大臀筋を鍛えるメリット

お尻にある3つの主な筋肉の中で一番多きいのが『大臀筋』です。脚を後ろに引いたり、回したりするときに使われるほか、歩行や直立姿勢を支える重要な役割を果たします。
ここでは、大臀筋を鍛えるとどんなメリットがあるのか具体的にご説明します。

■歩行効率アップ

歩行動作では、股関節を中心に足を前後に動かす動作が基本となります。
大臀筋の主な役割は、片足立ちになったときに股関節を支え、股関節を後ろに引くこと(股関節の伸展)です。
着地した側の大臀筋を使って地面を蹴ることで推進力を得るので、大臀筋を鍛えることで歩行効率が改善します。

■脚力アップ

ジャンプで飛び上がるときや重たいものを持ち上げるとき、私たちは曲げた股関節を伸ばす動作をします。
そのときに大きく作用するのが大臀筋なので、大臀筋を鍛えることで脚力が向上し、ジャンプ力がアップしたり、より重たいものを持ち上げることができるようになったりします。

高齢者においては、筋力低下によって階段昇降や立ち上がり動作が難しくなるので、大臀筋のトレーニングにより、それらの動作を楽に行えるようになるというメリットもあります。

■変形性股関節症の予防

股関節は下肢の付け根となる関節であり、下半身の動きの中心となるべき部位です。
また、立っているだけで骨盤より上の身体の重さを支えるため、股関節には大きな負荷がかかります。
股関節の周りには大臀筋をはじめ、大きな筋肉が前後内外側についており、股関節を支えたり動かしたりするために働きます。
大臀筋を鍛えることで股関節を支える機能が高まるので、加齢や過度な負荷によって起こる変形性股関節症や股関節痛を予防することができます。

■美尻効果

大臀筋を鍛えると、お尻周囲の脂肪が燃焼され、引き締まったお尻になります。
それだけでなく、ヒップラインも上がるので、美尻効果が期待できます。

■代謝改善

身体の筋肉量が増えると、基礎代謝(何も活動しなくても消費されるエネルギー)が良くなるので、痩せやすく太りにくい体質になります。
特に、大臀筋は身体の中でも比較的大きい筋肉なので、鍛えることで代謝の改善にもつながりやすい筋肉です。

大臀筋の筋トレ

大臀筋のトレーニング方法は肢位や負荷の強さの違うものがいくつもありますので、代表的なものをご紹介します。

■ブリッジ

大臀筋の筋トレ初心者の方はまずこれを始めてみてください。

① 両膝を立てて仰向けに寝ます。手はお腹の上に置くか、身体の横で床の上におきます。
② ゆっくりとお尻を浮かせていきます。
③ 身体を横から見たときに肩から膝までが一直線になるところまでお尻を上げたら、3秒間止めます。
(余裕がある場合はお尻を上げたところで肛門をしめるように意識するとより効果的です)
④ ゆっくりお尻を下ろします。
⑤ この動きを10回程度繰り返して行いましょう。

この方法で筋力的に余裕がある方は、片方の足を反対の膝に引っかけて片脚でのブリッジを行うと、負荷が上がり効果的です。
片脚になると骨盤がぐらぐらしやすくなるので、それを抑えることで腹筋や背筋など体幹の筋力向上にも効果があります。

■ヒップエクステンション

四つ這いから身体を動かすので高いバランス機能が必要になります。
足を浮かせて行うトレーニングで負荷は比較的軽いですが、股関節の可動域いっぱいまで使うので、ヒップアップやお尻引き締め効果の高いトレーニングです。

① 両肩の真下に両手、両股関節の真下に両膝をつくようにし、床の上で四つ這いになります。
② 肩から股関節までを一直線に保ち、背中や腰が反ったり丸まったりしないようにします。
③ 片方の膝を床から浮かせ、膝を90度程度に曲げたまま足の裏で天井を蹴るように股関節を伸展させます(足を後ろに引きます)。このとき両手と片膝だけで支えるようになりますが、骨盤が傾かないように注意してください。
④ 骨盤を傾けずに上げられる範囲の上限まで足を蹴り上げ、お尻の収縮を感じたらゆっくり元に戻します。
⑤ この動きを10回程度繰り返したら、左右を替えてもう一度行いましょう。

■スクワット

自分の体重を支えるため、ご紹介するなかでは最も負荷の高いトレーニングです。
バーベルなど重量物を担ぐことで、さらに負荷を大きくすることができます。立位で行うので、実践的な日常生活動作やスポーツ動作に近い形で行えるトレーニングです。

① 足を骨盤の幅に広げて立ち、両足を平行にしてつま先が進行方向を向くようにします。手は身体の横に自然に置いておくか、頭の後ろに組む、もしくは腰の後ろで組んでおきます。
② ゆっくりと股関節、膝関節、足関節を曲げて重心を落とします。このとき、股関節と膝関節、足関節が同じくらいの角度で曲がるようにし、重心が前後しないようにします。
③ 膝が90度程度に曲がるところまで下げるか(ハーフスクワット)、もしくは太ももと床が平行になるところまで重心が下がったら(フルスクワット)、ゆっくりと足を伸ばして最初の姿勢に戻ります。
④ この動作を10回程度繰り返して行いましょう。

大臀筋のストレッチ

トレーニングでは筋肉を収縮させるため、続けていると筋肉が硬くなってきてしまいます。
筋肉が硬くなると、うまく筋力を発揮できなくなったり、ケガをしやすくなったりしてしまうので、トレーニングの前後には、筋肉を伸ばして柔軟性を高めるストレッチを行うことをおすすめします。

① 椅子に座り、片方の足のみあぐらをかくように開き、反対の膝の上に乗せます。
② 腰が丸まらないように背筋を伸ばしたまま身体を前に倒します。
③ あぐらをかいた方のお尻に伸張感を感じたら20秒間静止します。
④ 片方がストレッチできたら足の左右を替えて反対のお尻もストレッチしてください。

大臀筋のマッサージ

身体が硬くストレッチがうまくできない方、大臀筋にコリを感じる方にはストレッチだけでなくマッサージも効果的です。

① 両膝を立てて仰向けに寝ます。
② 片方の手でこぶしをつくり、片方のお尻の下に入れて体重をかけます。
③ 膝を左右に軽く揺らしながら、気持ちよい場所を気持ちよい強さでマッサージしてください。

大臀筋の深層には坐骨神経が走行しています。
マッサージ中、痺れやいやな痛みを感じる部位は避けて行うようにしてください。
また、こぶしをお尻の下に入れると手が痛い場合は、テニスボールなど適度な硬さのボールなどを使用して行ってもかまいません。

おわりに

今回は大臀筋についてトレーニングを行うメリットとやり方、一緒に行いたいストレッチやマッサージの方法を合わせてご紹介しました。
大臀筋は大きな力を発揮することができ、日常生活動作にも直結する大切な筋肉ですので、下半身を鍛えたい方には、ぜひ大臀筋のトレーニングを行っていただきたいです。
今回の内容を参考に、大臀筋のトレーニングやケアを始めてみてください。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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