体幹トレーニングとは

体幹とは腕や足以外の体の部位、つまり、頭、首、胸、腰や腹、お尻の部分に分けることができます。これらの体幹につく筋肉を『体幹筋』と呼びます。
体幹筋はローカルマッスル(Local muscles) とグローバルマッスル(Global muscles)に分類されます。ローカルマッスルは体幹を固定するなど、姿勢の調節を担っている筋群です。グローバルマッスルは体幹の大きな力強い動きの際に使われる筋群です。
体幹トレーニングにはっきりとした定義はありませんが、主にローカルマッスルのトレーニングを指すことが多いようです。

体幹を鍛える効果やメリット

1. 運動能力の向上

体幹トレーニングによって体幹が安定すると、手足の素早い正確な動きにつながり、動作能力が向上すると考えられています。
その裏付けの一部として、体幹トレーニングにより深部筋(ローカルマッスル)の活動が増加し、体幹部の安定性が得られて跳躍力が上がったという研究報告があります。(※参考)
体幹トレーニングは多くのスポーツに取り入れられています。どんなスポーツでも、プロでもアマチュアでも、体幹トレーニングを行う事は、パフォーマンスの向上につながる可能性があります。

2. 胸腰椎圧迫骨折や腰痛を予防

体幹トレーニングで刺激、強化されるローカルマッスルには、背骨を真っ直ぐにして正しい姿勢を保つ作用があります。
しかし、年齢とともに、ローカルマッスルをはじめとする姿勢を良くする筋肉は低下します。これにより、骨盤が後ろに傾き、お尻が後ろに落ちた状態になりがちです。
これが続くと、『腰椎後弯姿勢』という、お年寄りによく見られる背骨が曲がった状態や猫背の状態になってしまいます。腰椎後弯姿勢では、胸椎や腰椎が圧迫されて骨折したり、腰痛を起こしたりしやすくなります。
これらを防ぐためには、体幹トレーニングが有効だといえます。体幹トレーニングで骨盤の後傾を改善して姿勢が良くなることにより、腰痛や胸腰椎圧迫骨折の予防が期待できます。(※参考)

3. 美しい姿勢になる

姿勢を良くしたい場合、姿勢を悪くしている原因によって筋力をつける部分が変わってきます。
例えば、太ももの前面の筋肉と背中の筋肉(脊柱起立筋群)が弱くなったり、上手く使えていなかったりすると、猫背になりやすい傾向があります。逆に、腹筋群が弱くなったり、上手く使えていなかったりすると、反り腰(腰椎過伸展位)になりやすいといえます。
このような個人の体組成や筋力に合わせてトレーニングを行うのが理想的ですが、一般的な体幹トレーニングでも、良い姿勢を維持することにつながります。体幹筋全体に刺激を加えながら、正しいトレーニングをしていれば、姿勢が良くなる可能性があるといえます。

4. ダイエット効果

体幹トレーニングも立派な運動ですので、ダイエット効果が期待できます。
ただし、体幹トレーニングだけだと効果は出にくく、ワークアウト(筋トレ)やランニングなどの別メニューと合わせると、相乗効果的でダイエットの効率があがると考えられます。

体幹を鍛えるトレーニング3選

1. フライングドッグ

【やり方】
① 床に両手・両膝をつき、軽く顔を上げて四つん這いの姿勢になります。
② 左腕と右脚をゆっくりと伸ばします。指の先、体幹、つま先までをしっかりと真っすぐに伸ばし、その姿勢を10秒間維持します。
③ 手順①の状態に戻り、逆の右腕と左脚も同様にしっかりと伸ばして10秒間維持します。
④ これを左右交互にゆっくりと行います。

【ポイント】
・ 回数は10回/1セットを1日2セット行うのが目安です。
・ 実施中は、自然な呼吸を続けましょう。腕と脚を伸ばした状態で息を吸う時に、へそを少し凹ませるように力を入れます。
・ 動作は早く行うのではなく、ゆっくりと身体のどの部分の筋肉を使っているのか感じながら行います。
・ きつくなって崩れたフォームで無理に行うよりは、一度休憩を入れて正しいフォームで行うようにしてください。回数にこだわるのではなく、正しいフォームで行う方が、効果が期待できます。
・ 体を反らした時に腰痛が出る方は、実施後に痛みが残る可能性があります。腕や脚を伸ばした時に、しっかりとお腹を凹ませて腹筋に力を加えながら行うと再発を予防できます。しかし、痛みや違和感が強く出る場合は、無理に行わないでください。

2. ヒップリフト シングルレッグ

【やり方】
① 仰向けに寝て膝を立てます。手は体側に軽く広げておきます。
② 膝、お尻、背中が一直線になる位置まで、お尻を持ち上げます。体が反らない程度に、できるだけ高く上げるよう意識しましょう。
③ 姿勢をキープしたまま右脚を床から離し、膝を真っすぐ伸ばして10秒間静止します。
④ 右脚を下ろして左脚に替え、同様に行います。

【ポイント】
・回数は左右それぞれ10回/1セットを1日2セット行うのが目安です。
・姿勢が崩れるようなら、回数を減らして正しいフォームを意識しましょう。
・②③の姿勢を取る時に腰をそり過ぎないように注意しましょう。特に、腰痛のある方は再損傷の原因になる可能性があります。どの姿勢も少しお腹に腹圧をかけるようにしながら行いましょう。

3. サイドレッグレイズ

【やり方】
① 左側を下にして横向きに寝そべります。左手首から肘を床につき、脇を広げて上体を支えます。
② 腰を持ち上げ、左の前腕と足だけで体を支えます。右手は腰にあてます。
③ 右脚の膝を伸ばしたまま持ち上げ、脚を上下させます。
④ 反対方向も同じように行います。

【ポイント】
・回数は左右それぞれ10回/1セットを1日2セット行うのが目安です。
・ゆっくりと動作することで効果が高まります。
・負荷の高い体幹トレーニングのため、脚を上下にした際に大きくバランスが崩れてしまう場合は、一つ一つの姿勢を10秒間維持するところから始めましょう。

トレーニングの時間と頻度

1. 頻度

体幹トレーニングはローカルマッスルがターゲットとなります。ローカルマッスルはグローバルマッスルのトレーニングと比べて疲労物質も溜まりにくい可能性があるので、1週間に3回程度行うと良いでしょう。

2. タイミング

体幹トレーニングを鍛える効果やメリットでご説明したとおり、体幹トレーニングはスポーツパフォーマンスの向上が期待できます。また、怪我の予防効果もあるのではないかと言われているため、パフォーマンスの向上とダイエット効果を考えて通勤、運動、家事の前に行うことをおすすめします。

3. 時間

体幹トレーニングでは時間にこだわる必要性は特にありません。フォームが崩れない範囲で行うことを最も意識しましょう。

おわりに

体幹トレーニング効果とやり方、時間、頻度などについてご説明しました。
体幹トレーニングを行うことにより、運動パフォーマンスの向上、腰痛予防、姿勢改善、ダイエットなど、さまざまな効果が期待できます。初心者でも簡単に自宅で始められるので、ぜひ生活習慣に取り入れてみてはいかがでしょうか。

参考文献

書籍:理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
著者:細谷 匠、渡邊 昌宏
発行元:J-STAGE
該当する章:「体幹筋トレーニングによる跳躍への影響」

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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