背筋の構造

背中には多くの筋肉がありますが、ここでは、背中を引き締めるために重要な、『脊柱起立筋』『僧帽筋』『広背筋』の3つについて解説します。

■脊柱起立筋

脊柱起立筋は、背中の真ん中を縦に長くのびる筋肉群です。骨盤の中央にある『仙骨』から後頭部まで、『脊柱(背骨)』に沿って走行しています。
一つの筋肉ではなく、外側から『長肋筋』、『最長筋』、『棘筋』の3つから構成されます。

身体の深部にあるインナーマッスルの一つで、上半身を支える大切な役割があります。そのほか、体幹を後ろに反らしたり、横へ曲げたりする作用もあります。

脊柱起立筋を鍛えることで、背筋の伸びた美しい姿勢になり、猫背を解消できます。また、腰痛を予防することにもつながります。

■僧帽筋

背中の上の方にある僧帽筋は、肩先、後頭部、背骨の真ん中辺りを頂点とした、三角形の筋肉です。
上部、中部、下部に分かれて走行し、上部は後頭部、中部と下部は肩甲骨の上の方から筋肉が始まり、背骨の真ん中辺りにある『胸椎』に付着しています。

上部は肩甲骨を引き上げる、中部は肩甲骨を内側へ寄せる、下部は肩甲骨を引き下げる働きがあります。

僧帽筋を鍛えることにより、背中の上部を大きくしたり、肩こりや猫背を解消したりすることにつながります。

■広背筋

広背筋は、背中の下部に大きく広がる筋肉です。骨盤の中央にある『仙骨』や背骨の下方から始まり、左右の『上腕骨』まで走行し、逆三角形をしています。

肩甲骨を引き下げ、内側に寄せたり、体幹を後ろに反したりする働きがあります。肩関節にも付着しているので、肩関節を後ろに上げる作用もあります。

広背筋を鍛えることにより、背中の下部を引き締めて上部に厚みを出せるので、きれいな逆三角形の背中を作ることができます。

背中を鍛える自重トレーニング

逆三角形の背中にするには、ダンベルやウエイトマシンによる筋トレをしなければならないと思われがちです。しかし、ジムの本格的なトレーニングをせずとも、自分の体重を負荷にして自宅でトレーニングを行えば、効果を出すことができます。

ここでは、自宅でできる、継続して行いやすいトレーニングを3種類ご紹介します。

1. リバースノースエンジェル

逆三角形の背中をつくるのに大切な僧帽筋、広背筋、脊柱起立筋を鍛えられます。

① マットの上にうつ伏せになり、両腕を身体の横に置いて手のひらを下にします。
② 足を腰幅に開き、足の指をマットにつけます。
③ 両手をマットから可能な限り離すように上にあげ、3秒間キープしたら、ゆっくりと両手を下ろします。
④ 手順③を体力に合わせて15~30回繰り返し、インターバルをとりながら2~3セット行います。

両手を上げる時は、肩甲骨を内側へ寄せると、背中の筋肉をより働かせることができます。
疲れて肩甲骨をうまく寄せられない、腰などに痛みや違和感があるなどの場合は、回数を減らしたり、実施を中止したりしてください。

2. プランク

『プランク』では、背中の脊柱起立筋だけでなく、下腹部にある『腹横筋』やお尻にある『大殿筋』も鍛えることができます。

① マットの上に四つ這いになり、手を肩幅に広げます。
② 肘を90度に曲げ、両手をグーにして親指側を上に向け、手から肘までの前腕部を床につけます。
③ 脚を真っ直ぐ後ろに伸ばし、つま先だけをマットにつけ、下半身を浮かせて支えます。このとき、頭からかかとまでが一直線になるようにします。
④ 手順③の姿勢を体力に合わせて30~60秒間キープします。インターバルをとりながら、これを2~3セット行います。

一直線の姿勢が崩れては効果が現れませんので、お尻が落ちたり、上がったりしないように気を付けましょう。背中に長い棒が乗っている意識をすると、一直線をイメージしやすいです。
また、実施中は腹式呼吸を続けてインナーマッスルを刺激しましょう。

3. ヒップリフト

『ヒップリフト』では、背中の真ん中にある脊柱起立筋と、お尻にある大殿筋、太ももの後ろにある『ハムストリングス』を鍛えられます。
簡単に行うことができ、初心者の方でも継続しやすい筋トレです。

① マットの上に仰向けになって両膝を立て、両足の間をこぶし1つ分開けて足同士がくっつかないようにします。
② 両手を身体の横に置き、手のひらを開いて下に向けます。
③ 息を吐きながらお尻を持ち上げ、肩から膝が一直線になるようにします。
④ 手順③の姿勢を3秒間キープしたら、息を吸いながらゆっくりとお尻を下ろします。
⑤ お尻の上げ下げを体力に合わせて10~30回繰り返し、インターバルをとりながら2~3セット行いましょう。

お尻をすぐに下ろしてしまっては、脊柱起立筋が十分に働かないので、3秒間以上キープしてください。
また、お尻を上げすぎたり、下げすぎたりしないよう気をつけましょう。

トレーニングの頻度と時間

■トレーニングの継続時間

今回ご紹介した3つのトレーニングは、休憩を入れても20分あれば行えます。
忙しい時には、1種目だけを行っても構いませんが、1セットだけでなく、2~3セット行うようにしてください。1セットだけでは負荷が不十分で、筋トレの効果が現れにくいです。

■トレーニングの頻度

トレーニングを行うと筋肉痛が現れますが、これは筋肉を構成する『筋線維』が、トレーニングにより損傷するからと言われています。
損傷が回復することにより、筋肉が強く太くなり、この反応を『超回復』といいます。

超回復にかかる時間は、筋肉の大きさや質により異なります。
だいたいの目安として、僧帽筋は48時間、広背筋と脊柱起立筋は72時間ほど超回復にかかるといわれています。
そのため、背中の筋トレは2~3日の間隔を空けることが必要で、週に2~3回の頻度で行うのがおすすめです。

おわりに

背中の筋肉の構造や、背筋のトレーニング方法、トレーニングの時間や頻度について解説しました。

メリハリのある逆三角形の背中を目指すには、僧帽筋、広背筋、脊柱起立筋の3つを総合的に鍛えることが大事です。

今回ご紹介した3種類の筋トレは、男性にも女性にもおすすめです。20分ほどの短い時間で行えるものなので、自宅でぜひ試してみてください。
長回復の時間を考慮し、2~3日に1回のペースで実施していただければと思います。

監修

・救急医、内科医 増田陽子

・救急医、内科医 増田陽子

専門分野
微生物学、救急医療、老人医療

経歴
平成18年 Pittsburg State大学 生物学科微生物学・理学部生化化学 卒業
平成22 年 St. Methew School of Medicine 大学医学部 卒業
平成24年 Larkin Hospital勤務
平成26年 J.N.F Hospital 勤務

資格
日本医師資格
カリブ海医師資格
米国医師資格

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