はじめに

朝起きようと思っても、低血圧で頭が重くなかなか起きられない。
そんな経験を1度はしたことがあるという人もいるのではないでしょうか?

今回は低血圧について原因から改善法まで説明します。

低血圧とは

低血圧の定義

WHO(世界保健機関)の定義では、低血圧とは収縮期血圧(最高血圧)が100mmHg以下、あるいは拡張期血圧(最低血圧)が60 mmHg以下のものを言います。収縮期血圧とは、心臓が収縮して全身に血液を送り出す際に、心臓にかかる圧力のことです。拡張期血圧とは、心臓が拡張して全身から心臓に血液が戻ってくる際に、心臓にかかる圧力のことです。

血圧を決める要因

血圧を決定する主な要因は以下の5つです。平均血圧は心拍出量に末梢血管抵抗を乗じた数字で表されます。

(1)心拍出量
心臓の収縮によって全身に送り出される血液量のことで、通常は1分間に送り出される血液量のことを言います。これに対して、一度の心臓の収縮によって送り出される量のことを一回拍出量と言います。心拍出量が少ないほど、血圧は低くなります。

(2)末梢血管抵抗
手や足など末梢の血管の広がりにくさを言います。末梢血管抵抗が小さい方が、血圧が低くなります。

(3)循環血液量
全身を巡っている血液量のことです。健康な人であれば、血液量は体重の13分の1にあたります(体重65kgであれば血液量は5リットルあります)。循環血液量が減ると、血圧は下がります

(4)血液の粘性
赤血球などの血液の固体成分が多かったり、血中脂質が多い人はいわゆるドロドロ血液の状態となり、血液の粘性(粘り気)が高く、血圧は高くなります。反対に、貧血があると血液の粘性は低く(サラサラ)、血圧が低くなります。

(5)大動脈の弾力
心臓から大動脈という血管を通して、全身に血液を送り出されます。この大動脈が動脈硬化などによって柔らかさを失うと、収縮期血圧が高くなります。動脈硬化は加齢、喫煙、高血圧症、脂質異常症、糖尿病などによって引き起こされます。

低血圧の種類・原因

本態性低血圧

本態性低血圧とは、低血圧を起こしている原因がはっきりしないもの(原因不明)で、低血圧の8割程度を占めると言われています。同じ家系に低血圧の人がいることも多く、遺伝による影響も大きいとされています。また、筋肉量が少なく痩せている、青白い、疲れやすい、冷え性、内臓下垂があるなどの体格的な特徴があります。さらに、本態性低血圧が女性に多い理由の一つとして、女性ホルモンの影響があると考えられています。女性ホルモンには血管を拡張する作用があるため、男性よりも血圧が下がりやすくなります。
主な症状はめまい、立ちくらみ、頭痛、肩こり、倦怠感、息切れ、動悸、寝付きが悪い、朝起きられない、手足の冷えなど多岐に渡ります。

二次性低血圧(症候性低血圧)

二次性低血圧とは、低血圧を引き起こす病気や薬剤(原因)があり、その病気などが原因となって低血圧(結果)が起こっているものを言います。二次性低血圧の原因となる主な病気は以下の通りです。症状そのものは本態性低血圧とあまり変わりません。

(1)循環器疾患
心筋梗塞、心室細動や心室頻拍などの重症な不整脈、心筋症など。

(2)内分泌・代謝疾患
甲状腺機能低下症(橋本病)、副腎皮質機能低下症(アジソン病)、低血糖症、低ナトリウム血症など。

(3)循環血液量の減少ほか
出血、脱水、がんや消化器潰瘍(胃潰瘍、十二指腸潰瘍)などに伴う栄養障害、貧血。

(4)薬剤の副作用
薬の副作用として低血圧が現れることもあるため、起こりやすい薬を使用している人は注意が必要です。比較的低血圧が起こりやすい薬は降圧剤、利尿剤、強心剤、抗うつ剤、睡眠薬などです。

起立性低血圧

起立性低血圧とは横になった状態(臥位:がい)や座った状態(座位)から立ち上がったとき(立位)に急激な血圧低下が起こることによって、立ちくらみ、めまい、失神や血が引いていくような感覚が出るものを言います。起立性低血圧では、臥位や座位の状態から立位になったときに、収縮期血圧が20mmHg以上、拡張期血圧が10mmHg以上低下します。この血圧低下は一過性のものですが、普段の血圧が正常範囲内の人にも起こります。臥位や座位の状態から立位になった際、足の方を流れていた血液が心臓に上手く戻れないことによって、心臓から拍出する血液量が減るために低血圧が生じます。自律神経の調節機能が乱れている子供、高齢者、若い女性に多い傾向にあります。

低血圧を改善する方法

二次性低血圧への対処法

二次性低血圧の場合は原因となる疾患の治療が中心となります。何らかの原因によって急激に血圧低下が起こる場合は命に関わるため、直ちに治療を行う必要があります。特に心臓からの血液が、脳に送られるギリギリの血圧は(収縮期血圧)60mmHgですので、この付近もしくは下回るような場合は救急要請をしましょう。救急隊が到着するまでの応急処置としては、(仰向けの状態で)足を心臓より高い位置まで挙げます。意識がなくなっている場合は、嘔吐した際に誤嚥(ごえん:吐いたものが誤って気管に入ること)する危険性があるため、顔を横向きにするようにしましょう。

本態性低血圧・起立性低血圧への対処法

本態性低血圧や起立性低血圧の場合で不快な自覚症状がある場合、生活習慣の改善が主な治療となります。それでも改善しない場合は薬物治療を考慮します。

1)食事療法

(1)適量のナトリウム(塩分)を摂取し、カリウムの過剰摂取を控える
体内においてナトリウムは血圧を上げる働きがあり、反対にカリウムは血圧を下げる働きをします。したがって、低血圧の人は一定量のナトリウムを摂るようにし、カリウムの過剰摂取は控えるようにしましょう。ナトリウムはほぼすべての食品に含まれますが、しょっぱい食品に多くなっています。食品の成分表示にあるナトリウム量に2.5をかけたものが食塩量に相当するため、目安にしましょう。カリウムは野菜、果物などに多い傾向にあります。
(2)タンパク質をきちんと摂る
 タンパク質は血液などを作り出すためには欠かせない栄養素のため、肉、魚、豆類などを積極的に摂りましょう。
(3)ビタミン・ミネラルを摂取する
 ビタミンやミネラルは体の調子を整えるためには欠かせない栄養素です。一品料理(丼もののみ)や炭水化物の重ね食べ(ラーメンとチャーハンなど)はビタミン・ミネラルの摂取量が不足してしまうため、できるだけ多い品数を摂れるよう上手に惣菜などを利用するのが良いでしょう。また食が細く、食事のみでは必要な栄養素を摂取できないときは、補助的にサプリメントや野菜ジュースを取り入れるのも一つです。
(4)1日3食きちんと食べる
 特に朝食を抜くと体温や血圧などが上がらず、冷えや集中力の欠如など低血圧の症状も改善しません。量は摂れなくても何かしら口に入れるようにしましょう。食欲がないときは、温かいコーヒーや紅茶を起きてまず一杯飲むのがお勧めです。適量のカフェインを摂取することで交感神経が刺激されて血圧が上がり、食欲を促進する作用もあります。また、冷たいものより温かいものを摂取した方が、体温が上昇します。
(5)水分を積極的に摂る
 循環血液量を増やすためには一定量の水分は欠かせないものです。1日1リットルから2リットルの水分を摂るようにしましょう。特に入浴後や運動後、夏場などは発汗によって多くの水分が失われるため、こまめに水分を摂取することをお勧めします。

2)運動療法

(1)有酸素運動
ウォーキングや自転車(エアロバイク)などの有酸素運動は特に運動経験がなくても気軽に行うことのできるものです。下肢を中心にして全身の血流がアップします。30分程度行うのが理想的ですが、慣れてくるまでは自分が心地良いと感じる時間・強度で実施しましょう。
(2)かかと上げ運動
 ゆっくり5秒かけてかかとを上げて5秒キープします。その後また5秒かけてかかとを床に下ろします。すきま時間を見つけて行うようにしましょう。この運動によってふくらはぎの筋肉を鍛えることができます。ふくらはぎは第二の心臓と言われており、下肢の血液を心臓に送るポンプのような役割をしています。血液循環が滞りがちな低血圧の人にとっては、むくみや冷えを改善する効果が期待できます。
(3)ストレッチ・ヨガ
 ストレッチやヨガによって筋肉を伸ばすと、その付近にある血管も伸びます。その刺激で血管を柔らかくする物質が放出され、血管を広げて血流をアップさせます。激しい運動ではなくても、ストレッチやヨガによってじんわり体が温まってくるのは、こういった効果によるものです。お勧めは起床時や就寝前に行うことです。就寝前にストレッチを行うことで寝付きを良くし、睡眠の質を高めます。また、就寝時に寝たままできるストレッチを取り入れることで気分がすっきりできます。

3)薬物療法

(1)昇圧剤
 血圧を上げる作用のある薬(昇圧剤)としては、メトリジン、エホチール、リズミックなどがあります。専門は循環器内科になります。
(2)漢方薬
 低血圧は原因が特定できず体質によるものも多いため、漢方薬によって体質改善することが狙いです。医療機関でも処方してもらうことができ、一般の薬局でも入手(薬剤師さんに相談しましょう)できます。
虚弱体質の人には柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)が良いとされます。また、疲れやすく、食欲低下が主な人には補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、冷えが辛い人には、頭痛・めまいが主の人には当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)が効くとされます。

4)その他

(1)急な姿勢の変化を避ける
 急に立ち上がったり、起き上がるなどの姿勢の変化は、脳に十分な血流量が確保できず、立ちくらみやめまいの原因となります。姿勢を変えるときは、ゆっくりを心がけましょう。
(2)寝る時間、起きる時間をなるべく一定にする
 就寝・起床時間がバラバラだと自律神経が乱れる原因となり、血流が悪くなり、低血圧の人にとっては悪循環となります。朝起きるのがつらいというのが症状ではありますが、とりあえず布団から出る、というところからスタートしたいものです。

まとめ

このように低血圧と言っても様々な種類や原因、また治療方も多岐に渡ります。
本記事でご自身の低血圧の種類を把握し、それにあった治療法や対策を知り普段の生活から
改善するきっかけになればと思います。

監修

・救急医、内科医 増田陽子

・救急医、内科医 増田陽子

専門分野 
微生物学、救急医療、老人医療

経歴
平成18年 Pittsburg State大学 生物学科微生物学・理学部生化化学 卒業
平成22 年 St. Methew School of Medicine 大学医学部 卒業
平成24年 Larkin Hospital勤務
平成26年 J.N.F Hospital 勤務

資格
日本医師資格
カリブ海医師資格
米国医師資格

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