はじめに

すぐに病院に行くほどではないけれど、いつまでも続く微熱や関節の痛み。そのような症状がみられる場合に疑われるのが膠原病です。なかなかはっきりとした症状がでないこともありますが、膠原病の症状について知り、少しでも早く気づくことができるようまとめました。

微熱が続き、関節痛が起きる病気は?

風邪症状がないのに微熱が続き、関節痛が起きている場合に疑う病気として『膠原病(こうげんびょう)』があります。『膠原病』とは、関節や筋肉、皮膚など様々な組織に炎症や障害を生じる疾患の総称です。ここでは、膠原病を疑うべき症状をご紹介します。

・微熱が続く

微熱というとどこからどこまでかという判断が難しいですが、基本的には37度台と考えてよいかと思います。ただし、女性の場合には生理周期による高温期があるので、37.5度を超えるようであれば間違いなく微熱と判断するようにしてください。

また、一般的に人間の体温は午前中に比べて午後の方が少し高い傾向があるので、風邪などによる発熱であっても朝よりは夕方から夜にかけてあがってくることが多いです。ただし、膠原病の場合は午前中に熱が出やすいという特徴もあります。さらに、微熱とともに『疲れやすい』や『だるい』といった症状も多くみられます。

・関節痛や腫れがでる

関節痛も膠原病の特徴的な症状ですが、使い痛みなどの関節痛や腱鞘炎と症状が似ているので判断が難しいです。膠原病による関節炎の一つの特徴としては、一か所ではなく体のあちらこちらに起こり、こわばって動かしにくくなるということです。思い当たる原因のない関節痛や腫れが色々な部位にでてきたら膠原病を疑ってよいでしょう。

また、膠原病の中でも『関節リウマチ』に特徴的な症状としては『朝のこわばり』と言われる時に関節が動かしにくい症状があります。症状が左右対称で、『朝のこわばり』を伴う関節痛がみられる場合には『関節リウマチ』を疑ってください。

さらに膠原病の場合、関節だけでなく筋肉が炎症を起こして痛みを伴う場合も多くありますので、一つの判断基準として知っておくとよいでしょう。

・食欲低下、体重減少が起きる

食欲が低下したり、体重が減少する疾患は他にもいろいろありますが、膠原病もその一つです。膠原病が進行すると食欲がなくなり、体重が月に1キロ以上低下したりします。

・皮膚に発疹がでる

皮膚の発疹も膠原病の特徴の一つです。虫刺されやかぶれなどでも発疹は見られますが、膠原病による発疹の明確な違いはかゆみを伴わないことです。また、発疹に触れてみると皮膚に硬さを感じられます。膠原病の種類によって発疹のでる部位は変わりますが、このような特徴を持つ発疹がある場合は膠原病を疑ってよいでしょう。

・リンパが腫れる

膠原病の症状としてリンパの腫れがあります。あごの下、首、脇の下、鼠径部などのリンパが腫れてきます。
他の疾患によるリンパの腫れとの違いについてですが、感染症による腫れの場合はその部位に触れたときに痛みがありますが、膠原病による腫れの場合は触れても痛みがありません。また、悪性腫瘍の場合は硬い腫れですが、膠原病の場合は柔らかい腫れです。
そのほか、膠原病の症状として貧血やレイノー現象(指先が急に白くなる状態)、目や口が乾くといったものがあります。

代表的な膠原病とは?

膠原病はその状態から3種類に分類することができ、それぞれの疾患はこれらが組み合わさっています。
1. リウマチ性疾患:筋肉や関節の痛みがあることが特徴です。
2. 自己免疫疾患:自分の正常な細胞に対して自分の免疫機能が反応し、攻撃してしまう疾患です。
3. 混合性結合組織疾患:血管や皮膚などの組織に異常をきたしたり、筋肉や関節に炎症を伴う疾患です。

ここから、代表的な膠原病についてそれぞれの病態を説明していきます。

関節リウマチ

中高年の女性に多い疾患で、関節軟骨にある滑膜という部分が炎症を起こし、進行すると徐々に関節が変形してしまいます。手足の指などの小さい関節から左右対称に起こり、徐々に膝や手首などの大きな関節にも炎症に伴う痛みを生じます。朝起きたてに関節がこわばって動かしにくいという『朝のこわばり』が大きな特徴で、関節症状と併せて貧血や微熱、全身倦怠感などの症状も現れます。

全身性エリテマトーデス

自分の細胞の核成分に抗体を作ってしまう自己免疫疾患で、20~30代の女性に多い疾患です。全身性という名前の通り、症状も全身に現れ様々です。全身症状としては、発熱、倦怠感、食欲不振、体重減少、易疲労感があげられ、皮膚や関節の症状も多くの患者にみられます。皮膚症状としては顔面に蝶形紅斑、関節には関節リウマチと似た症状が現れます。他にも、腎臓や肺、心臓、血液など全身の臓器に病変をきたします。

全身性強皮症

30~50代で発症しやすい疾患で、皮膚が徐々に硬化してこわばったり、関節痛、発熱を生じます。全身の皮膚はもちろん、心臓、肺をはじめとした内臓も硬化していきます。末梢循環障害を伴うため、レイノー現象という指先が真っ白になり、紫や赤に変化するという症状がでることもあります。

多発性筋炎、皮膚筋炎

自己免疫疾患の一つで、全身の筋肉や皮膚が侵されます。皮膚には紅斑が、筋肉や肺には炎症が起き、筋力が衰えていきます。

シェーグレン症候群

目と口に症状がでるのが最大の特徴です。涙腺、唾液腺に炎症を起こして、涙や唾液が出にくくなるため、ドライアイやドライマウスになります。まぶしくて目を開けられなくなったり、水分の少ない食べ物が食べにくくなります。

膠原病以外で、考えられる病気とは?

膠原病以外にも微熱や関節痛を伴う疾患がありますのでご紹介します。

慢性疲労症候群

日常生活に支障をきたすほどの全身倦怠感、微熱、関節痛、のどや頭の痛みといった風邪症状、リンパの腫れ、不眠などを症状とします。原因ははっきりと解明されていないのですが、風邪のような感染症を引き金に症状が現れるのではないかと言われています。。根本的な治療はないので、症状に対する薬物治療がメインとなります。

化膿性関節炎

関節内に細菌などが入り、感染することによって軟骨や骨を破壊してしまう疾患です。強烈な関節痛に伴う腫れ、微熱、食欲不振などが症状であり、抵抗力が低下しているときに罹患しやすいようです。局所の安静、抗生物質の投与、膿の吸引などの治療を行います。

痛風

中年の男性に多く、高尿酸血症を原因として強烈な関節痛を起こす疾患です。足や膝の関節の痛みとともに微熱を伴います。薬物療法や食事療法を中心とした治療を行います。

甲状腺機能亢進症

甲状腺ホルモンが異常に分泌されてしまうことによって全身の代謝が高まる疾患です。微熱や関節痛、食欲はあるのに体重が減少する、発汗量が増える、動悸やイライラなどが主な症状です。

妊娠初期症状

妊娠超初期症状として、微熱や関節痛、動悸や倦怠感といった風邪のような症状がでることがあります。これは、妊娠に伴いプロゲステロンやエストロゲンといったホルモンのバランスが変化することによるものです。

更年期障害

およそ45~55歳の男女に起こりうるものであり、ホルモンバランスの変化、自律神経失調によるものです。微熱や関節痛のほかに、のぼせや冷え性、動悸、肩こり、めまい、精神不安定などが出現します。ホルモン療法とともに規則正しい生活を送ることや生活習慣の改善が重要です。

治療法や予防法

ここまで述べてきたように、膠原病の原因は不明なので根本的な治療方法がなく、完治は難しいとされています。そこで治療方針としては、日常生活に支障をきたさないように症状をコントロールし、上手く付き合っていけるようにするということになります。

一般的に多いのは内服治療で、ステロイド剤や免疫抑制剤を使用することが多いですが、免疫を抑制することによって抵抗力が低下し、感染症に罹患しやすくなってしまうので注意が必要です。

また、膠原病の予防については、残念ながら効果があると言えることがありません。

ただし、膠原病は遺伝性の要素があることは分かってきているため、家族に膠原病に罹患している方がおられる方は注意しておくことで早期発見、早期治療を行うことができ、症状を悪化させずにすむ可能性が高まります。

おわりに

膠原病は、症状に対する知識をもっていても自分で判断するのは困難であり、病院で専門的な検査を受けなければなかなか診断をすることができません。早期発見、早期治療を行うためにも気になる症状がある場合には、早めに病院を受診するようにしましょう。

参考文献・参照
http://kogenbyo.com/kiso/entry2.html 膠原病症状ナビ
https://midica.co/?p=28932 長く続く微熱と関節痛は風邪じゃない!?疑いのある15の病気とは
http://kogenbyo-all.jp/a03chiryo.html 膠原病の基礎知識 膠原病と診断されたら
http://kougenb.web.fc2.com/yobou/ 膠原病とは

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野 
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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