背筋の基礎知識

背筋とは背中から腰にかけてある筋肉の総称です。
ここでは背筋の種類とそれらの作用についてご説明します。

脊柱起立筋

脊柱起立筋は最長筋(さいちょうきん)、腸肋筋(ちょうろくきん)、棘筋(きょくきん)と呼ばれる3つの筋の総称で、どれも脊柱の背面両側に沿うように走行しています。
それぞれ、身体を反らす動きや左右に倒す動きに作用しています。

広背筋

胸腰部にある最も大きな面積を占める筋肉です。
背骨の突起から始まり、肩甲骨や背中の大半を覆い、上腕の前の方までつながっています。
広背筋は腕を後ろに引く動きや脇をしめる動きに作用しています。

菱形筋(りょうけいきん)

肩甲骨の内側にある菱形の筋肉です。
首の骨から背骨の上部にかけてある突起と、肩甲骨の内側を結んでいます。
肩甲骨を内側に寄せる動きに作用しています。

僧帽筋(そうぼうきん)

首から背中にかけて存在し、肩こりに大きく関与する筋肉です。
首の骨と背骨にある突起から、肩甲骨や鎖骨などに幅広くついています。
僧帽筋の中でも上部線維は首をすくめる動き、中部線維は肩甲骨の内側に寄せる動き、下部線維は肩甲骨を引き下げる動きに作用します。

背筋を鍛えるダンベルトレーニング

背筋を鍛えるための主なダンベルトレーニングをご紹介します。

ワンハンドローイング

ダンベルを持っている側の広背筋、菱形筋、僧帽筋を中心に鍛えられます。

1.写真のように膝の高さ程度のベンチの上に片方の膝と手のひらをつきます。
2.前かがみになりながら、反対の手でダンベルを持ちます。このとき、身体が左右に傾いたり背中が丸まったりしないように気を付けます。
3.ダンベルを持った腕を自然に垂らし、ゆっくりと肘を曲げてダンベルを引き上げます。
4.肩甲骨をしっかりと寄せて身体の横あたりまでダンベルを引き上げたら、またゆっくりと下ろします。

アップライトロウ

主に僧帽筋を鍛えられるトレーニングです。

1.骨盤の幅に足を開いてまっすぐ立ち、両手にダンベルを持って身体の前に下ろします。
2.写真のように両脇を開きながら肘を曲げ、ダンベルを身体の前面に沿わせるように引き上げます。
3.腕が鎖骨の高さまで引き上げられたら、ゆっくりと下ろします。

ダンベルデッドリフト

広背筋や脊柱起立筋、僧帽筋といった背筋はもちろん、大臀筋やハムストリングスなど、お尻や太ももの筋肉も鍛えられる全身的なトレーニングです。
他のトレーニングに比べて負荷が強いので、ある程度トレーニングに慣れている方におすすめします。

1. 足を骨盤の幅に開いて立ち、身体の前に下ろした両手にダンベルを持ちます。
2. 両膝を軽く曲げ、写真の左のように背中はまっすぐに伸びた状態のまま、上半身を前傾させます。
3. 膝は軽く曲げた状態を保ったまま、上半身の傾きを起こす・倒す動作をゆっくり繰り返します。

背筋を鍛える自重トレーニング

次に、ダンベルなどの道具を使わず、自分の体重のみで行うことのできる自重トレーニングをご紹介します。

ブリッジ

脊柱起立筋とともに大臀筋やハムストリングスも鍛えられるトレーニングです。

1. 膝を曲げて仰向けに寝て、両足は骨盤の幅に開きます。
2. 足の裏で床を押すようにしながらお尻から背中を徐々に浮かせていきます。
3. 身体を横から見た際に肩から膝までが一直線になるところまであげられたらゆっくり下ろします。

余裕のある方は、お尻を上げたあと、完全に下ろす一歩手前でまたお尻を上げるようにすると負荷が上がります。
また、片足を伸ばして軽く床から浮かし、一本の足だけでお尻を上げる動作を行うことでも負荷を上げることができます。

バックエクステンション

主に脊柱起立筋と僧帽筋を鍛えられるトレーニングです。

1.うつ伏せに寝て、頭の後ろに手を組みます。
2.背筋の力でゆっくりと身体を反らして上半身を床から浮かせます。
3.上げられるところまで身体を反らしたらゆっくりと下ろします。

身体を反らすときは反動をなるべく使わないようにしますが、上げにくい方は両足が浮かないように誰かに押さえてもらうなどするとやりやすくなります。
また、このトレーニングが上手くできるようになったら両手を前に伸ばし、身体を反らすのと同時にお尻の力で両足も浮かせて身体を反らせる「スーパーマン」のポーズもやってみると良いでしょう。

プッシュアップ

広背筋や脊柱起立筋などの背筋とともに腹筋や腕の筋肉も鍛えられるトレーニングです。

1.四つん這いの状態から、両手は肩幅よりもやや広めに開きます。足はまっすぐ伸ばし、骨盤の幅に開いてつま先が床につくようにします。
2.両肘は伸ばした状態にし、身体を横から見た際に肩から足首までが一直線になるように身体を浮かせます。
3.肘をゆっくりと曲げながら顔を床に近づけ、顎が床につく一歩手前まできたら再びゆっくりと肘を伸ばして身体を上げていきます。

リバースプランク

広背筋や脊柱起立筋とともに大臀筋や腕の筋肉も鍛えられるトレーニングです。

1.床に両膝を立てて座り、肘を伸ばして身体の後方につきます。
2.ゆっくりとお尻を浮かせていき、膝から肩まで床と平行に一直線になるところまで上げます。
3.軽く肘を曲げながらお尻を床に近づけ、ぎりぎりまで下ろしたら、再びゆっくりと肘を伸ばしながらお尻を持ち上げます。

しなやかな背筋を維持するストレッチ

筋肉をよい状態に維持するためには、筋トレで強くするだけでなく、伸び縮みしやすい、しなやかな筋肉にするためのストレッチも必要です。
ここでは、背筋のストレッチ方法をご紹介します。

菱形筋ストレッチ

1.立位または椅子に座り、両手を胸の前で組みます。
2.両腕を90度に上げた状態で、背中を丸めながら手ができるだけ身体と離れるように伸ばします。このとき、両方の手のひらは自分に見えるようにします。
3.左右の肩甲骨の間に伸張感を感じられたら、その状態で20~30秒静止します。

広背筋ストレッチ

1.足の裏がしっかりとつく椅子に座り、両足を開いて踏ん張りやすいような体勢にしておきます。
2.両手を組んで頭の上で伸ばしたら、左右どちらかの斜め前に身体を倒します。
3.倒した方と反対側の腰から背中のあたりに伸張感を感じられたら、その状態で20~30秒静止します。
4.最初に倒れた方と反対側の斜め前に身体を倒し、反対側の腰もストレッチします。

脊柱起立筋のストレッチ

1.足の裏がしっかりとつく椅子に座り、両足を開いて踏ん張りやすいような体勢にしておきます。
2.頭の後ろで両手を組んだら、首、背中、腰の順で上から身体を前に倒してゆっくりと丸めていきます。
3.背中から腰に伸張感を感じられたら、その状態で20~30秒静止します。

僧帽筋のストレッチ

1.立位または椅子に座り、背筋を伸ばします。
2.首を左斜め前に倒したら、その状態を維持したまま、ゆっくりと右の天井を見るように首を右に回旋します。
3.左手を頭の上に軽く乗せ、右側の首の筋肉に伸張感を感じられたら、その状態で20~30秒静止します。
4.右側がストレッチできたら、首を右斜め前に倒したところから左回旋して左側のストレッチも行います。

しなやかな背筋を維持する姿勢

ストレッチや筋トレを行ってよい筋肉の状態にしたら、姿勢にも気を配ってみましょう。
きれいな背中を作り上げるためには、日頃から正しい姿勢を意識することが必要不可欠です。

一般的にいう「よい姿勢」とは、身体を前後から見たときに左右対称で、真横から見たときに耳たぶ、肩幅の前後の中心、大転子(股関節の外側で体表から触れられる骨の突起)、外くるぶしが一直線になっている状態をいいます。
このような姿勢にするためには、座った姿勢と立った姿勢のどちらも意識する必要があります。
座るときは、坐骨(座った状態で左右のお尻の下で触れる事のできる骨)をしっかりと座面に立てるように骨盤を起こし、胸を張って軽く肩甲骨を内側に寄せるように意識します。
立ったときにも、この上半身の姿勢を崩さないようにしましょう。
こうすると、軽く背筋が緊張した良い姿勢を維持することができ、美しい背中を作り出すことができます。

おわりに

今回は、魅力的な背中を作り上げるために必要な筋トレやストレッチ、正しい姿勢についてご説明しました。
姿勢や身体のフォルムを変えることは容易ではありませんが、毎日の積み重ねで徐々に身についていき、誰でも美しい背中に近づけます。
トレーニングに慣れていない方は、最初から全ての筋トレやストレッチをこなすのは難しいと思いますので、できることから始めてみていただければと思います。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

関連する記事

関連するキーワード

著者