インナーマッスルはどこにあるの?

筋肉は『アウターマッスル』と『インナーマッスル』に大きく分けることができます。
体の表面や外側にある筋肉をアウターマッスル、内側にある筋肉をインナーマッスルと呼びます。

腕の力こぶを作る『上腕二頭筋』やシックスパックを作る『腹直筋』など、馴染みのある筋肉はアウターマッスルであることが多く、見た目にも鍛えていることがわかりやすいです。

これに対し、インナーマッスルは内臓を支えたり、姿勢を維持したりする役割を持っています。
外から見てわかる位置にはない上に、使おうと意識しないと鍛えることのできない筋肉です。

代表的なインナーマッスル

体の内側に位置するインナーマッスルですが、具体的にどこにあるのか分からなければ、鍛えることもできないと思います。
ここでは、代表的なインナーマッスル4つをご紹介し、それぞれの筋肉の場所や役割をご説明します。

1. 横隔膜

『横隔膜』という名前がついているので混乱しがちですが、筋肉の一つです。
胸と腹の間に位置して肺・心臓とその他の内臓を仕切っており、呼吸するのに大事な役割を果たします。

息を吸うときは、横隔膜が下がり、肺の膨らむスペースを作ります。この時、内臓を収めている『腹腔』というスペースに圧力がかかり、横隔膜とともに内臓も下がります。
息を吐くときは、横隔膜が上がることで肺や心臓を収めている『胸腔』というスペースに圧力がかかります。
このように、横隔膜は息を吸ったり、吐いたりすることに大きく関係している筋肉なのです。

2. 腹横筋

腹筋のさらに内側にあるインナーマッスルです。
体のバランスを維持して安定させる働きがあり、上半身を動かす際や運動をするときに、まず初めに動きます。
また、意識的に行う深呼吸の際に、息を吐ききる動作もこの腹横筋が行っています。
腹横筋を鍛えると、腹部を引き締めてぽっこりお腹を防ぐことはもちろん、内臓へ圧をかけることができるので、排泄を助ける作用があります。

3. 多裂筋

『多裂筋』は、背中から腰にかけての体の背面の中でも、一番内部に位置しているインナーマッスルです。
背骨は『椎骨』という24個の骨で形成されており、その中でも首のあたりにある骨を『頚椎(けいつい)』と呼びます。この頚椎から腰辺りにある『腰椎(ようつい)』までの椎骨1つ1つを繋いでいるのが多裂筋です。
細い束になっている筋肉が長く続いており、この筋肉のおかげで背中をまっすぐに維持できます。

4. 骨盤底筋群

『骨盤底筋群』とは、その名の通り、骨盤矯正の底辺にあるいくつもの筋肉のことです。『尿道括約筋』や『肛門括約筋』と呼ばれるリング状の筋肉が含まれ、筋肉の伸び縮みによって尿道や肛門を開いたり、閉じたりします。また、腸や膀胱を支えるのも、役割の一つです。
骨盤底筋群が弱ってしまうと、尿漏れなどを引き起こしたり、内臓が本来あるべき位置より下がった状態になったりしてしまいます。

インナーマッスルのトレーニング効果

基礎代謝を上げる

基礎代謝量というのは、人間が横になっている状態で、特に活動をしなくても消費されていくエネルギーのことを指します。
そのため、基礎代謝を上げるということは、知らず知らずのうちに消費するエネルギーが増えることにつながります。
インナーマッスルを鍛えることで、普段意識していない筋肉の消費エネルギーが増え、基礎代謝量の向上につながります。

姿勢をきれいにする

インナーマッスルを鍛える利点には、姿勢が綺麗になることです。
内側の筋肉がなぜ外の姿勢にまで影響が出るのかというと、例えば、多裂筋は一つ一つの骨を繋いでいるだけではなく、その筋肉が束になって背骨を支えています。
そのため、多裂筋を鍛えることは、背筋を伸ばすことに関係しています。
こうして、姿勢が良くなることに繋がるのです。

ぽっこりお腹を防ぐ

インナーマッスルの中でも腹横筋を鍛えると、ぽっこりお腹を防ぐことにつながります。
腹横筋の役割は、内臓を正常な位置にとどめることでもありますが、腹横筋自体が一つの壁となり、内臓が前に飛び出してくることを阻止してくれます。
つまり、内臓が出っ張ったぽっこりお腹を防ぐことになります。
ぽっこりお腹を防ぐことができると、背骨への負担も減りますので、腰痛が改善することもあります。

インナーマッスルを鍛えるトレーニング4選

ここでは、ご紹介した4つの代表的なインナーマッスルを鍛える方法をご説明します。
姿勢やぽっこりお腹など、改善したい部分に合わせて取り組んでみましょう。

1. 横隔膜のトレーニング:腹式呼吸

先ほど横隔膜は呼吸に関係しているというお話をした通り、横隔膜は腹式呼吸で鍛えることができます。

① あぐらの姿勢で、全身を脱力させます。
② 吐く息の量を一定のペースに保ち、肺に残っている空気をしっかり吐ききります。
③ 再び、全身を脱力させます。
④ 吐くときと同じように、一定のペースで大きく息を吸い込みます。
⑤ 吸う、吐くの動作を1回とし、5回×3セット行います。

慣れてくると、自然と息の量が増えてくるでしょう。

2. 腹横筋のトレーニング:フロントブリッジ

腹横筋を鍛えるのは『フロントブリッジ』や『プランク』と呼ばれるトレーニングです。行ってみると、すぐにぽっこりお腹に効果があることが分かってもらえると思います。

① 床でうつ伏せの姿勢になります。
② 上半身を起こし、肘から手首を床につけます。
③ 肘を肩幅まで広げ、肘の角度が直角(90度)になるようにします。
④ つま先とひじで体を支え、頭からつま先までのラインがまっすぐになるように意識します。
⑤ この姿勢を30秒間維持します。
⑥ 1分間のインターバル(休憩)を挟みます。
⑦ 姿勢の維持&インターバルを1セットとし、10セットを目安に行います。

初めのうちは、自分の重さを支えるのが大変かもしれませんが、続けていくことで安定感が増し、「あんなに大変だったのに!」と思えるような効果を感じられるはずです。

3. 多裂筋のトレーニング:ダイアゴナル

多裂筋を整えるトレーニングには、『ダイアゴナル』があげられます。多裂筋は背骨付近に集中している筋肉ですので、背中を意識して行いましょう。

① 四つん這いの姿勢をとります。この時、お尻から頭の先までをまっすぐにします。
② 両膝をついたまま、左手を背中と水平になるように伸ばします。
③ この姿勢を5秒間維持します。
④ ゆっくりと左手を下ろします。
⑤ 今度は、右手を背中と水平になるように伸ばします。
⑥ この姿勢を5秒間維持します。
⑦ 左右の動作を1セットとし、10セット行います。

本来、ダイアゴナルでは、上げた手と反対側の足(右手を上げたら左足)を上げる姿勢をとりますが、負荷がかかりすぎてしまうと、せっかく頑張ろうと始めた気持ちも冷めてしまいます。そのため、まずは運動の習慣を作ることを中心に行いましょう。
慣れてきたら、上の写真のように手と足を同時に挙げることで、さらに負荷をアップすることができます。この時、足も背中と水平になるように意識することを忘れないようにしてください。

4. 骨盤底筋群のトレーニング:ヒップリフト

① 仰向けの姿勢で床に寝ます。
② 膝を立てて足の裏を床につけ、足を肩幅に開きます。
③ 背中の上の方と足の裏で身体を支え、床からお尻を浮かせます。
④ 上の写真のように膝から肩までをまっすぐにしたら、5秒間かけて息をしっかり吸い込みます。
⑤ 息を吐きながら、お尻をゆっくりと下ろします。
⑥ お尻を持ち上げて下ろすまでを1回とし、5回×3セット行います。

鍛えようと力むと、腰が反ってしまうことがあります。膝から鎖骨の辺りまでがまっすぐになることを意識して行いましょう。

おわりに

インナーマッスルは普段意識して動かしている筋肉ではないので、トレーニング方法を試してみても、鍛えられているのか不安になるかもしれません。
しかし、どの筋肉を鍛えているのかを意識することが、トレーニングにおいてはとても大事な要素です。
アウターマッスルにしろ、インナーマッスルにしろ、鍛えている筋肉を理解しながら行うことで、トレーニングの効果を実感してもらえると思います。

監修

・救急医、内科医 増田陽子

・救急医、内科医 増田陽子

専門分野
微生物学、救急医療、老人医療

経歴
平成18年 Pittsburg State大学 生物学科微生物学・理学部生化化学 卒業
平成22 年 St. Methew School of Medicine 大学医学部 卒業
平成24年 Larkin Hospital勤務
平成26年 J.N.F Hospital 勤務

資格
日本医師資格
カリブ海医師資格
米国医師資格

関連する記事

関連するキーワード

著者