足首(足関節)の働き

足首は正式には『足関節』と言います。
足関節は地面から近い関節で、日常生活で大切な役割を担っています。
例えば、足関節が伸びることで歩行時に地面を蹴ったり、曲がることでジャンプの着地時に地面からの衝撃を吸収したりしてくれます。このように、足関節は足首が伸びる『底屈』と、足首を反らす(曲げる)『背屈』という動きをしています。

しかし、屋外の地面は斜めに傾いていたり、デコボコしたりしているところもあります。その中でバランスをとりながら、歩いたり、走ったりするため、斜めに傾く動きも多少できるようになっています。
ただし、そのような動きはわずかであるため、不意に足関節を大きく捻ってしまうと、捻挫してしまうこともあります。

足首の捻挫とは

『捻挫』とは、関節が本来動く以外の方向に動いたり、可動域を超えた動きをすることで関節に炎症を起こしたり、関節を守っている『靱帯』を損傷することをいいます。

足関節の捻挫は、歩いていてバランスを崩したとき、ジャンプ着地などで足首を捻ってしまったときに起こります。
足の捻挫の大半は、足の裏が内側に見える方向に捻ってしまう『内反捻挫』です。
外くるぶし周りの靱帯や腱を損傷し、関節に炎症が起こります。
稀に足の裏が外側に見える方向に捻る『外反捻挫』も見られ、その場合は、内くるぶし周りの靱帯や腱を損傷することになります。

捻挫予防のためのトレーニング

足関節周囲のトレーニングを行うことで、捻挫を予防することができます。
ここでは、ふくらはぎなどの下肢の筋肉と、バランスを鍛える5つのトレーニングをご紹介します。

■腓骨筋トレーニング

『腓骨筋』は、ふくらはぎの外側の膨らみを作る筋肉で、両足それぞれが左右の2つの筋肉に構成されています。左右の筋肉は『長腓腹筋』と『短腓腹筋』に分けられますが、どちらも足部を曲げたり、外側に反らせたりする作用があります。
そのため、トレーニングすることで内反捻挫の予防になります。

1. 体操座りをするように両膝を曲げ、足をそろえて座ります。
2. 両足の甲の部分をまとめてしばるようにトレーニングチューブを巻きます。
(トレーニングチューブがない場合は、弾力のある紐などで代用して構いません)
3. 両足関節が90度程度になるようにつま先を起こしたら、そこから両足のつま先を左右に離すようにいっぱいまで広げます。
4. 広げてゆっくりと元に戻すという動きを10~20回繰り返します。

■後脛骨筋トレーニング

『後脛骨筋』はすねの後面から下降し、内くるぶしの後方を通って足部の内側に付着している筋肉です。
腓骨筋と拮抗する筋肉であり、足部を内反させる作用があります。

捻挫のほとんどが内反捻挫なので、直接的にそれを予防する筋肉ではありませんが、腓骨筋とバランスを取りながら同時に作用することで、足を捻らないように安定させてくれます。
そのため、腓骨筋とともにトレーニングしておきたい筋肉です。

1. 床の上に座り、トレーニングする方の足の膝のみ曲げます。
2. トレーニングチューブを曲げた方の足の甲に巻き、同じ側の手でその端を持ち、軽く外側に引っ張るようにします。
3. チューブで引っ張られている方向に反して、つま先を内側に入れるように足部を動かします。このとき、膝を捻らないようにしっかりと固定し、足部の動きだけにするよう注意しましょう。
4. 内側に引っ張ってはゆっくりと戻す動きを10~20回繰り返します。
5. 片方の足が終わったら、左右の足を交替して両足ともトレーニングを行ってください。

■つま先立ちトレーニング

つま先立ちをするときには、主に、ふくらはぎの筋肉である『下腿三頭筋』が働きます。
しかし、つま先立ちをする際に足が内反したり、外反したりせず、後ろから見たときに足の裏がまっすぐ見えるようにするためには、腓骨筋や後脛骨筋がバランスよく働くことが必要です。
これらの筋肉をバランスよく働かせるトレーニングをすることで、捻挫の予防につながります。

1. 両足を骨盤の幅に開いて立ち、つま先が正面を向くようにして立ちます。
2. ゆっくりと両方のかかとを上げつま先立ちになります。このとき足部が内・外反せず、足の裏がまっすぐ後ろに見えるように注意してください。
3. ゆっくりとかかとを下ろします。
4. このかかとの上下運動を10~20回繰り返します。

フォームが安定するまでは軽く壁や手すりなどを持って行っても構いません。慣れてきたら手を離し、バランスを取りながら、安定したつま先立ちができるようにしましょう。
また、さらに負荷を上げる方法として、片足だけでつま先立ちを行うトレーニングもあります。このときも、注意点は両足のときと同じです。

■片足立ちトレーニング

外側や内側にバランスを崩しそうになったとき、腓骨筋や後脛骨筋をうまく働かせながら、バランスをとるトレーニングとして『片足立ち』が有効です。
また、片足でバランスよく立つためには、足回りの筋肉だけでなく、膝関節・股関節の周辺や、体幹の筋力やバランスも必要になります。そのため、捻挫予防に必要な全身の筋肉を鍛えることができます。

■バランスディスクトレーニング

『バランスディスク』とは、円盤型の不安定なディスクのことです。
片足立ちトレーニングに慣れてきた方や、それでは物足りない方は、バランスディスクの上で片足立ちの練習をしてみましょう。
一気に難易度が上がり、捻挫予防に必要な筋肉もより効果的に鍛えられます。

バランスディスクと同じ負荷とはなりませんが、自宅にある座布団やバスタオルをたたんだものの上で、まずはチャレンジしてみても良いかもしれません。
ただし、かなり難易度の高いトレーニングになりますので、これらの上に立つことで捻挫をしないよう十分注意して行ってください。

捻挫予防のためのストレッチ

足首の柔軟性が高いと、しっかりと足関節を背屈し、地面からの衝撃を吸収することができます。一方で、足首が硬いと、捻挫しやすくなってしまいます。
ここでは、足首の柔軟性を高めるため、ふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)のストレッチをご紹介します。
下腿三頭筋には、『腓腹筋』と『ヒラメ筋』があり、ストレッチ方法が少し異なりますのでどちらも行うようにしてください。

■腓腹筋ストレッチ

1.壁など体重を支えられるような場所に向かって立ち、両手を壁につきます。
2.両足を前後に軽く開き、後ろに引いた方の足のつま先が進行方向を向くようにまっすぐ置きます。
3.後ろ足の膝を伸ばした状態にし、かかとが浮いてしまわないぎりぎりのところまで身体を前に倒していきます。
4.ふくらはぎの筋肉に伸張感を感じたら、壁に付いた手に体重をかけて20~30秒静止します。
5.左右の足を入れ替え、反対のふくらはぎも同様にストレッチします。

■ヒラメ筋ストレッチ

1.正座した状態から、ストレッチしたい方の足だけを進行方向を向くように前に立て、足の裏を床につけます。
2.膝を抱えるように立てた足の前方に重心を移していき、いわゆる『忍者座り』のように、足首がしっかりと曲がった状態をつくります。
3.足首の前方などに痛みなどなく、ふくらはぎの下半分あたりに伸張感を感じられたら、ヒラメ筋がストレッチされています。

しゃがむことが難しい方は、ストレッチする方の足を椅子や平均台などの上にあげて立ちましょう。上記のストレッチと同じように、足首が曲げて前方に体重を移動させていくと、ヒラメ筋がストレッチできます。

おわりに

今回は足首の捻挫予防のトレーニングとストレッチの方法をご紹介しました。

スポーツ競技をしている方はもちろん、運動習慣のない方でも、歩いているときや階段昇降中など、足首の捻挫をすることは多々あります。
今回ご紹介した足首のトレーニングやストレッチを行うことで、捻挫の予防につながるだけでなく、歩行の耐久性や安定感も向上します。
自宅で行うことのできる簡単なトレーニングばかりですので、捻挫癖のある方はもちろん、そうでない方も、今後の予防のために是非行ってみていただきたいと思います。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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