腹筋の構造

『腹筋』とは、腹部にある筋肉の総称です。
腹筋群全体では、体幹の『屈曲(身体を前に曲げる動作)』を主に行います。
また、腹筋には『腹直筋』、『外腹斜筋』、『内腹斜筋』、『腹横筋』という4つの筋肉があり、それぞれ異なる役割を持っています。

シックスパックを作る『腹直筋』

腹直筋は、腹筋群の中で最も浅層にあります。みぞおちから恥骨まで、腹部の前面を走行している筋肉です。
腹直筋が発達している方は『シックスパック』と呼ばれるように、体表からでも腹直筋の膨らみを見たり、触れたりすることができます。
身体を前に曲げる動作に作用しており、身体を反らす作用のある背筋とバランスをとることで、姿勢を支えるのに大きく関与しています。

くびれを作る『腹斜筋』

腹斜筋は腹部の両側面(脇腹)にある筋肉で、『外腹斜筋』と『内腹斜筋』に分かれています。
外腹斜筋は肋骨外面から始まり、前下方に走行して足のつけ根の前面や、腹直筋の外縁に付着しています。

内腹斜筋は腰部や骨盤の骨から始まり、前上方に走行して腹直筋の外縁に付着しています。
体幹部を右にひねるときは、左の外腹斜筋と右の内腹斜筋が作用し、左にひねるときは右の外腹斜筋と左の内腹斜筋が作用します。いわゆる『くびれ』を作る筋肉としても知られています。

ぽっこりお腹を防ぐ『腹横筋』

腹横筋は腹筋群の中で最も深層にある筋肉です。
腰痛で使用するコルセットのように、骨盤と肋骨の間に巻き付くように走行しています。
腹横筋は腹筋群の中で唯一体幹を動かす作用ではなく、『腹圧を高める』という作用を持っています。
風船を膨らませるように腹部の内圧を高めることにより、身体を安定させたり、手足の力を発揮したりします。

自宅でできる腹筋の筋トレ7選

■ドローイン

ドローインは腹横筋を鍛えるトレーニングです。
腹横筋は他の腹筋群のように大きな筋力を発揮する筋肉ではありませんが、腹筋群の中で最も深層にあり、身体を安定させる筋肉です。そのため、腹横筋の機能が高まることで、他の腹筋群の力を発揮しやすくなります。
そういった理由からも腹筋トレーニングの最初に行うことをおすすめします。

① 両膝を立てて仰向けに寝て体の力を抜きます。
② 両手を体側の床面か、下腹部に軽くあてるように置きます。
③ 3~5秒かけてゆっくりと息を吸いながら、お腹をふくらませます。
④ 5~10秒かけ、吸ったときよりもゆっくりと長く息を吐きながら、お腹をへこませます。
⑤ 手順③、④のお腹の動きを協調させた呼吸を繰り返し行います。

■トランクカール

トランクカールはシックスパックを作る腹直筋を鍛える代表的なトレーニングです。

① 両膝を立てて仰向けに寝ます。
② 両手を頭の後ろまたは胸の前に組みます。
③ へそをのぞくようにしながら、頭、肩甲骨の順に持ち上げます。
④ 下ろすときは肩甲骨、頭の順にゆっくり下ろします。
⑤ 手順③、④の動きを繰り返し行います。

このやり方で物足りなくなってきた方は、肩甲骨まででなく、身体全体を起こすようにしてみてください。
ただし反動は使わず、起きるときも戻るときもゆっくり動くようにしてください。

■レッグレイズ

腹直筋を鍛えるトレーニングです。トランクカールが頭側を動かすのに対し、レッグレイズでは足側を動かすので、特に下腹部の筋肉に高い効果があり、下腹を引き締めます。

① 両膝を立てて仰向けに寝ます。
② 両手は頭の後ろに組むか体側の床の上に軽く置いておきます。
③ ゆっくりと両足を上げていき、両脚が床と垂直になるまで上げます。このとき、膝は軽く曲げておきます。
④ ゆっくりと両足を下ろしながら膝を伸ばしていき、足が床につく一歩手前まできたら、またゆっくりと両足を上げていきます。
⑤ 手順③、④の動きを繰り返し行います。

■トランクツイスト

トランクツイストはくびれを作る腹斜筋を鍛えるトレーニングです。

① 両膝を立てて仰向けに寝ます。
② 両手を頭の後ろまたは胸の前に組みます。
③ 左肘が右膝につくよう、斜めに捻りながらゆっくりと起き上がります。
④ 左肘と右膝がついたら、ゆっくりと仰向けに戻ります。
⑤ 今度は右肘が左膝につくよう、斜めに捻りながらゆっくりと起き上がります。
⑥ 右肘と左膝がついたらゆっくりと仰向けに戻ります。
⑦ 手順③~⑥の動きを繰り返し行います。

■サイドブリッジ

サイドブリッジは腹横筋や外腹斜筋を鍛えるトレーニングです。
脇腹の筋肉を鍛えることで、お腹の横側を引き締めることにつながります。

① 床に横向きに寝て、下になる方の肘から手首を身体の真横で床につき、上半身を支えるように起こします。
② 股関節や膝を伸ばし、身体を上から見たときに頭の先から足首までが一直線になるようにします。
③ 下になっている側の足の側面と、肘から先だけが床につくように腰を上げます。このとき、身体を正面から見たときに頭の先から足の先までが一直線になるようにしましょう。
④ 手順③の姿勢まで腰を上げたら、ゆっくりと下ろし、再び上げるという動作を繰り返し行います。
⑤ 片側が終わったら、身体の左右を変えて反対側も同じように行います。

■プランク

プランクでは、体幹部を浮かした状態で良い姿勢を保持することで、腹筋と背筋をバランスよく使ってトレーニングすることができます。

① 床に四つん這いになります。
② 肘を90度に曲げ、左右の肘から手首を平行にして床につきます。このとき、両腕は肩幅くらいに開きます。
③ 脚を真っ直ぐに伸ばしてつま先だけ床につくようにし、腕とつま先だけで身体を支えます。横から見たときに、肩から足首までが一直線になるように身体を浮かせます。
④ 呼吸を止めることなく身体を支え、30~60秒間(慣れるまでは10秒間から)この姿勢を維持します。

腰が反り過ぎたり、丸まったりしないよう、下腹を軽くへこませる意識をしましょう。
また、肩に力が入り過ぎて肩がすくまないようにしてください。
肘でしっかりと床を押すことも意識し、肩甲骨が背中から浮き出ないようにしましょう。
筋力的にこの姿勢を保持することが難しい方は、つま先でなく膝をつき、膝下は床につかないように曲げて浮かすようにすると負荷が下がります。

■サイドプランク

横向きで行うプランクで、サイドブリッジの姿勢を保持するトレーニングです。
基本のプランクよりも難易度が高く、バランスが取りにくくなります。体幹の安定性に大きく関与し、基本のプランクで収縮できる腹横筋をさらに収縮させることができます。
横腹の引き締めにも大変効果的なので、気になる方には特におすすめのトレーニングです。

① 床に横向きに寝て、下になる方の肘を曲げて肘から先を床につきます。
② 身体を上から見た時に、肩から足首が一直線になるように姿勢を整え、下になっている側の足の側面と肘から先だけが床につくように腰を浮かせます。
③ 呼吸を止めることなく身体を支え、30~60秒間(慣れるまでは10秒間から)この姿勢を維持します。

サイドプランクもプランク同様、筋力的に姿勢の保持が難しい場合は、足の側面ではなく膝の側面をつくようにすると負荷が下がります。このとき、両膝は90度程度に曲げ、肩から膝が一直線になるようにします。

その他の腹筋のトレーニング

腹筋のトレーニングというと、これまでご紹介した筋トレがメインになりますが、その他にも、腹筋を鍛えられる運動があります。

■スクワット

スクワットは主に下半身の総合的な筋力トレーニングとしてよく行われます。
下半身の関節の曲げ伸ばしを行うなかで、体幹部を常にニュートラル(まっすぐ)な状態に保つ必要があるので、腹筋や背筋といった体幹部の筋力も鍛えられます。
自重のみのスクワットでももちろん効果がありますが、肩にバーベルを担いだり、手にダンベルを持ったりするなどして負荷を増やしたスクワットでは、さらに体幹部にも負荷をかけることができます。

① 両足を骨盤の幅に開き、つま先を進行方向に合わせて立ちます。
② 手は胸の前か身体の後ろに組む、もしくは身体の横に沿わせておきます。
③ 足関節、膝関節、股関節を全て同程度に曲げるようにし、ゆっくりと重心を落としていきます。
④ ハーフスクワットでは膝が90度程度に曲がるところまで、フルスクワットでは太ももが床と平行になるところまで重心を落とします。
⑤ ゆっくりと重心を上げて元の体勢に戻ります。

■ウォーキング、ジョギング

ウォーキングやジョギングは、ダイエットや運動不足による生活習慣病予防のために行われる運動として取り入れられています。
主な運動効果は有酸素運動による呼吸機能改善や体脂肪の燃焼になりますが、姿勢を保持して手足を動かしたり、身体を運び続けたりするという点で、腹筋や背筋も機能しています。
よって、普段運動習慣が全くない方にとっては、これらの有酸素運動も腹筋トレーニングとなります。

■エアロビクス

エアロビクスは音楽に合わせ様々な動きをするエクササイズです。
立ったまま行う動きや寝て行う動きなど、色々なものが含まれていますが、体幹を曲げたりひねったりする動きでは、腹筋を使うことが多くあります。
通常の腹筋トレーニングでは速いスピードで動くことはあまりありませんが、エアロビクスでは、場合によっては速いテンポに合わせて腹筋を収縮させることもあります。そのため、腹筋の瞬発力を上げるトレーニングにもなります。

■ピラティス・ヨガ

ピラティスやヨガといった運動は、日常生活ではとらないポーズをとったり、使わない筋肉をゆっくりとした動作の中で使ったりします。
自分の体重のみを使って動くので、大きな負荷が腹筋にかかるわけではありませんが、自分の身体をうまく動かしたり、支えたりしていくなかで、腹筋を鍛えることもできます。

腹筋のストレッチ

筋トレばかり行っていると、硬くて柔軟性のない筋肉になってしまいがちです。
そこで、筋トレと一緒に行いたい腹筋のストレッチの方法をご紹介します。

■コブラストレッチ

最も簡単な方法ですが、腰を反らすため、腰痛のある方は気を付けて行ってください。
ストレッチの肢位で軽い腰痛を感じる場合は、下腹を軽く引っ込めて腰椎の反りを修正してみてください。

① 両足を伸ばしてうつ伏せに寝ます。
② 身体の前に両手をつき、ゆっくりと身体を反らして少しずつ手の位置を手前にして身体の反りを強めていきます。
③ お腹に伸張感を感じたら、その肢位で20秒間程度静止してください。

■ブリッジストレッチ

自分の手足で身体を支えながらストレッチを行うため、ある程度の筋力が必要なストレッチです。

① 両膝を立てて仰向けに寝ます。
② 両手をバンザイして床に手のひらをつき、両手両足で床を押しながら身体を浮かせます。
③ お腹に伸張感を感じたら、その肢位で20秒間程度静止してください。

■バランスボールストレッチ

バランストレーニングや、腰痛体操などに使われるバランスボールに乗って行うストレッチです。
ブリッジストレッチほど筋力はいりませんが、不安定なボールの上で行うストレッチなので、慣れるまではバランス能力が必要になります。

① 両足を床につき、バランスボールの上に腰かけます。
② お尻をゆっくりと前に滑らせながら、腰や背中をバランスボールに乗せます。
③ 徐々に身体を反らし、上半身の体重をバランスボールに預けていきます。
④ バランスがとれたら、両手をバンザイにして身体の力を抜きます。
⑤ お腹に伸張感を感じたら、その肢位で20秒間程度静止してください。

おわりに

お腹を引き締めるために自宅でできる腹筋トレーニングについてご紹介しました。

ご紹介したトレーニングを一通り行うことが理想ではありますが、筋トレの習慣や経験のない方にとって、成果がでるまで筋トレを継続することは、大変な気力が必要だと思います。そのため、参考にできることから、少しずつ始めていただければと思います。
どの運動も継続することが大切なので、ご自分にあった継続可能な運動を選択してみてください。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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