三角筋とは

三角筋は肩関節を包み込むように位置した筋肉です。
名前の通り逆三角形の形状をしており、肩関節の前側にある『前部線維』、側面にある『中部繊維』、背中側にある『後部繊維』に分けられます。
前部繊維は鎖骨から、中部や後部線維は肩甲骨から筋肉が始まり、上腕(肘と肩の間)の外側までつながっています。

三角筋全体としては、肩を外転させる(横に開く動き)に作用します。
ただし、細かく分けると、前部線維はバンザイする方向に、中部線維は肩関節の外転に、後部線維は腕を後ろに引く動きに作用します。

肩関節にはそのほかにもたくさんの筋肉がありますが、三角筋は様々な方向に動かすことに関与し、大きなパワーを発揮できるという点において、肩関節の要ともいえる筋肉です。

三角筋を鍛えるメリット

■たくましい肩の膨隆と肩幅アップ

男性らしくがっちりした肩を手に入れたいならば、真っ先に鍛えるべきなのが三角筋でしょう。
三角筋が発達すると、肩を包み込むように膨隆するので、上半身裸になったときやタンクトップを着たときに肩回りをたくましく見せることができます。
また、同時に肩幅も広くなるので、華奢な見た目が気になる男性にとって、スーツの似合うたくましい肩幅を手に入れることができます。

■腕の筋力アップ

重たいものを持ち上げたり、腕を太くしたりするときには、力こぶを作る『上腕二頭筋』に目がいきがちです。
上腕二頭筋は肘を曲げることに作用しますが、重たいものを持ち上げるときには、肩関節を動かす力も必要です。ここで活躍するのが三角筋なのです。
また、上腕二頭筋など腕の力をしっかり発揮させるためには、より身体の中心に近い肩関節が安定していることも大切です。三角筋の筋力がしっかりとつくと、肩関節が安定し、腕全体の筋力をアップさせることにつながります。

■肩関節のケガ予防

手足の関節の周りには靭帯や筋肉があり、関節が脱臼しないように守ったり、自由に関節を動かすのを助けたりしています。中でも、肩関節を包み込むようにしている三角筋は、肩関節を守る筋肉としてとても重要な筋肉です。
靭帯の量や質をトレーニングで変えることは不可能に近いですが、筋肉の量や質はトレーニングやストレッチによって変えることができます。つまり、三角筋を鍛えることで、肩関節脱臼や靭帯損傷などのケガを防ぐことができるのです。

■肩こりや五十肩の予防

首から肩にかけての筋肉が、異常に緊張して硬くなることで、肩のこり、痛みや重だるさが生じます。
この原因の一つとして、首や肩周りの筋肉に対する過度な負担があげられます。
例えば、重たいものを何度も持ち上げたり、運んだりするような作業では、首から肩にかけての筋肉にずっと力を入れた状態が続き、肩こりを引き起こします。
このような作業を減らすことができれば、肩こりも解消できるかもしれませんが、仕事や趣味の内容によっては、作業を減らすことが難しい場合もあります。
そこで、三角筋や腕の筋肉を強くすることができると、首周りの筋肉の変わりに力を発揮してくれます。
こうすれば、肩こりの原因となる筋肉への負担が減り、肩こりの予防や改善につながります。

また、五十肩は加齢とともに起こる筋力低下や、筋肉の伸張性の低下が、主な原因といえます。
三角筋を中心に肩周りの筋肉をトレーニングすることで、筋力や筋肉の伸張性を維持することができ、五十肩の予防につながります。

■基礎代謝の改善

三角筋に関わらず、全身の筋肉量が多くなると、代謝が高くなり、じっとしていても消費されるエネルギーが増えます。
今までと同じ生活をしていても多くのカロリーが消費されるので、脂肪がつきにくく、太りにくい体質になります。

三角筋の筋トレ

三角筋のトレーニング方法の中でも、効果的かつ比較的行いやすいものをご紹介します。

■サイドレイズ

三角筋全体を鍛える基本的なトレーニングです。ダンベルや代わりになる錘を使って行います。

① 座位または立位で背筋を伸ばし、腕を身体の横に下ろしておきます。
② 両手にダンベルや錘を持ちます。
③ 肩に力が入り過ぎて首がすくまないように注意しながら、肘を伸ばしたままゆっくり腕を横に開きます。このとき手の甲が上向きになるようにします。
④ 手が肩の高さと同じ位置になるまで上げ、ゆっくりと下ろす動きを繰り返し行います。

片手ずつこのトレーニングすることも可能ですが、身体が傾きやすく、バランスが取りにくいので、両手同時に行うことをおすすめします。

■アップライトローイング

三角筋の前部線維と中部線維を中心に鍛えるトレーニングです。ダンベルや代わりになる錘を使って行います。

① 骨盤の幅に足を開き、背筋を伸ばして立ちます。
② 両手にダンベルなどの錘を持ち、両太ももの前に手を下ろします。このとき手の甲が前向きになるようにします。
③ 手の甲が前向きの状態を保ちながら身体に沿わせるように両肘を曲げて顎の下に錘を引き付けるように上げます。
④ 肘を肩と同じくらいの高さまで上げ、ゆっくりと手を元の位置に下ろすという動作を繰り返し行います。

身体の前側で錘の上げ下げを行うと、どうしても身体が前傾してしまいがちです。こうなると、違う筋肉へ作用して三角筋のトレーニング効果が得られなかったり、腰を傷めたりしてしまいますので、身体はしっかり起こしておくように意識してください。

また、ダンベルなどの錘を使用してトレーニングを行う場合、筋力アップに伴って負荷を少しずつ上げていかなければ効果が見られなくなってしまいます。
同じトレーニングをしていて最初よりも楽になってきたと思ったら、錘の重さを上げたり回数を増やしたりするなどして、ある程度の負荷を常に保てるようにしてください。

■腕立て伏せ

大胸筋や上腕の筋肉を鍛えるのに行いますが、三角筋の前部線維も鍛えられるトレーニングです。

① 四つ這いの姿勢から、肩幅よりも拳2つ分広げた幅で両手を床につきます。
② 足は骨盤の幅にして、膝を伸ばしてつま先だけが床につくようにします。
③ 身体を横から見たときに肩から足首までが一直線になるようにし、腰が反ったり曲がったりしないようにします。
④ 手順③までのポジションがとれたら、ゆっくりと肘を曲げ、身体を床に近づけていきます。
⑤ 身体や顔が床につく手前まで下ろしたら、ゆっくりと肘を伸ばして元の姿勢に戻し、この動きを繰り返し行います。

■ローイング

① トレーニング用のチューブを柱などの固定されたところに通します。
② チューブに向かって正面に立ち(または座り)、両端を両手で持ちます。
③ 背すじを伸ばし、チューブの位置がだいたいウエストの高さと同じになるようにします。
④ 体幹部を前後に動かないようにしっかりと固定し、ボートを漕ぐ要領で肘を曲げて両手でゆっくりとチューブを自分の脇腹に近づけるように引っ張ります。
⑤ 手が腰の横にくるところまで引けたら、ゆっくりと手を緩めて元の位置に戻し、この動作を繰り返し行います。

三角筋のストレッチ

筋トレをすると、筋肉が収縮を繰り返します。
筋トレで徐々に筋力がつきますが、負荷の強いトレーニングを繰り返し行うと、筋肉が硬くなって伸張性が低下してしまうこともあります。
筋トレを行うときには、その前後にストレッチで筋肉をしっかり伸ばしておくことが大切ですので、その方法をご紹介します。

■三角筋全体のストレッチ

三角筋は肩関節を横に開く作用があるので、ストレッチでは肩関節を内側に入れることで筋肉を伸ばします。このストレッチでは三角筋全体を伸ばしますが、主に中部から後部繊維に効きます。

① ストレッチする方の手を反対の肩を触るように伸ばします。
② 反対の手で上腕を自分の方に引き寄せるように押さえます。
③ 肩の後方に伸張感を感じたら、その姿勢で20秒間ほど静止します。

■中部・後部繊維のストレッチ

三角筋は筋肉の走行が前部、中部、後部線維と少しずつ異なり、このストレッチでは、前部線維を伸ばすことができます。

① 両手を後ろで組み、手のひらが自分の背中の方に向くようにします。
② 背すじを伸ばして胸を前に突き出しながら、後ろに組んだ両手を後ろやや上方に上げるように引っ張ります。
③ 胸の前から腕の前方に伸張感を感じたら、その姿勢で20秒間ほど静止します。

三角筋のマッサージ

トレーニングで硬くなりがちな筋肉は、ストレッチのほかに、マッサージでもほぐすことができます。
筋肉全体ではなく、三角筋の一部が特にこったような感じがするときは、マッサージの方が効果的な場合もありますので、是非行ってみてください。

三角筋の線維は腕のつけ根から手先に向けて縦方向に走行しています。
筋肉のマッサージは筋肉の線維に対して垂直に圧をかけることが基本です。
① ほぐす側の反対の人差し指から薬指までの3本をそろえ、指腹(指のはら)で気持ち良い程度に圧をかけながら筋線維を横断するようにゆっくりマッサージします。
② マッサージ中に特にこっている場所を見つけた場合は、そこで止めて数秒間圧迫し続けたり、圧迫したまま肩を回すように少し動かしたりしてみるのも効果的です。

マッサージ後にほぐれた・気持ち良いと感じることが正しいマッサージなので、自分の感覚を大切にしながら行ってください。
マッサージが痛い場合は、刺激が強すぎて筋肉を傷めてしまう場合もありますので、我慢せずにいた気持ちよい程度で行うようにしてください。

おわりに

今回は肩関節の筋肉である三角筋について、トレーニング方法と一緒に行いたいストレッチ・マッサージのやり方についてご紹介しました。
筋肉の作用や役割を正しく理解した上で、正しい方法でトレーニングを行うことで、より効果的に鍛えることができます。
今回の内容を理解していただき、ご自分の目標にあったトレーニングやケアを行っていただきたいと思います。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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