はじめに

「リンパの流れが悪いとむくむ」
「リンパ節が腫れると熱が出る」

リンパという言葉そのものを耳にする機会は結構ありますが、「リンパ」とは何なのかは意外と知られていません。
リンパは、私たちの健康を保つうえでとても重要な存在です。
そもそもリンパとは何なのか?
リンパの流れが悪いとどうなるのか?
そんな疑問にお答えしたうえで、リンパの流れをよくするために効果的なストレッチの方法を伝授します。

リンパ系とは

まずは「リンパ」とは何なのか? についてです。専門的な話は大変わかりにくいので、できるだけイメージしやすいように簡単に説明しましょう。

血液と血管のお話

私たちの体にはたくさんの血管が張り巡らされていますね。ポンプの役割をしている心臓を中心に、体全体に血液を循環させています。

血液の役割は、体中の細胞に栄養や酸素を送ることです。肺から取り入れた酸素を含んだ新鮮な血液を動脈血といい、細胞に栄養を送った後の血液を静脈血といいます。
静脈血は肺から取り入れた酸素を取り込むことで、再び動脈血となり全身をめぐるのです。

ここまでが簡単にまとめた血液のお話です。

リンパ系とは?

では、さっそくリンパ系についての解説です。

私たちの体には、血管と同じように全身にリンパ管というものが存在しています。リンパ管の中を流れるのがリンパ液です。
血管とは異なり、リンパ管は指先などの体の末端部から心臓にむけて一方通行で流れています。体中の細いリンパ管が徐々に合流し、やがてひとつの太いリンパ管になるのですね。合流地点にはところどころにリンパ節というポイントが設けられています。
リンパ液・リンパ管・リンパ節のことをまとめて「リンパ系」と呼んでいるのです。

リンパ液とは?

リンパ管の中を流れているリンパ液。いったいどのようなものなのでしょうか?

血液は赤いですね。それに対し、リンパ液は黄色がかった透明な色をしています。傷口などから透明な液体が出てくる経験がある人も多いですよね。あの液がリンパ液です。

リンパ液は、私たちの細胞の中にある水分のことです。もちろん、ただの水ではありません。というわけで、次はリンパ液の役割について学びましょう。

リンパ系の役割

上のイラストをご覧ください。全身に緑色の血管のようなものがありますね。これがリンパ管です。そしてところどころにある丸い部分がリンパ節です。緑色のリンパ管はやがて心臓近くの血管に合流しています。これらの血管には、心臓に戻る古い血液が流れています。リンパ液は、最終的に古い血液と混ざり合うようにできているのです。

リンパ液の役割

体中の細胞が新陳代謝を行うと、どうしても老廃物が発生します。その老廃物を回収する役割を持っているのがリンパ液なのです。

リンパ液の流れが悪くなってしまうと、体の中にある老廃物の排出が滞ってしまいます。その結果、むくみや肌荒れ、疲労感やだるさなどの問題が起こってしまうのです。

リンパ管の役割と性質

一番最初にお話しした血管と血液のことを思い出してください。血液が体中をめぐるのは、心臓がポンプとして働いているからです。

ところが、リンパ管にはそのような機能が備わっていません。
ポンプのない環境で、重力に逆らって老廃物を流しているのがリンパ管です。結構大変そうだと思いませんか?リンパ液はもともと「スムーズに流れにくい」のです。

リンパ節の役割と性質

そしてもうひとつ、リンパ系には老廃物の運搬以外に重要な役割があります。「免疫」です。

リンパ管のところどころにある節目であるリンパ節は、簡単に言うとフィルターの役割を持っています。病原体や毒素などをせき止め、血管に侵入するのを防いでくれているのです。風邪などで熱が出るとリンパ節が腫れるのは、こんな理由からなのですね。

リンパ系は詰まりやすい

ポンプもなく重力に逆らって流れるリンパ液と、体に有害なものをせき止めるリンパ節。このように考えると、リンパ系は「非常に詰まりやすく流れにくい」性質があることがわかります。
リンパ系の役割は老廃物の排出と免疫機能ですから、リンパの流れが悪ければ体に異常が現れるのは当たり前なのです。

そこで、私たち自身でリンパがスムーズに流れてくれるように、リンパ管の動きをサポートすることが大切になってきます。

リンパストレッチの効果

リンパの流れをスムーズにし、リンパ管のつまりを解消するために有効なのが、「リンパマッサージ」です。
体の先端部分から心臓に向けてストレッチやマッサージをしてあげることによって、リンパ液がスムーズに流れたり、リンパ節の詰まりを解消したりすることができます。

ストレッチなどによってリンパの流れがスムーズになりますから、デトックス効果が期待できるというわけです。

リンパストレッチで期待できる効果

ストレッチでリンパの流れを改善することで、こんな効果が期待できます。

・むくみの解消
・肌荒れの解消
・冷え性の改善
・疲れにくくなる
・風邪などを引きにくくなる

リンパストレッチのやり方

では、いよいよ実践編です。
自宅でできる簡単リンパストレッチを紹介します。

リンパストレッチの基本

リンパストレッチを行う際のポイントは、3点です。
①リンパの流れにそった順番で行うこと
②リンパ節を意識的にほぐすこと
③ストレッチ中は腹式呼吸をおこなうこと
にあります。

上半身のストレッチ

上半身のリンパの流れは「指先→腕→ワキ→胸(心臓周辺)」となっています。
上半身にある主要なリンパ節は、「ヒジ・脇の下・鎖骨・首の後ろ」の4か所です。
これらを意識的にほぐすことが重要です。

①<手首からヒジのストレッチ>
片方の手首をもう片方の手で軽く握ります。
優しく圧をかけるように押していき、徐々にヒジまで移動させます。
反対側の腕も同じように行います。

②<脇から鎖骨のストレッチ>
背筋を伸ばして座ります。
軽く脇を開き、ヒジを曲げます。
ヒジで大きめの円を描くように、腕を回します。
その際、肩甲骨や鎖骨、脇の下が気持ちよく伸びるように意識してください。
時計回り。反対回りでそれぞれ20回ずつ行います。

③<首のストレッチ>
胸を張り、あごを引きます。
ゆっくり頭を前に倒していきます。
そのままで30秒間キープします。
ゆっくり元に戻します。
この動作を今度は首を左右に曲げるように行います。
最後に、頭をゆっくり両方向にまわします。

下半身のストレッチ

下半身のリンパの流れは「足→ふくらはぎ→太もも→足の付け根」となっています。
下半身にある主要なリンパ節は、「ヒザ・足の付け根」の2か所です。
これらを意識的にほぐしましょう。

<足首のストレッチ>
1. つま先を伸ばします。
2. 足首をクルクルと10回まわします。
3. 反対向きにも同様にまわします。

<ふくらはぎからヒザまでのストレッチ>
1. 椅子に座り、方足を前方に伸ばします。
2. つま先を前にそらすように足首をゆっくり曲げます。
3. そのまま10秒間キープします。
4. ゆっくり足を元に戻します。
5. 5回繰り返します。
6. 反対側の足も同様に行います。

<太ももから足の付け根のストレッチ>
1. 椅子や壁などに手をついて背筋を伸ばします。
2. バランスがとりやすい広さに足を開きます。
3. 片足を伸ばしながら、ゆっくり足をお尻方向に伸ばします。
4. 太ももの前部分や足の付け根が伸びて気持ちい程度まで伸ばしてください。
5. そのまま10秒キープします。
6. ゆっくり元に戻ります。
7. 同様に、今度は足をお腹方向に伸ばします。
8. 10秒キープし、ゆっくり元に戻します。
9. これを左右それぞれ10回繰り返します。

お腹のストレッチ

お腹は、下半身のリンパが集まってくる場所です。ここをストレッチすることで、リンパ液を心臓周辺までしっかり戻すことが可能になります。
お腹周りには、おへその上あたりに大きめのリンパ節があります。ここを意識してほぐしてください。

背筋を伸ばし、足は軽く開いて座ります。
両手を重ねておへその下あたりに置きます。
全身の力を緩めます。
息を吸いながらお腹を上方向に優しく押し上げます。
息を吐きながら、ゆっくり両手を離します。
10回程度繰り返します。

おわりに

私たちの体を健康に保つために欠かせないリンパ系ですが、どうしても流れが悪くなりやすい性質を持っています。
リンパの流れが悪くなると、老廃物が十分に排出されにくくなってしまい、さまざまな不調の原因になってしまうことがあるのです。

ストレッチを行い、リンパの流れをスムーズにすることで、スッキリ美脚だけでなく、冷え性や肌荒れなどの改善効果も期待できます。
ちょっとしたスキマ時間を見つけて、生活にリンパストレッチを取り入れてみてくださいね。

監修

・救急医、内科医 増田陽子

・救急医、内科医 増田陽子

専門分野 
微生物学、救急医療、老人医療

経歴
平成18年 Pittsburg State大学 生物学科微生物学・理学部生化化学 卒業
平成22 年 St. Methew School of Medicine 大学医学部 卒業
平成24年 Larkin Hospital勤務
平成26年 J.N.F Hospital 勤務

資格
日本医師資格
カリブ海医師資格
米国医師資格

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