はじめに

スポーツによるけがや加齢による痛みなど、体の痛みには色々な種類があります。
その中でも今回は、かかとの痛みに限定して原因となる疾患や症状の特徴、治療法について詳しく説明していきます。

かかとが痛いと考えられる原因とは?

かかとの痛みでお悩みの方は自分の痛みの原因がなんなのか、病院に行くべきなのか、自宅でケアすればよいのか、どんなことに気を付けて生活すればよいのか、など様々な疑問や不安を抱いておられると思います。

かかとにはかかとの骨である『踵骨』や、踵骨の周りを取り囲み、かかとへの衝撃を吸収する『脂肪体』、足首や足の指を動かすための筋腱である『アキレス腱』や『足底腱膜』など様々な組織があります。一口にかかとの痛みと言っても、これらのどこから生じている痛みなのか、その部位が痛みをだしている原因によって治療の仕方も異なります。

足底線維腫症

足底線維腫症は、足の裏に良性の腫瘤ができる疾患です。はっきりとした原因はわかっていませんが、足底への刺激が繰り返されることで起こるのではないかと考えられています。

症状は出ないことが多いですが、足の裏を動かしたときや、足の裏に体重がかかったときに痛みが出ることがあり、足底を触ってみると自分でも腫瘤が確認できます。良性の腫瘤なので、症状がでない場合は経過観察とし、積極的な治療は行いませんが、痛みが強かったり腫瘤が大きいときには手術で取り除くことも考えられます。

踵脂肪褥炎(脂肪体の委縮)

踵脂肪褥炎は中高年に多く起こり、踵の丸みをおびた部分の痛みを伴う疾患です。踵は踵骨の表層を『脂肪体』という脂肪組織が分厚く覆っており、踵に体重がかかった時の衝撃吸収として働いています。しかし、年齢を重ねるとともにこの脂肪体が硬化し、衝撃を吸収する機能が低下してきます。また、踵への衝撃の繰り返しが多い人も脂肪体が硬化したり、脂肪体自体が左右に広がってしまって厚みを失い、衝撃吸収機能が低下してしまいます。

このような状態になると、踵骨自体にかかる衝撃が増してしまい、痛みがでてきてしまいます。踵脂肪褥炎の治療は、踵へのテーピングやジェルヒールカップで踵を保護し、炎症を抑制することとなります。

踵骨骨折

踵骨骨折は、ほとんどが高所からの転落によって踵を強く打った時に生じますが、高齢者の場合は、階段数段を踏み外したという程度でも踵骨骨折となることがあります。

症状は踵に体重をかけたときの痛みが顕著であり、X線やMRIで診断を行います。治療については、骨折の程度によって整復後にギプス固定を行う保存療法と手術を行う手術療法が選択されます。踵骨骨折は足部の腫れが強く出ることが多く、足首の可動域制限も残りやすいため、リハビリが重要になりますが、歩きにくさや長時間立ちっぱなしでの足周囲の痛みなどの後遺症が残りやすい外傷です。

アキレス腱滑液包炎

ふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)はアキレス腱を介して踵骨に付着していますが、アキレス腱と踵骨の間に『踵骨後部滑液包』、アキレス腱と皮膚の間に『皮下滑液包』というものがあります。

『滑液包』とは、動きを滑らかにするための液体が入った袋状のものであり、これがアキレス腱の前後にあることで、アキレス腱と踵骨や皮膚との間の摩擦を減らす役割を果たしています。この『滑液包』が、スポーツでアキレス腱を使いすぎたり、ハイヒールやきつめのシューズを履くことなどで皮膚の上から圧迫されることで炎症を起こしてしまいます。これをアキレス腱滑液包炎と呼びます。アキレス腱滑液包炎になると、足首を動かすことや、歩いたり走ったりということでアキレス腱の周囲に痛みがでてきます。アキレス腱滑液包炎の治療は、炎症を抑える薬の服用、靴のみ直しやインソールの使用、運動量の調整によってアキレス腱への負担を軽減することとなります。

踵骨骨端症

骨端症とは、成長期に成長軟骨の周囲で炎症を起こす状態を言います。踵骨にはアキレス腱が付着しているので、ふくらはぎの筋肉を繰り返し収縮させることで、踵骨の後ろの端にある成長軟骨に刺激が加わり、その周囲が炎症を起こしてしまうことがあります。

運動後や運動中の踵の痛みが主な症状で、10歳前後のよく運動をする男児に多いのが特徴です。初期症状である運動後の痛みだけであれば、アイシングやストレッチ、マッサージといった運動後のケアのみで改善することもありますが、運動中や日常生活内でも痛みがある場合には、運動量の調整が必要になります。

おわりに

今回は、かかとの痛みを生じる疾患について説明していきました。
ここにあげた疾患が全てではありませんが、かかとの痛みを抱えている方は、痛みの部位や痛みのでるタイミングなどからどの疾患に当てはまるのか参考にしていただければと思います。
それでも自分の痛みの原因がよくわからない場合、痛みの程度が強かったり、長期間改善しない場合は是非整形外科を受診してみてください。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野 
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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