むくみの原因

身体のむくみは、血流低下によって一か所に血液が滞ることや、血液量が増えて血管外に水分が染み出すことで起こります。
特別な病気がなくても、ちょっとした日常生活の習慣などによって起こっている場合も多々あります。
ここでは、むくみの原因となる生活習慣をご紹介します。

■長時間の同じ姿勢

心臓から送り出された血液は、四肢末端に運搬され、再び心臓に戻ってきます。
手足から中枢へ戻る血液の流れを促すのは、上下肢の筋肉の働きです。上下肢の筋肉が収縮することでポンプのような役割をしています。
長時間座りっぱなしや立ちっぱなしでいると、筋肉の収縮が少ないので、血液を心臓に戻すことができず、ふくらはぎや足部のむくみが現れます。

■筋肉量の低下

手足の筋肉量が少ないと、前に述べた筋肉によるポンプ作用が十分に働かず、慢性的に血流が悪くなってしまいます。
これが男性に比べ女性の方が、むくみを感じる方が多い理由の一つでもあります。

■水分や塩分の過剰摂取

水分や塩分を摂りすぎると、血液中の水分量が異常に増えます。この水分が血管外に染み出してきてしまうため、むくみが起こります。
また、アルコール摂取も血液中の水分が血管外に透過しやすくなるため、むくみにつながります。

■偏った食生活

たんぱく質には血液中の水分を血管内に保つ作用があります。
また、ビタミンやミネラルが不足すると、利尿作用が低下し、摂取した水分をスムーズに尿として体外に排出できなくなってしまいます。
ダイエットや外食による偏った食生活は、むくみの原因になります。

■身体を冷やす

暑い夏はエアコンの効いた部屋を素足で過ごしたり、肩や背中などを過度に露出した服装をしたりしている方が多いです。
このように身体を冷やしすぎてしまうと、より保温が重要な体幹部の体温を維持するために体幹部に血流が集中します。その結果、四肢末端の血流が悪くなってしまうため、むくみを引き起こします。

■衣服によるしめつけ

下着や靴下などで鼠径部(足のつけ根)やウエスト、足首など身体の一部にしめつけが集中していることがあります。
これにより、締め付けられた部分から末端の血流が悪くなってしまい、むくみにつながってしまうことがあります。

■精神的ストレス、過度の疲労

精神的なストレスや肉体的な疲労が過度になると、循環器や呼吸器などの働きをつかさどる『自律神経』が乱れ始めます。
その結果、全身の血流が悪くなり、むくみにつながります。

■むくみを症状とする疾患

心臓や腎臓は血液を全身に送ったり、水分の排出を行ったりするなど、むくみと大きく関係する臓器です。そのため、『心不全』や『腎不全』などによってこれらの臓器の機能が低下すると、むくみにつながります。
また、あまり病気として認知されていませんが、女性特有の『更年期障害』では、女性ホルモンのバランスが崩れることにより、むくみを生じることがあります。
これらの疾患が原因となっているむくみである場合には、疾患自体の治療が優先されます。

むくみ解消マッサージ

むくみを少しでも解消するためには、自分でマッサージを行うことも有効です。
ここでは、むくみ解消マッサージのやり方やポイントをご説明します。

■末梢から中枢へ

むくみ解消マッサージでは、末梢に滞ってしまった水分を中枢に戻します。
手であれば手首から脇に向けて、足であれば足の裏や足首から足のつけ根に向けて、顔であれば頬や顎から首や鎖骨に向けてマッサージを行いましょう。どの部位であっても、末梢から中枢(心臓に近い方向)に向かって行うようにしてください。
くれぐれも中枢から末梢に向かって行ったり、中枢と末梢を行ったり来たりしないように注意してください。

■ゆっくり優しく

マッサージを行う部位が手、足、顔などどの部位であっても、ゆっくりと優しい力で行ってください。
痛いほどの強い力でしっかり行った方が効果的に思えますが、皮膚や血管を傷めるなどの恐れもあるので、注意が必要です。

また、親指を立てるなどしてピンポイントでマッサージを行うよりは、広い面で余分な水分をゆっくり流すようにする方が効果的です。手のひらのつけ根などを上手く使って行いましょう。

■お風呂上りが効果的

お風呂上りは身体が温まり、血流も良くなっているので、むくみマッサージには最適な時間帯です。
一日でたまったむくみをリセットするつもりで、お風呂上りに行ってみてください。

■全身状態が安定していないときは行わない

心不全や腎不全などの疾患が原因となってむくみを生じている場合、セルフマッサージを行うには注意が必要です。
上記の疾患が悪化してむくみが出ている時に、むくみを中枢に戻すと、さらに心臓や腎臓に負担をかけることになってしまうことがあります。
上記疾患がある場合には、主治医にマッサージを行っても良いか確認してから始めるようにしましょう。

むくみ予防で気を付けること

■適度な水分摂取をする

水分不足だと、血液内の水分濃度が下がって血液がどろどろになり、腎臓や心臓に負担をかけてしまいます。
一方、水分を摂りすぎると、血液の水分量が増えすぎてむくみの原因となります。

食べ物からの水分摂取を除く飲水の目安は、1日1.5lです。これを目標にこまめに少しずつ飲むようにしましょう。
ただし、コーヒーや紅茶、アルコールは利尿作用があるので、水分摂取として換算できません。水やカフェインフリーのお茶で摂取することが理想的です。

■適度に体を動かす

長時間同じ姿勢を続けていると血流が悪くなり、むくみの原因になります。
ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を習慣的に行うと、血流が良くなり、むくみが改善しやすくなります。

忙しく改めて運動する時間を設けることが難しい方は、通勤や通学、買い物にでかけるときなどに、車やバスに乗らず、徒歩や自転車で積極的に身体を動かすようにするだけでも効果的です。

■疲労をためすぎない

疲労をためすぎると、腎臓に負担がかかって腎臓機能が低下します。こうなると、尿からの余分な水分の排泄がうまくできなくなってしまい、むくみにつながります。
睡眠不足や過労に注意しましょう。特に、腎不全の方はこまめに横になるなどして積極的に休息を取るように心がけましょう。

■塩分の過剰摂取に注意する

外食の多い方、漬物や濃い味の煮物などが好きな方は、塩分の過剰摂取になりがちです。
血液中の塩分が増加すると、むくみやすくなることに加え、心臓や腎臓にも負担がかかります。減塩の調味料を使ったり、外食を控えたりして塩分の摂取量に注意しましょう。

■栄養バランスの良い食事をとる

高齢になると、肉や魚などのたんぱく質が飲み込みにくくなったり、食後に胸やけがしたりすることがあります。この理由から、たんぱく質の摂取量が低下している高齢者が多くいらっしゃいます。

また、外食の多い方は野菜が不足しがちであり、カリウム、マグネシウム、カルシウムといった利尿作用を持つ成分の摂取が不足します。
どれもむくみ予防には大切な栄養素ですので、バランスのとれた食事を心がけましょう。

おわりに

今回は、むくみの原因とマッサージの方法、予防法についてご紹介しました。

むくみは身体の不調を示す大切なサインです。軽く考えることなく、生活習慣の見直しやセルフケアを十分に行っていただきたいと思います。
また、むくみ症状の悪化が見られる場合には、一度病院を受診し、治療が必要な疾患がないかを確認するようにしましょう。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

関連する記事

関連するキーワード

著者