ぎっくり腰とは

ぎっくり腰とは、急激に腰が痛くなる急性腰痛です。
突然、強い痛みにおそわれることから「魔女の一突き」と表現されることもあります。

何らかの原因により腰部周辺の組織に炎症が起こったことにより強い痛みにおそわれます。
ぎっくり腰と同じように、炎症による強い痛みを感じるケガには、捻挫、強い打撲や突き指などがあり、それらと同様と考えるとぎっくり腰の痛みも理解できるのではないでしょうか。

また、腰の組織が炎症を起こしている主な部分は、椎間板、筋肉、靭帯の3つです。
それぞれの組織によって痛みが改善される期間も違うと考えられます。

ぎっくり腰の症状

ぎっくり腰の症状はこちらです。

・少しの動作(前かがみ、歩く、しゃがむなど)でも腰に激痛がはしる。
・座っているだけでも腰が辛い。
・足にしびれ症状を引き起こすこともある。
・くしゃみ、咳などで痛みが強まるときがある。
・寝返りも困難になるときがある

痛みの強さ、困難な動作などは人それぞれ違いますが、とても辛い症状を伴います。

ぎっくり腰の原因

痛みの原因は腰部に起こった炎症です。
炎症は48~72時間でおさまるため、多くのぎっくり腰は自然に痛みが改善されます。
しかし、炎症を引き起こした原因が解決されないと、またいつ、どこでぎっくり腰になってしまうかわかりません。

ここではぎっくり腰の炎症を起こしてしまう原因についていくつか解説していきます。

身体の使い方の問題

知らず知らずのうちに腰への負担がかかる動作を繰り返していませんか?
ぎっくり腰の痛む場所の一つに椎間板(骨と骨の間にあるクッション作用のある組織)があります。
椎間板は、前かがみから身体を捻る動作で痛めやすい組織です。
重い荷物を前かがみでもって、左右のどちらかに置くような動作により痛めてしまうリスクが高まります。

日常から偏った身体の使い方(腰を丸めることが多い、左側に重心をかけることが多いなど)、スポーツでの悪いフォームや、疲労からの動作不良などでも、腰に負担をかけるとぎっくり腰を引き起こします。

運動不足

デスクワークだからぎっくり腰にならないとは限りません。
常に同じ姿勢を続けると筋肉のバランスが崩れたり、筋肉本来の柔軟性が損なわれることで腰部への負担となります。
ぎっくり腰になったときの状況を聞くと「しゃがもうとした」「床の物を拾う」など些細な動作でぎっくり腰になることも多いです。
このことから、運動不足によりぎっくり腰になることもあると言えます。

日常生活の不摂生

睡眠不足、食べ過ぎ、飲み過ぎなどにも配慮が必要です。
身体の疲れが蓄積するので、腰部に負担がかかる動きに耐えられず、ぎっくり腰を引き起こしてしまうことがあります。
食べ過ぎ、呑み過ぎは内臓への負担も大きいです。
身体に炎症が起きやすい状況になっていることも否定できません。
睡眠不足や暴飲暴食などの生活不摂生により、状態が悪化することもあるので注意しましょう。

ぎっくり腰にならないための運動

運動は、ぎっくり腰に限らず身体を健康に保つために大切です。
激しい運動ではなくても良いので生活習慣に取り入れましょう。

運動の苦手な方は、無理にスポーツ教室やジムに通う必要もありません。
家事でも十分な運動になりますし、近所のお店には歩いて出掛けたり、家庭菜園を始めてみたり、身体を動かす習慣をまず作ってみましょう。

ここからは、ぎっくり腰の予防になるストレッチとエクササイズをご紹介します。

腸腰筋ストレッチ


①足を前後に開きます。
②前側の脚は膝を90度くらい曲げ、後側の脚は膝と足の甲を床につけます。
③前側の膝をさらに曲げていくと後側の脚の股関節の前辺りが伸びているのを感じます。
④気持ちよく伸びている所で静止をして20秒程度ストレッチします。

※後側になる方の腸腰筋をストレッチさせます。

腰への負担を減らすためには、股関節の柔軟性を保つことが大切です。
また、ここで紹介する腸腰筋は腰部の背骨にも付着しているため、この筋肉が固くなるとぎっくり腰を引き起こしやすくなります。

ぎっくり腰の予防に腸腰筋のストレッチを取り入れてみてください。

大殿筋エクササイズ


①仰向けで寝て膝を曲げ、お尻に踵を近づけます。
②①の状態からお尻を床から離します。
③太ももと体幹部が一直線になるまでお尻を上げます。
④③の状態まで行けば、ゆっくりと①のポジションまで戻ります。


①~④を繰り返し、まずは15回を目標に行います。

※楽にできる人は片足での大殿筋エクササイズに挑戦してください。

片足大殿筋エクササイズ
①仰向けで片側の脚は寝て膝を曲げお尻に踵を近け、片側の脚は伸ばした状態にします。
②①の状態からお尻を床から離します。
③太ももと体幹部が一直線になるまでお尻を上げます。伸ばしている側は膝を伸ばし、体幹部と一直線にします。このとき体幹部が捻じれないように注意してください。
④③の状態まで行けば、ゆっくりと①のポジションまで戻ります。

大殿筋はお尻の筋肉です。
大殿筋は、股関節を動かす筋肉であり、身体の中でも大きい筋肉です。
大殿筋を意識してしゃがんだり、立ったりすることで腰にかかる負担が軽減できます。
それに伴い、腰部を安定させることもできるため、ぎっくり腰の予防になります。

もしぎっくり腰になった時の対処法

ぎっくり腰を気をつけていたとしても、その時の体調、仕事環境などによりぎっくり腰を引き起こしてしまうことがあります。ここではぎっくり腰になったときの対処法をご紹介します。

炎症のコントロール

一般的に炎症は48~72時間続くと言われるため、ぎっくり腰もそれと同じ期間痛みが継続すると考えられます。
以前は、アイシングにより炎症を抑える方法が良いとされていましたが、炎症は身体を修復させる大切な反応でもあるため、抑え過ぎるのはかえって症状を長期化してしまう恐れがあると言われるようになりました。

ただ、痛みが強すぎる状態を慢性化させてしまうことも良くないため、抗炎症剤(ロキソニン、ボルタレンなど)の服薬により炎症を抑えて痛みを緩和させることも大切です。
そのため、痛みが強い場合は病院を受診し、医師の判断を仰ぐようにしてください。

可能な範囲で動く

安静はかえって症状を長引かせます。
そのため、痛みの少ない動きを探りながら可能な範囲で身体を動かしていきましょう。
ただ、痛みを我慢して動かしてしまうのは、組織を余計に痛めつけることにもなり兼ねないため、必ず痛みの和らぐ動き、もしくは痛みのない動きを心掛けてください。

腰を温める

急性期を過ぎると、腰を温めた方が、血液循環が良くなり、回復が早まると考えられます。
腰を温めても痛みが変わらない場合や、症状が楽になる場合は、とくに温めることをおすすめします。
温めた時に痛みがひどくなるようであれば、すぐに中止してください。

治療院に通院する

個人ではどうにもできない痛みを、治療院に通院することで症状を緩和することが可能です。
治療院では、その症状に合わせて様々な治療方法を提案してくれます。
マッサージやストレッチ、鍼治療や、エクササイズなど多くの選択肢があります。
患部だけでなく、痛みに関連している部位に治療を施すことで無理なく治療をする方法もあります。

通院する前に、しっかり状態を判断して治療できる治療院やセラピストを選びましょう。
調べてもわからない方は、周りの方に評判を聞くのも良いです。
しっかりと丁寧に説明してくれる治療院を選ぶことをオススメします。

また、痛みが強すぎて外出できない場合も考えられます。
そんな時は、近くの治療院から往診をお願いすることも可能です。
往診に対応している治療院であれば、直接来てもらい治療を受けることが可能です。
ぎっくり腰や怪我の場合は、初期の治療が早い方が予後が良いことが多いです。
我慢せず気軽に相談してみましょう。

おわりに

今回の記事では、ぎっくり腰の原因、予防方法、対処方法を中心に解説しました。
ぎっくり腰の経験者は2度とあの痛みは経験したくないと思うものです。
普段、腰を使う仕事をされていて心配されている方もいらっしゃると思います。

予防においては個人に合ったものを行うことがベストです。
もっと深く知りたい方は、信頼できる専門家に相談してみましょう。

痛めてから対処するのではなく、予防する意識をもつことがとても大切です。
予防意識を高めて毎日、快適な生活を送ってください。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野 
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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