腰痛の種類と症状

腰痛を伴う主な疾患とその症状についてご説明します。

■急性腰痛症(ぎっくり腰)

急性腰痛症は急に強い腰痛を発するものの総称であり、いわゆる『ぎっくり腰』のことです。
腰を捻った瞬間、重たいものを持ち上げた瞬間など、明らかな原因がある場合と、朝起きたら突然激痛ともに動けなくなっていたというような原因がはっきりしないものがあります。いずれも腰部の関節、靭帯、筋肉といった、なんらかの組織が炎症を起こして痛みを発します。

痛みが強くて起き上がることや立つことができなくなったり、動くことはできても決まった姿勢や動作をすると、鋭い痛みが走ったりするなど、様々な症状があります。
いずれの場合も、傷んだ組織の炎症を鎮静化させることが優先なので、腰痛を発症して数日間はできる限り安静にしておくことが必要です。

■筋・筋膜性腰痛症

慢性的な腰痛に多いのが、筋・筋膜性腰痛症です。
姿勢不良や継続的な重労働により、腰部の筋肉に負担をかけてしまうことや、運動不足により、筋肉の柔軟性や血流が不足することが主な原因となります。

腰を支える筋肉や筋肉を覆う『筋膜』に痛みを感じるもので、じっとしていても鈍痛を感じる、原因となる筋肉が引きのばされたり力が入ったりしたときに痛みを感じるなど、症状の出方は様々です。
筋肉に炎症を起こしている場合もありますが、筋肉の柔軟性や血流が不足していることで痛みが生じている場合には、患部を温めたり、ストレッチやウォーキングなど軽い運動をしたりすると、症状の改善がみられることがあります。

■変形性脊椎症

変形性脊椎症は加齢や脊椎への過度の負担によって骨の変形を起こす疾患です。
腰椎は立位や座位姿勢では常に上半身の重さを支えており、上から押しつぶされる負荷がかかっています。
腹筋や背筋の力で押しつぶされないように支えていますが、腹筋や背筋力の弱い方や骨密度の低い方は、加齢とともに腰椎に負担がかかります。さらに、仕事で重量物を肩に担ぐことの多い方や、腰の曲げ伸ばしや捻り動作の多い方は、腰椎が押しつぶされて変形してしまうことがあります。

骨の変形によって腰椎間の関節に摩擦が起きて痛みが出たり、骨の変形が姿勢の変化につながって筋・筋膜性腰痛症を引き起こしたりします。

■腰椎椎間板ヘルニア

いくつもの骨が積み木のように並んで構成されている『脊椎(背骨)』の間には、それぞれ『椎間板』という水分を含んだ組織があります。
椎間板はクッションのような役割をしており、背骨の動きに伴って形を変えることで、脊椎を滑らかにつないでいます。
しかし、長時間座位や前かがみ、捻り動作など、椎間板に対する負荷が過度に加わると、椎間板が脊椎の間から押し出されて脊柱の列から飛び出してしまいます。
この状態を『ヘルニア』と言い、腰部で起きたヘルニアを『腰椎椎間板ヘルニア』といいます。

炎症を起こした椎間板に痛みが生じたり、飛び出した椎間板が周りを通る腰や下半身の神経を圧迫し、足の痺れや痛みがでたりすることがあります。

■腰部脊柱管狭窄症

脊椎の後ろ側には『脊柱管』と呼ばれる神経の通り道があります。
加齢により脊椎が変形したり、脊柱管の周りの靭帯が肥厚したりすると、脊柱管が狭くなって神経を圧迫してしまうことがあります。

これを『腰部脊柱管狭窄症』といい、腰に痛みを伴ったり、腰椎椎間板ヘルニアと同じような足の痺れや痛みが出現したりします。
また、脊柱管狭窄症の特徴的な症状として『間欠性跛行』というものがあります。
これは一定時間立ち続けたり歩き続けたりすると、足に痛みが生じて歩行困難になるというものです。
しばらく神経の通り道を拡げるようにしゃがみ姿勢をとって休憩すると、痛みが改善し、再び歩くことができるようになります。

■腰椎圧迫骨折

『腰椎圧迫骨折』は転倒による尻もちで高齢者に多く発生する外傷です。
尻もちをつくことにより、上下方向の圧が一度に脊柱にかかり、椎体が潰れてしまう骨折です。

若年者であれば骨密度も高く、高所から転落しないかぎりは圧迫骨折をすることはありません。
しかし、高齢者は骨密度が低下している方が多いため、尻もちだけでなく、椅子に腰かけただけでも圧迫骨折をしてしまうことがあります。

腰痛に効くストレッチ3選

ストレッチでは、筋肉を伸張する姿勢をとり、しばらくの間保持します。こうすることで、筋肉の柔軟性を高めたり、血流を促したりする効果が期待できます。
柔軟性不足や筋肉のコリによる慢性的な腰痛の場合には、特に効果が期待できるので、ぜひ試してみてください。
ただし、急性期の強い痛みがある場合は、炎症が起こっている可能性が高いので、すぐにストレッチは行わず、医師や理学療法士の指導を受けてから行うようにしてください。

■膝抱えストレッチ

① 仰向けに寝て両足を両手で抱えます。
② お尻から腰にかけて伸張感を感じたら20秒間静止します。

腰の痛みや身体の硬さで両足同時に抱えることが難しい場合は、片方の膝を伸ばしたまま、片方ずつ膝を抱えても構いません。

■腰捻りストレッチ

① 両膝を伸ばして仰向けに寝ます。
② 右足の膝と股関節を90度程度曲げ、身体の左側に右足を持ってくるように腰を捻ります。
③ 右側の腰からお尻に伸張感を感じたら20秒間静止します。
④ 右側を伸ばしたら、左右を代えて左側の腰もストレッチしてください。

■広背筋のストレッチ

背中から腰にかけて最も広い面積をしめる『広背筋』のストレッチです。

① 足が床につく椅子に座り、両足を軽く広げて踏ん張りやすい状態にします。
② 背中を背もたれから離して背筋を伸ばしたら、両手を万歳するように上げ、片方の手でもう片方の手首をつかみます。
③ そのままゆっくりと横に身体を倒します。
④ 倒した方と反対側の腰に伸張感を感じたら20秒間静止します。
⑤ 片方がストレッチできたら身体を倒す方向を変え、左右ともストレッチしてください。

腰痛を予防するストレッチ3選

前項でご紹介したストレッチでも腰痛を予防することができますが、腰以外の部位をストレッチすることで、さらに予防効果を高めることができます。
ここでは、腰痛の予防につながる下肢やお尻のストレッチをご紹介します。

■お尻のストレッチ

お尻の最も大きい筋肉である『大臀筋』のストレッチです。
大臀筋が柔軟になることで股関節が曲がりやすくなり、腰への負担が軽減します。

① 椅子に座り、あぐらをかくように片方の脚を開いて反対の膝の上に乗せます。
② 腰が丸まらないように背筋を伸ばしたまま、身体を前に倒します。
③ あぐらをかいた方のお尻に伸張感を感じたら20秒間静止します。
④ 片方がストレッチできたら、足の左右を代え、反対のお尻もストレッチしてください。

■太もも裏のストレッチ

太もも裏にある『ハムストリングス』のストレッチです。
ハムストリングスが硬くなると、骨盤が後ろに引っ張られて猫背姿勢になり、腰への負担が増えてしまいますが、ストレッチすることで姿勢が改善して腰への負担が軽減します。
また、前かがみになるときも、ハムストリングスが柔軟であることで腰への負担が大きく軽減します。

① 両脚を伸ばして床に座ります。
② 右脚は膝を伸ばして真っ直ぐに維持したまま、左膝を曲げて右の内ももに足の裏をつけるようにします。
③ なるべく背筋は伸ばしたまま、両手で右のつま先を持つように身体を右足の方に向けて倒します。
(つま先まで届かないときは、膝やすねの届くところを持つようにしてください)
④ 右の太もも裏に伸張感を感じたら20秒間静止します。
⑤ 左右を反対にして左の太もも裏もストレッチしてください。

■足のつけ根ストレッチ

足のつけ根にある『腸腰筋』のストレッチです。
腸腰筋が柔軟になることで股関節が反らしやすくなり、腰を反らすときの腰への負担が軽減します。

① 両足を前後に開き、前にした足の裏を床につけて膝を90度に曲げ、後ろにした足は立て膝をつきます。
② 背筋をまっすぐ伸ばして床と垂直にしたまま、重心を前の足に移動させていきます。
③ 後ろになった足のつけ根に伸張感を感じたら20秒間静止します。
④ 左右を反対にして反対の足のつけ根もストレッチしてください。

おわりに

今回は、腰痛の種類や症状とともに、腰痛の予防・改善に効果的なストレッチをご紹介しました。
腰痛の原因は柔軟性の低下だけではありませんが、日頃からストレッチを行い、身体を柔軟にしておくことで、腰痛を予防することができます。
今回ご紹介したストレッチは、どれも自宅ですぐに始められるものばかりですので、ぜひ寝る前や朝出かける前の数分をストレッチの時間として習慣づけていただければと思います。

監修

・救急医、内科医 増田陽子

・救急医、内科医 増田陽子

専門分野
微生物学、救急医療、老人医療

経歴
平成18年 Pittsburg State大学 生物学科微生物学・理学部生化化学 卒業
平成22 年 St. Methew School of Medicine 大学医学部 卒業
平成24年 Larkin Hospital勤務
平成26年 J.N.F Hospital 勤務

資格
日本医師資格
カリブ海医師資格
米国医師資格

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