四十肩・五十肩の原因

■加齢

四十肩・五十肩は、性別に関係なく発症し、利き腕がなりやすいわけでもありません。
原因は明確には断言できませんが、加齢が関係していると考えられています。
肩関節や周囲の筋肉、組織が、加齢に伴って固くなったり縮んだりして、炎症や痛みを発生させるようです。

■不良姿勢

不良姿勢も原因として挙げられます。
猫背の姿勢では、背中が丸くなって頭部や肩関節が前方に移動します。
肩関節が前方に移動して歪むと、肩や首の筋肉や関節に負担がかかり、四十肩・五十肩になりやすくなります。

■スポーツ歴

もう一つの原因には、スポーツ歴があげられます。
過去に野球やテニスなどの肩関節に負担がかかるスポーツを行っている場合も、四十肩・五十肩になる可能性が高くなります。

四十肩・五十肩の症状

■肩関節の可動域制限

特徴的な症状として、肩関節の可動域制限、つまり、腕を上げたり、回したりすることが困難になります。
そのため、シャンプーをしたり、背中を掻いたり、吊革につかまったりする動作に支障が出ます。

痛みのため肩関節を動かすのが億劫になり、さらに、可動域が狭くなっていく悪循環を生むこともあります。

■肩関節の痛み

肩や腕を動かしたときだけでなく、安静にしているときでさえ、痛みが現れます。安静時は、血液の流れに合わせるように「ずんずん」と痛みが出るのが特徴です。

また、夜間に痛みを感じることが多いため、睡眠不足にもつながります。ひどくなると、『うつ症状』や『自律神経障害』になってしまうこともあります。

四十肩・五十肩の治療

四十肩・五十肩の治療では、主な症状である「可動域制限」と「痛み」に対してアプローチがされます。
ここでは、4つの治療方法をご紹介します。

■安静にする(急性期)

治療というほどではありませんが、肩関節に熱感や激しい痛みがある場合には、安静にしていることが大切です。
無理に動かしてしまうと、組織が刺激を受け、炎症が悪化してしまう危険性があります。病院や治療院に行くまでは、なるべく動かさないようにしましょう。

■服薬

炎症症状に対して、服薬にて治療をすることもあります。
代表的な薬として、『NSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛剤)』が処方されることが多いです。NSAIDsとは、最近では市販もされている『ロキソニン』や『セレコックス』のことです。
痛みを一時的に抑えてくれる効果があります。

■ヒアルロン酸注射

四十肩・五十肩の治療では、肩関節にヒアルロン酸注射を行うことがあります。
ヒアルロン酸には、関節をスムーズに動かす働きがあります。そのため、比較的痛みをコントロールできているが、肩関節がスムーズに動かない方におすすめです。

ヒアルロン酸注射は医師しか行えないので、整形外科のある病院やクリニックを受診しましょう。

■ストレッチやトレーニング

急性期が過ぎて症状が安定したら、ストレッチやトレーニングを行う必要があります。
それらを行わないと、ケガのために長期間動かさないで安静にしていたため、肩関節が固まって可動域が狭くなってしまいます。

詳しいストレッチやトレーニングの方法は、次項でご説明します。

四十肩・五十肩に効くストレッチ

肩関節は、『肩甲骨』『鎖骨』『上腕骨』の3つから構成されています。
その中でも、肩甲骨には多くの筋肉が付着しているため、非常に大切なパーツです。同時に、肩甲骨周りの筋肉は凝りやすいので、しっかりとストレッチしましょう。

1. 肩甲骨の外転・内転

①背もたれのない椅子に座るか、立って両手を胸の前で組みます。
②息を吸って背中を伸ばします。
③息を吐きながら、肩甲骨を外に開くイメージで、両手のひら見える向きで真っ直ぐ前に腕を伸ばしていきます。
④伸ばしきったら、そこで10秒間キープします。
⑤腕を一度楽な状態に戻し、今度は両手を腰の後ろで組み、手のひらを内側に向けます。
⑥息を吐きながら、胸を張って両手を後ろに上げ、肩甲骨を内側へ寄せます。
⑦その姿勢のまま、10秒間キープします。

2. 肩甲骨回し

①椅子に座って背中を伸ばし、両側の指先をそれぞれの肩に当てます。
②肘を後ろ回しに動かし、肩甲骨を動かします。
③後ろに5周回したら、今度は前に5周回します。

3. 三角筋ストレッチ

①右手を前に伸ばし、左手で下から右肘を持ちます。
②右手を胸に引き寄せ、気持ち良いところで10秒間キープします。
③一度腕を楽な状態に戻し、左側も同様に行います。

四十肩・五十肩を予防するトレーニング

肩関節を動かさないと、可動域が制限されるだけでなく、筋力も低下してしまいます。
強い痛みがなく、症状が安定している場合は、再発予防のためにトレーニングを行いましょう。
ただし、痛みや違和感が出た時は、すぐに実施をやめ、医師や専門家に相談してください。

1. ローテーターカフ(立位)

『ローテーターカフ(回旋筋腱板)』とは、肩甲骨の前面と後面にある、4つの筋肉(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)のことを言います。
肩関節を安定させる働きがあり、この筋肉を鍛えることによって肩関節の動きがスムーズになり、四十肩・五十肩の症状が軽減します。

①立位姿勢で背筋を伸ばし、小さく前ならえをするように、肘関節を90度に曲げます。
②脇を閉じたまま、外側へ45度ほど開きます。
③45度ほど開いたら、手順①の姿勢に戻ります。

背中を伸ばして行わないと、適切な効果が得られません。
高負荷では行わず、低負荷で30回行いましょう。

2. ローテーターカフ(仰向け)

①気を付けの姿勢で仰向けになり、両膝を立てて、右手で500mlのペットボトルを持ちます。
②肘を伸ばしたまま、床と腕が垂直になるように天井に向かって右腕を上げます。
③肘を曲げないように注意しながら、ペットボトルを左右に小さく10往復させます。
④同じ要領で今度は、前後(頭と足の方向)に小さく10回往復させます。
⑤右手を床に戻し、ペットボトルを持ち換えて今度は左手で同様に運動を行います。

3. 振り子運動

①立位になり、500mlのペットボトルを右手に持ちます。
②左手を机の上に乗せ、身体を前に倒し、右手を伸ばして腕の力を抜きます。
③右腕の力を抜いたまま、右手を振り子のように、ゆっくりと前後に動かします。
④振り子運動を20回繰り返したら、ペットボトルを持ち換え、今度は左手で行います。

おわりに

四十肩・五十肩の原因や症状をご説明するとともに、治療・予防のためのストレッチやトレーニングをご紹介しました。

身体の痛みは、誰もが不安になります。特に、肩は日常生活で良く使う部位で、腕が上がらないとなると、かなりの不便が生じます。
四十肩・五十肩になる前に、日頃からトレーニングやストレッチを行い、痛みが出る前に予防できると良いでしょう。
それでも、強い痛みを感じたら、まずは専門医へ受診することをおすすめします。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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