運動しているのに痩せない理由

1. 適切でない食事

運動をしているのに痩せない理由に最も多いのが、「適切でない食事内容」だと思います。
基本的に適切な食事内容であれば、体重は減少していきますから、本来なら食事の改善でダイエットが完結するはずです。

さらに、適切な食事を考えずに、運動だけでダイエットしようとすると、食欲が増進してしまうという問題も発生しやすくなります。これは、強度の高い有酸素運動や無酸素運動をすると、身体は次の負荷に備えるために、少し余分に栄養を溜め込もうとすることで起こります。
運動をしても、消費した以上に栄養を吸収してしまうことがあり、それが痩せない状況を作り出してしまうのです。
そのため、運動で体重を減らしたいと考えている方は、食事も同じように、または、それ以上に大切だということ知っておきましょう。食事を改善したうえで、運動を足していけば、痩せる確率が非常に高くなります。

2. 筋肉が分解するほどの長時間のトレーニング

効率的なダイエットは、「基礎代謝の増加」、「消費カロリーの増加」、「摂取カロリーの減少」の3つの柱からなっています。
中でも、「基礎代謝の増加」には、筋肉の増加が必要不可欠です。ダイエットを目的に筋トレをしている方も少なくないため、多くの人が知っている事実だと思います。
しかし、有酸素運動だけでなく、筋トレを長時間行うと、逆効果になってしまうことがあります。

筋トレの時間が長くなるにつれ、『糖質コルチコイド(コルチゾールなど)』というホルモンの分泌量が増加します。このホルモンは、貯蓄した糖分を肝臓から血中に送り出したり、筋肉のタンパク質を分解してエネルギーを作り出したり、脂肪を分解してエネルギーを作り出したりします。
問題なのは、糖質コルチコイドが必要以上に分泌されると、「筋肉の分解」が起こってしまうことです。筋肉が分解されると、基礎代謝を上げることができず、運動をしているのに痩せない要因になります。

また、長時間の有酸素運動もダイエット初期には効果的かもしれませんが、身体が慣れてくると、エネルギーを無駄に使わないように省エネになっていきます。そのため、同じ不可の有酸素運動を続けることは、脂肪燃焼には効果的とは言えないようです。

3. 無酸素運動と有酸素運動の偏り

筋トレなどの無酸素運動を行って筋肉を付けることは、基礎代謝の増加には効果的ですが、無酸素運動だけでは、痩せることはできません。
筋肉がつくと同時に、必ず脂肪もつきます。驚かれるかもしれませんが、これは医学的に当たり前の話です。
体脂肪を減らしながら痩せるには、筋トレなどの無酸素運動だけでなく、有酸素運動も必要となります。例えば、ボディービルダーやフィットネスモデルたちは、オフシーズンは筋トレしかしていませんが、コンテスト前には体脂肪を極限まで落とすために必ず有酸素運動を行っています。

これとは逆に、有酸素運動だけをしていても、ダイエットには効率的ではありません。
有酸素運動で体重を落とすためには、一定以上の運動時間が必要ですが、痩せるのに必要な運動時間を確保ができない状況の人が大半です。
また、ある程度時間が確保できたとしても、先ほどご説明したように、長時間の運動になりすぎると、糖質コルチコイドの分泌が多くなってしまします。こうなると、筋肉量は落ちてしまうため、基礎代謝の低下を引き起こして痩せないことがあります。

このように、有酸素運動と無酸素運動のどちらかに偏っていると、運動しても痩せない現象が起こりやすくなります。痩せるためには、筋トレなどの無酸素運動で基礎代謝を上げてから、有酸素運動を取り入れると良いでしょう。

痩せるための運動メニューの作り方

今回ご紹介するメニューでは、以下の2項目を目指しています。
●短時間で行え、筋肉の分解を起こしにくい
●有酸素運動と無酸素運動のバランスが取れている

メニューご覧になると、上級者になればなるほど、短時間で運動が終了することが、おわかりいただけると思います。初心者の方は、無理をせずにより簡単に痩せることを目指し、徐々に上級者に近づいていきましょう。

※メニューに出でくる『RM』とは、運動強度を示す単位です。一定の重さに対し、何回運動を繰り返すことができるかを指します。
例えば、50kgのバーベルを1回しか上げられない場合は、50kgが1RMとなり、30kgでは10回上げるのが限界の場合は、30kgが10RMとなります。

1. 上級者メニュー

① 筋肉量アップのための『1ヶ所筋トレ』
10RM(10回で限界の重量)を3~4セット行います。
セット間の休憩は3分間とします。

② 脂肪燃焼のための『全身トレーニング』
バービースクワット、全力ダッシュなどの全身運動を行います。
20秒間運動し、10秒間休憩するトレーニングを8セット行いましょう。慣れるまで休憩時間は20秒程度でも大丈夫ですが、合計4分間続けてください。

2. 初心者向けメニュー

① 筋肉量アップのための『1ヶ所筋トレ』
10RM(10回で限界の重量)を3~4セット行います。
セット間の休憩は3分間とします。

② 高負荷と低負荷交互に行う『有酸素運動』
「軽いランニング」と「ダッシュ」を交互に行う運動を10~15分間繰り返します。
ダッシュは無理のない範囲で行い、2回目以降のランニングは、次にダッシュできる体力が戻るまで続けましょう。

3. 高齢者・超初心者向けメニュー

① 筋肉量アップのための『1ヶ所筋トレ』
10RM(10回で限界の重量)を3~4セット行います。
セット間の休憩は3分間とします。

② ウォーキングによる『有酸素運動』
「普通の徒歩」と「手を大きく振った早歩き」を交互に行う運動を10~30分間繰り返します。
1回の早歩きは、30秒間ほど続けてください。

ダイエットで気を付けること

1. 適切な食事内容にする

体重を減らすためには、運動とともに適切な食事を摂ることが重要です。普段の食事では、以下の2点に気をつけましょう。

① 糖質の過剰摂取を避ける
現代人の食事は糖質の過剰摂取になりやすくなっています。糖質が悪いのでなく、過剰摂取することが問題です。
3食のうち1食は糖質を摂らないようにすることから始め、最終的には2食糖質を無くせるようにしましょう。そうすれば、身体も変わってくると思います。
ここでは詳しく論じませんが、もちろん、お菓子を食べるのも禁物です。

② トランス脂肪酸を避ける
『トランス脂肪酸』は、マーガリンやショートニングと言われ、パンやお菓子などの加工食品に添加されている脂質です。
摂取している人の身体では、『リポタンパク質』が増加する傾向があります。リポタンパク質は、コレステロールの主成分の1つで、動脈硬化や動脈瘤といった、血管の病気の要因になることも知られています。
また、排出しにくい脂質のため、肥満傾向になりやすいとも言われています。
これらの事実から、米国食品医薬品局(FDA)は、トランス脂肪酸の食品添加物を2018年6月から原則禁じていますが、日本では全く規制がなく、パン、お菓子、加工食品に使用されています。
痩せたい人にとっては避けるべき脂質ですので、食品の表示をしっかりと確認しましょう。

2. 運動は空腹時がベスト

よく運動前にエネルギーを摂取した方が良いという話を聞きます。
しかし、運動前に食事を摂ると、自律神経が休息時に働く『副交感神経』に偏ってしまい、脂肪をエネルギーに替える機能が働きにくくなってしまいます。
そのため、ダイエット目的の場合は、空腹時の運動が良いでしょう。
また、45分以内の運動であれば、運動前に糖質を摂取した人と、摂取しなかった人でパフォーマンスの違いは出ないとも言われています。
そのため、体重減少が目的なら、空腹時に運動を行う方がベストです。

3. まず運動を習慣化する

前章でご紹介したメニューの中でも、最短なものは15~30分間程度の運動です。時間が短いため、忙しい方でも週1回からならできると思います。
ダイエットで成果が出せない理由には、習慣化ができないことが多いように思われます。最初から無理をせず、まずは継続することを目指しましょう。

おわりに

日本人は勤勉な傾向が強いせいか、「頑張れば頑張るほど痩せられる」「苦しめば苦しむほど結果が出る」と考えがちです。しかし、それが裏目に出て、今回ご説明した痩せにくい要因となっているケースもあります。
無駄なく合理的に行えば、思っているより楽にダイエットできるかもしれません。この機会にダイエットの方法を見直してみてはいかがでしょうか。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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