『ながらトレーニング』とは

『ながらトレーニング』とは、家事や育児中、日常生活の作業中などにできるトレーニングのことです。

普段、運動習慣のない方が、いきなり運動を始めようとしても、なかなか習慣化するのが難しいです。健康のため、ダイエットのためなど、最初は意気込んでエクササイズを行っていても、数日で挫折してしまうことも多いのではないでしょうか。
また、スポーツジムやフィットネススタジオに通うのも、時間や経済的に難しいという方もいるでしょう。

そんな時、手軽に取り入れられるのが、ながらトレーニングです。
日常の空いた時間や、作業をしながらでも、十分な負荷のトレーニングができます。特別な道具は不要なので、経済的にも優しいトレーニングです。
今回は、普段の生活に取り入れやすい、5種類のながらトレーニングをご紹介しますので、やりやすいものから始めてみてください。

ながらトレーニング①『カーフレイズ』

カーフレイズの効果

カーフレイズは主に、ふくらはぎの筋肉が鍛えられる、つま先立ちのトレーニングです。
引き締まった膝下や足首を目指すほか、ふくらはぎの筋肉がポンプの役割をすることで、血液の循環が良くなり、冷え性やむくみの改善にもつながります。

簡単な動きなので、洗面所で歯磨きやドライヤーをかけながら、台所で料理の出来上がりを待ちながら、洗い物をしながらなど、いつでもできるトレーニングです。
かかとを上げ下げする動作により、本来している作業に集中しにくい場合は、つま先立ちをしたままの状態で行っても、効果があります。
また、余裕のある方は、片脚立ちからつま先立ちをすると、一気に負荷が上がります。バランスを崩さずできる方は、ぜひ挑戦してみてください。

カーフレイズのやり方

① 両足を骨盤の幅に開いて立ち、つま先が正面を向くようにします。
② ゆっくりと両方のかかとを上げ、つま先立ちになります。このときもつま先が正面を向き続けるようにし、足の裏がまっすぐ後ろに見えるように注意してください。
③ ゆっくりとかかとを下ろしていき、床すれすれまで下ろしたら、再び上げます。
④ かかとを上げて下ろす動きを10~20回繰り返します。

ながらトレーニング②『足の横上げ』

足の横上げの効果

足を横に上げるこのトレーニングでは、お尻の外側の『中臀筋』という筋肉が鍛えられます。
中臀筋は歩行を安定させる筋肉で、中高年以降の女性に多い『変形性股関節症』の予防のためにも、大切な役割を果たします。
足を上げる側だけでなく、立っている側の足も体重を支え、身体が傾かないようにすることで、左右両側の中臀筋が鍛えられます。

ながらトレーニングとして行うには、難易度が高すぎると思われる方は、片足立ちをしながら、身体が傾かないようにするだけでも効果が期待できます。

足の横上げのやり方

① 直立した姿勢から、上半身が横に倒れないように、片脚の膝を伸ばして股関節から真横に上げます。このとき、つま先は横に向かず、進行方向を向き続けるようにします。
② 脚をできる限りの範囲まで上げたら、ゆっくりと下ろします。
③ 脚の上げ下げの動作を繰り返し行い、片脚が終わったら、脚を入れ替えて逆側も同様に行います。

ながらトレーニング③『スクワット』

スクワットの効果

スクワットは足を曲げたり、伸ばしたりしながら、重心を上下に動かすトレーニングで、下半身や体幹の筋肉をバランスよく総合的に鍛えることができます。
特に、『大臀筋(お尻の筋肉)』や『大腿四頭筋(太もも前面の筋肉)』を中心に、立ち上がりや段差昇降などに必要となる筋肉が鍛えられます。

カーフレイズ以上に重心の上下動があるので、化粧中や料理中などは難しいですが、歯磨きやドライヤーなど、簡単な作業中であれば可能かと思います。
重心の上下動が難しい場合は、スクワットの腰を落とした姿勢でキープしたり、落としたところの高さで少しだけゆするように上下動したりするようにすると、負荷が上げて鍛えられます。

スクワットのやり方

① 足を骨盤の幅に広げて立ち、両足を平行にしてつま先が進行方向を向くようにします。
② ゆっくりと股関節、膝関節、足関節を曲げて重心を落とします。このとき、それぞれの関節が、同じくらいの角度で曲がるようにし、重心が前後しないようにします。
③ 膝が90度程度に曲がるところまで(ハーフスクワット)、もしくは、太ももと床が平行になるところまで(フルスクワット)重心が下がったら、ゆっくりと足を伸ばして最初の姿勢に戻ります。
④ この動作を10回程度繰り返します。

ながらトレーニング④『ブリッジ』

ブリッジの効果

ブリッジでは、主に大臀筋や背中から腰の背筋が鍛えられます。
お尻の引き締めだけでなく、腰痛の予防や改善にも効果的なトレーニングです。

寝転がってテレビを見ながら、または、読書をしながら行うことができます。
お尻の上げ下ろしの動きでテレビや読書に集中できないという方は、お尻を上げたまま10~30秒間キープするという方法もあります。
筋力的に余裕がある方は、片方の足を反対の膝に引っかけて片脚でのブリッジを行うと、負荷が上がって効果的です。片脚になると、骨盤がぐらぐらしやすくなるので、それを抑えることで腹筋や背筋など体幹の筋力向上にも効果があります。

ブリッジのやり方

① 両膝を立てて仰向けに寝ます。手はお腹の上に置くか、身体の横で床の上に置きます。
② ゆっくりとお尻を浮かせていき、身体を横から見た時に、肩から膝までが一直線になるところまでお尻が上げます。
③ この状態で3秒間止め、余裕がある場合は、肛門をしめるように意識します。
④ ゆっくりとお尻を下ろします。
⑤ お尻を上げ下げする動きを10回程度繰り返して行います。

ながらトレーニング⑤『ストレートレッグレイジング』

ストレートレッグレイジングの効果

ストレートレッグレイジングは、両膝を伸ばしたまま、脚を上げたり下ろしたりするトレーニングです。
脚のつけ根の前面の筋肉や、太もも前面の筋肉とともに、腹筋群も鍛えられます。

テレビを見ている時などに、寝転がって行うのが基本です。
これ以外にも、お風呂に浸かりながら足を伸ばした座位で行ったり、勉強中や読書中に椅子に座った状態で行ったりすることも可能です。

ストレートレッグレイジングのやり方

① 両膝を立てて仰向けに寝ます。
② 両手は頭の後ろに組むか、体側の床に軽く置きます。
③ 膝を軽く曲げ、ゆっくりと両足を上げていきます。
④ 両方の股関節が90度程度曲がった状態になったら、ゆっくりと両足を下ろしながら、膝を伸ばしていきます。
⑤ 足が床につく一歩手前まできたら、またゆっくりと両足を上げます。
⑥ 脚の上げ下ろしの動きを繰り返し行います。

おわりに

何かをしながら簡単にできてしまう『ながらトレーニング』を5種類ご紹介しました。

自宅で行うトレーニングは、ジムなどに通わなくても毎日できることがメリットです。しかし、「明日やろう」と先延ばしにしてしまいがちで、実際に長期間継続できる方は、少ないのが現実です。
だからこそ、あえてトレーニングの時間を設けなくても、家事や日常生活の行為をしながらできる『ながらトレーニング』に切り替えることで、トレーニングを継続するハードルが下がり、習慣化しやすくなります。
毎日数分のトレーニングの蓄積が、大きな身体の変化につながります。今まで自主トレーニングで失敗したことのある方は、是非『ながらトレーニング』にチャレンジしてみてください。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

関連する記事

関連するキーワード

著者