冷えとは

現代人の冷え

現代人の平均体温は約36.5度、50年前の日本人の平均体温は約36.9度でした。現代人は生活習慣や食事などで、体温が昔より低くなっているのがわかります。体温が1度下がると代謝が約10~20%低下し、病気に対する免疫力も低下すると言われています。

よく『冷え症』や『冷え性』という言葉を聞きます。『冷え』とは、単純に低体温であることだけではありません。体内で体温の差があることも冷えと言います。
多くの人は上半身の体温が下半身に対して高くなっています。上半身には心臓などの熱を発することのできる臓器があります。口で測る体温と、足先で測る体温を比較すると約6度違います。足先の体温には個人差がありますが、だいたい26~32度と言われています。

冷えの原因と種類

現代人はパソコンやスマートフォンを見たり、頭を使って考えたりすることが多く、上半身に熱量が集中しています。
さらに、運動不足だと下半身を温める機会をなかなか作ることができず、冷えにつながります。

また、手足・足先が冷えることを『末端冷え性』と呼びます。
塩分や脂肪の多い食事をたくさん取ることで血液の循環が悪くなったり、ストレスによって交感神経の働きが強まって血管が収縮してしまうこと等が原因で、体全体に血流が行き渡らなかったりして起こります。

末端冷え性に対し、体全体の温度が低くなる冷え性を『低体温冷え性』と呼びます。
こちらは女性に多く、体を冷やす食べ物を摂取することで起こりやすくなります。顔色が悪かったり、いつも倦怠感があったり、生理が不規則で生理痛が重くなったりするなどの症状がみられます。

また、本人が冷えていると気づいていないケースもあります。
寒いのに足先が熱っていると感じる時などは、冷えているという感覚が麻痺し、熱を感じてしまっている状態です。体内は暖かいにもかかわらず、皮膚があまりにも冷えてしまい、足先が熱っていると感じてしまうのです。雪山で凍死する人の多くが、着ているものを暑いと感じて脱いでしまっているのはこのためです。

冷えからくる不調

自分では気がつきにくい慢性的な不調は、冷えから影響されているものもたくさんあります。
例えば、アトピー性皮膚炎や花粉症、水虫、肩こり、生理痛などがあげられます。
冷えを取ることで、慢性的な不調を軽減し、より健康な毎日が送れるようになります。内臓の働きも活発になり、ダイエット効果も期待できます。

冷えとりのための健康法

冷えをとるには体を温めることが大切です。
たくさん洋服を着たり、お風呂につかったり、運動したり、湯たんぽを使ったりするなど、いろいろな方法があります。これらはどれも冷えとり対策になります。

ここで注意することは、足元を中心に温めることです。東洋医学では『頭寒足熱(ずかんそくねつ)』といって、足を温めて頭を冷やして体調を整えるのが基本です。
血液は空気と一緒で、冷たい場合は下へ、温かい場合は上へ移動する性質を持ちます。足は心臓から離れているうえ、重力が手伝って血液の循環がスムーズに行われにくく、老廃物が溜まりやすいです。このため、足が冷えると体温が上がりにくくなり、冷えを招きます。
これを覆し、頭を冷やして足を温めることで、体内の気が巡りやすくなります。

入浴

お風呂につかる際は半身浴がおすすめです。
みぞおちから下をぬるいお湯でゆっくり温めましょう。熱いお湯につかってしまうと、すぐにのぼせて体全体が温まる前にお風呂から上がりたくなってしまいます。半身浴は20分間を目安に行いましょう。体が慣れてきたら、さらにゆっくりとつかってみてください。ぬるいお湯につかることは、リラックス効果もあります。

半身浴ができない時は、足湯をしましょう。
大きめのバケツに半身浴をする時より少し熱めのお湯を入れて足湯します。お湯がぬるくなってきたら、挿し湯をしながらゆっくりと温めましょう。

お風呂に入るのは、就寝の30分くらい前が良いとされています。お風呂から上がっても布団に入らずにフラフラしていると、せっかく温めた体がまた冷えてしまいます。お風呂からあがって、一休みし、体のほてりが少し取れたら早めに就寝しましょう。
また、お風呂上りにビールなどの冷たい飲み物を飲むことも、冷えにつながるので避けた方が良いです。

睡眠

寝る時に湯たんぽを使うと、体がポカポカと温かいまま眠れます。
就寝中に体はデトックスするので、体を温めて老廃物を排出しましょう。この時も足を中心に温めます。湯たんぽを足元や、お腹において寝ましょう。電気毛布は体全体を温め、のぼせてしまうことがあるので、湯たんぽがおすすめです。

運動

日中は適度な運動を心がけましょう。
筋肉を動かすことで筋肉が発熱し、体が温まります。特に、脚には体全体の70%の筋肉があります。その中でも、ふくらはぎは第2の心臓とも呼ばれており、足の血液を心臓に返す役割があります。
歩く、走るなどの下半身を動かす運動は、効率よく体を温められます。

食事

運動と同様に、なるべく体を温める食材を取るよう、食事にも気を付けましょう。
体を温める食材には、カボチャ、玉ねぎ、カブなどの根野菜があげられます。一般的に丸くてかたい野菜は、体を温めます。反対に、乳製品や南国のフルーツは体を冷やすので気をつけましょう。女性が大好きなスイーツも、残念ながら体を冷やしてしまうので、食べ過ぎに注意しましょう。

冷え対策グッズ

ここでは、おすすめの冷え対策グッズを4つご紹介します。
これらのほかにも、冷えグッズはたくさんあります。5本指ソックス、スパッツ、ホッカイロなど、いろいろ試して自分に合うものを探してみてください。

湯たんぽ

子どもの時から馴染みのある冷え対策と言えば、湯たんぽです。
お湯で体を温めるのは、非常に健康に良いと言われています。睡眠時に電気毛布やエアコンで身体を温めると、布団の中や部屋全体の空気が乾燥し、肌も乾燥してしまいます。
湯たんぽにはいろいろなサイズがあるので、足元、お腹、股間などに1つずつ使うのも良いでしょう。
足元を温め、頭はお布団から出して寝ましょう。

腹巻

腹巻もこちらも昔から使われている冷えとりグッズです。子供の頃、腹巻をして学校に通った方もいらっしゃるのではないでしょうか?
お腹を温めることで内臓の動きが活発になります。特に、女性は下腹部に子宮など大切な臓器があるので、腹部を冷さないようにしましょう。女性特有の婦人科の悩みの多くは、冷えから来ます。

最近では、お洒落な腹巻も増えましたので、選ぶのも楽しくなりました。お腹にポケットが付いていて、ホッカイロを入れられるようになっているものもあります。

お灸

お灸を足に置くことで、体に巡る経絡を伝って全身を温めてくれます。経絡は内臓にも繋がっているので、内臓の活性化にも効果があります。
火を使わないお灸や、煙の出ないお灸などもあるので、洋服の下にお灸をしておくこともできます。

おわりに

「冷えは万病の元」と言われます。何か体に不調が現れた時、私たちはなかなか冷えと結びつけることはありませんが、根本的な原因は冷えも関係しているかもしれません。
肩こりや、生理痛、アトピーなども冷えを取ることで軽減されることがあります。
病院に行って薬を処方してもらうことも大切ですが、一時的に薬で抑えても根本的な原因が治っていない限り、またぶり返してしまいます。

東洋医学では、健康は食事、運動、休養のバランスを取ることで守られると言われています。
体の温まる食材を食べ、適度に運動し、体を温めた状態でゆっくり睡眠を取ることで冷え対策になります。
この冬はぜひ冷え対策をして健康に過ごしてください。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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