腰痛の原因

腰痛の原因は主に(1)脊柱や周辺組織に由来するもの(2)内臓にある臓器の疾患による痛み(3)精神的・心理的要因の3つがあります。
今回は、主に体操が予防となる(1)脊柱及び周辺組織に由来するものについて説明します。

1. 腰椎椎間板ヘルニア(ようついついかんばんヘルニア)

腰椎椎間板ヘルニアとは、腰の骨と骨の間にあるクッション作用のある椎間板から、一部の組織が飛び出し、神経を圧迫して腰痛や下肢痛を引き起こす疾患です。
椎間板は加齢に伴って変性が生じます。また、重いものを持ち上げるのに腰を反らした時などの負荷がきっかけとなり、発生する事が多いようです。
20代、30~40代、次いで10代、50~60代の順で発症し、特に活動性の高い男性に好発します。
症状は腰痛と片側の脚の痛みが主です。運動や労働によって症状が悪化し、安静で軽快する傾向があります。(※参考1)

2. 急性腰痛発作(きゅうせいようつうほっさ)

通称『ぎっくり腰』といわれ、不意の動作、特に、ひねり動作で急に起こる事が多いようです。その病態は不明ですが、多くは椎間関節内への滑膜嵌入(かんにゅう)と言われています。(※参考2)また、その他の原因として筋肉の損傷や、筋膜の炎症なども挙げられています。
激しい腰痛の症状があるのが特徴です。

3. 腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)

『脊柱管』という背骨の中にある管を構成している骨組織、あるいは軟部組織が壊れ、脊柱管の中にある神経組織が圧迫を受けて発生します。
特徴的な症状として、『間欠性跛行(かんけつせいはこう)』があります。これは、歩行時に下肢や腰部に痛みが出現して歩けなくなってしまう症状です。ただ、姿勢を変える(体幹を曲げる、しゃがみ込む)ことで出現した症状が消失して、再び歩き始めることができます。(※参考3)

猫背の人、前屈すると痛みが出やすい人におすすめの体操

腰痛に対する体操や運動療法の目的には、(1)筋力の維持と増強、(2)関節可動域の維持と改善、(3)軟部組織伸展、(4)協調的運動の獲得、(5)耐久力の獲得、(6)リラクゼーションがあげられます。
今回はこれらの要素をできるだけ含んだ体操やストレッチをご紹介します。

●腰を反らす体操

① マットや床の上にうつ伏せに寝て、手のひらから肘を床につけます。
② 肘関節が90°になるところまで上半身を起こし、腰を反るようにします。
③ 約5~10分間この状態を保持します。
④ この姿勢で腰部にさほど痛みを感じず、腕の力にゆとりがあるようなら、腕を伸ばして腰がさらに反るような姿勢をとります。

肘関節を90°にするのが無理な場合や保持できない場合は、できるところまで行い、徐々に90°にしていきます。もしくは、胸にクッションや座布団を当てて上半身を起こすのを助け、腰を反らすようにします。
手順④の体勢までできると、背骨の可動域を広げるだけでなく、腹部側のストレッチにもなります。

※お尻や足に痛みや痺れが出る場合は、すぐに中止してください。
※体を反らした時に腰痛がある場合は、この運動は行わないでください。

●お尻を上げる体操

① 仰向けに寝て、両手の手のひらを下にし、身体の横で床を押さえます。
② 両足を肩幅に開き、膝関節を90°に曲げて膝を立てるような状態にします。
③ お尻の筋肉(大殿筋)を引き締めながら、へそを突き出すようにして腰を上げていきます。
④ 肩から膝までが真っ直ぐになるように腰を上げたら、さらに肛門を閉めるように力を入れます。
⑤ 手順の状態で約5~10秒間キープしてから、ゆっくりと腰をおとして元の姿勢に戻ります。
⑥ これを10回3セット行います。(余裕がある人は回数やセット数を増やしても大丈夫です)

※呼吸は止めないように自然に行ってください。
※体を反らして腰痛が出現する場合はこの運動は行わないでください。

この運動は、お腹に力が入った時に尿漏れがある『腹圧性尿失禁』と腰痛の両方持っている方にとてもおすすめです。
女性を対象にしたアメリカ理学療法の論文では、腰痛のみの患者よりも腹圧性尿失禁を併発している人の割合が高いことがわかっており、腰痛のため治療を受けている女性患者のうち、78%が尿失禁の経験があるといわれています。
Journal of Women's Health Physical Therapy 2013 Jan-Apr; 37(1): 11–18.
The Association of Chronic Back Pain and Stress Urinary Incontinence: A Cross-Sectional Study
【著者】Heather M. Bush, PhD, Stacey Pagorek, PT, DPT, Janice Kuperstein, PT, PhD, Jing Guo, BS, Katie N Ballert, MD, and Leslie J Crofford, MD
【出版社】Lippincott, Williams & Wilkins

お腹が突き出た姿勢の人、腰を反らすと痛みが出る人におすすめの体操

●膝をかかえる体操

マットの上に仰向けに寝て、膝を立てて90°に曲げます。
両手で両膝を抱えて丸くなります。
この姿勢で約1分維持し、元に姿勢に戻ります。
これを3回程度行います。

背骨の可動域の拡大と共に、背中側と臀部のストレッチにもなります。

●ドローイング

① 四つん這いの状態になり、顔を前に向けます。
② ゆっくりと息を吐きながら、へそを凹ませて猫背になるように背中を丸めます。(この時、目線はへそを見るようにすると、よりお腹の筋肉の収縮を促します)
③ しっかりと息を吐き切ってお腹を凹ませたら、自然に任せて息を吸い込み、元の姿勢に戻ります。
④ これを10回3セット行います。

体操をする際の注意点

痛みの範囲が末梢へ広がる場合は、どんな体操であれ全て行わないようにしてください。
痛みの状況によっては逆効果となる事があるため、できるだけ、痛みがない時に予防として行いましょう。
また、現在、病院にかかっている方は、行う前に必ず医師に相談してください。

おわりに

腰痛は多くの人の悩みです。一度なると回復にも時間がかかるので、ぜひ予防したいものです。
腰痛の予防には、今回ご紹介したような体操を少しでも行ったり、しっかりと休養を取ったりすることが大切だと思います。無理をせず、少しずつ体操をしてみてください。

参考文献

※参考1, 2, 3
標準整形外科学 第9版
【総編集】鳥巣 岳彦/国分 正一
【出版社】医学書院

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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