ちます。 左手を壁についてストレッチ時に転倒しないようにします。
右膝を曲げて足を持ち上げ、右手で右足首を握ります。
右足のかかとをお尻に近づけるように手で引っ張ります。
少しだけ身体を反ると、脚のつけ根にある『腸腰筋』もストレッチされます。
20~30秒ほどキープしたら元に戻します。
脚を入れ替え、反対の脚も同様にストレッチします。

その他の関節痛の予防・対策

1. 肥満体型の人は体重を減らす

食事療法や運動を行って減量することにより、『ADL(日常生活に必要な動作)』の能力や、持久力が向上し、膝の痛みの強さが改善されるという研究も多くあるようです。

肥満体型の方は、パンやお菓子など炭水化物を制限するなど、無理のない食事制限から始めましょう。

2. 偏平足の人はインソールを入れる

人間は歩くときに足底の踵から体重が加わり、つま先の方向に体重を移動させます。これにより、必要以上に足関節や膝関節にかかる負担を減らしています。

しかし、偏平足だと、足関節や膝関節の負担が増えると言われています。
そのため、偏平足の方は、足底アーチを補正してくれるようなインソールを挿入すると良いでしょう。

おわりに

関節痛について原因や症状、予防・改善の方法をお伝えしました。

どんな疾患でも、疾患を治す労力より、疾患を防ぐ労力の方がよっぽど少ないのではないでしょうか。
関節痛を感じて初めて、この疾患の辛さや日常生活の苦労が分かると思います。少しでも関節痛を防げるよう、日々の生活にストレッチやエクササイズを取り入れて欲しいと思います。

参考文献

参考1,2
【タイトル】標準整形外科学(第9版)
【総編集】鳥巣 岳彦、国分 正一
【出版社】医学書院

監修

・救急医、内科医 増田陽子

・救急医、内科医 増田陽子

専門分野
微生物学、救急医療、老人医療

経歴
平成18年 Pittsburg State大学 生物学科微生物学・理学部生化化学 卒業
平成22 年 St. Methew School of Medicine 大学医学部 卒業
平成24年 Larkin Hospital勤務
平成26年 J.N.F Hospital 勤務

資格
日本医師資格
カリブ海医師資格
米国医師資格

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