はじめに

「体幹」という言葉を聞いたことがある方は多いかもしれません。しかし、その意味や鍛える重要性までしっかり理解している方は少ないのではないでしょうか?

目に見えず、普段意識することのない体幹ですが、きちんと鍛えることによって様々な効果が得られるのです。今回は、体幹トレーニングの効果、タイミング、具体的な方法をご紹介します。

体幹と体幹トレーニングとは

体幹とは胴体部分のことで、手足を除いた胸部や腹部、背部、腰部を指します。つまり体幹トレーニングとは胴体部分の筋力トレーニングのことを言います。

また、筋肉の視点から見ると、身体を動かす働きのある表層筋(アウターマッスル)と姿勢を安定させる働きのある深層筋(インナーマッスル)の2種類があります。表層筋は筋肉の外側部分にあり、深層筋は内側部分にあります。体幹トレーニングでは胴体部分にある表層筋と深層筋の両方を鍛えます。

2.体幹トレーニングの効果

体幹トレーニングを行うと、運動をする際や、日常生活を送る上で様々なメリットを得ることができます。

1)ケガが少なくなる

体幹部分の深層筋が鍛えられると、手足の筋肉や関節を無理なく動かせるようになるため、ケガが減ります。日常生活においては、疲れにくい身体づくりにつながります。

2)肩こりや腰痛の解消

体幹部分の深層筋を鍛えると姿勢が良くなり、無意識のうちに正しい姿勢ができるようになります。すると猫背や反り腰が解消され、それらが原因で起こる肩こり・首こり、腰痛の予防・改善につながります。

3)便秘やぽっこりお腹の解消

深層筋は腹部の臓器を支えるという役割もあり、鍛えることで臓器が本来あるべき位置で安定します。すると下腹部のぽっこりお腹の解消、便秘解消などの効果も期待できます。

3.体幹トレーニングのタイミング

1)トレーニングに効果的な時間帯

人の体温が高くなる時間帯は15時から21時頃と言われています。体温が高いときに運動することで消費カロリーが上がるため、ダイエット目的でトレーニングする人にはこの時間帯がお勧めです。
あまり遅い時間帯にトレーニングを行うと、交感神経が優位になって体が興奮し、良質な睡眠の妨げとなってしまう可能性があります。そのため、入眠の3時間前までにトレーニングを終えるのが良いでしょう。

2)トレーニングを避けるべき時間帯

反対に、食べた直後や空腹時の体幹トレーニングはお勧めしません。食後は食べた物を消化するために胃や腸に消化液や血液が集中します。消化している時間帯にトレーニングを行うと、必要な血液が胃腸に供給されず、消化不良から腹痛を起こしてしまいます。少なくとも食後1時間はトレーニングを避けましょう。

空腹時のトレーニングを避けたほうがよい理由は他にもあります。空腹時は血液中の糖分濃度が低い状態です。体幹トレーニングを行うと、血液中の糖分を消費します。しかし、糖分濃度が低い状態では、筋肉内に蓄えられているグリコーゲンという物質を糖分に分解し、消費します。すると、トレーニングを行っているのにもかかわらず、筋肉が細くなってしまいます。

このように逆効果になるばかりではなく、空腹による集中力の低下からケガの原因となるため、空腹時のトレーニングは避けるようにしましょう。

4.部位別体幹トレーニングの方法

体幹トレーニングと一言でいってもその方法、難易度は様々です。ここではいくつかの具体的なトレーニングを紹介するので、自身の体調に合わせて行ってください。

1)体幹全体に効く

以下に紹介する3つのトレーニングは、汗をかきやすく、体が温まるので、脂肪燃焼効果も高まります。
(1)プランク

①腕立て伏せのようなポジションを作り、肘は床に付きます。このとき、肘は肩の下になるようにします。また、お尻を突き出したり、反対に下がったりしないように注意し、頭からお尻まで一直線にします。
②①の状態を30秒キープします。呼吸は止めずに行います。30秒を1セットとし、1日3セットを目標とします。
余裕のある人は、右腕と左脚、左腕と右脚をセットにし、交互に上げるとさらにトレーニング効果が増します。
(2)サイドプランク

プランクの横向きバージョンです。
①横向きになり、肘は肩の下にし、肘と足の2点で体を支えるようなイメージで、お尻を床から離します。このとき肩とお尻が同じくらいの高さになるように注意し、お尻が突き出たり、反対に下がったりしないようにしましょう。足先はクロスさせると支えやすくなります。
②①の状態を30秒間キープします。
③今度は反対側を行います。両方行って1セットとし、1日3セットを目標にしましょう。
(3)バックプランク

プランクの反対向きバージョンです。
①仰向けの姿勢になり、肘は肩の下にして、肘とかかとの2点で体を支えるようなイメージで、お尻を床から離します。鎖骨から脚まで一直線にします。
②①の状態を30秒間キープし、1セットとします。1日3セットを目標にします。
(4)ニートゥーエルボー

①四つん這いの姿勢をとります。このとき腕は肩の下になるように、膝は股関節の下になるようにします。
②まずお腹の下で右肘と左膝をくっつけた後、右腕を前方に、左脚を後方にピンと伸ばす動作を10回繰り返します。脚はお尻くらいの高さまで、腕は肩くらいの高さまで上がるようにします。
③②の動作を反対側(左腕と右膝)も同様に10回行います。ここまでを1セットとし、1日3セット行うようにしましょう。

2)腹筋を重点的に鍛える

ウエストのくびれを作るには、お腹の側面にある筋肉(腹斜筋)を鍛える必要があります。ここではお腹の側面のトレーニング方法を2つと、ぽっこりお腹を解消するため、お腹の下側を鍛えるトレーニング方法を1つ紹介します。
(1)脚上げ腹筋

腹筋にも効果のあるトレーニングです。
①仰向けの姿勢となり、両手は頭の後ろで組みます。
②両足を床から40cmほど挙げ、視線はおへそを覗き込むようにし、下腹部に意識を集中しましょう。このとき頭が上がりますが、両手に力を入れすぎると首を痛める恐れがあるため、力は抜きましょう。
③2秒程度静止して頭と足を下します。この動作を20回行います。
(2)クロス腹筋

腹部の正面と側面に効果のあるトレーニングです。
①仰向けの姿勢で、両手・両脚はバンザイのように広げた状態にします。
②右肘と左膝、左肘と右膝をお腹の上でクロスさせ、交互にタッチします。タッチさせる方の肩甲骨が床から離れるまで上げるようにします。このときタッチさせていない方の手足はまっすぐ伸ばした状態でないと、トレーニング効果が十分に得られません。
③②を左右交互に10回行います。
(3)レッグツイスト

腹部の正面と側面に効果のあるトレーニングです。
①仰向けの姿勢となり、両手は軽く広げます。両脚を揃えて天井に向けた状態からスタートします。
②両脚を左側にゆっくり倒していき、床につけます。このとき右肩が床から離れないように注意します。ゆっくり元の位置(天井に向ける)まで戻します。
③今度は右側にもゆっくり倒し、またゆっくり元に戻します。
④左右合わせて1回とします。15回を1セットとして、3セットを目標にしましょう。

3)背筋や臀筋を重点的に鍛える

(1)ヒップリフト

背中からお尻のラインをすっきりさせ、ヒップアップ効果が期待できます。
①仰向けの姿勢となり、両膝を立てて、軽く開きます。
②次にお尻を床から離し、膝とお尻が同じくらいの高さになるようにします。このときお尻の筋肉を意識しましょう。
③②の状態から、さらに右脚をピンと伸ばします。この状態を3秒間キープ、その後ゆっくりお尻を下します。反対側の脚も同様に行います。
④左右10回ずつ、3セットを目標に行いましょう。
(2)お尻背筋

背筋だけでなく、お尻や太ももの裏のトレーニング効果もあります。通常の背筋運動は上体を起こす運動ですが、このトレーニングでは上体はそのままで、両脚を揃えて上げる運動を行います。
①うつ伏せになり、両脚は揃えます。
②両膝をくっつけるように意識したまま、両脚を床から離します。太ももの途中まで床から離れるようにしましょう。お尻の筋肉を意識すると上手く上がります。
③20回行いましょう。


(3)バックフルアップ

背筋を重点的に鍛えます。
①うつ伏せになり、脚を腰幅くらいに開きます。
②胸から股関節までは床に付け、それ以外の部位(両腕・両脚)を床から離します。スカイダイビングをしているようなポーズ(ただし腰をあまり反らせすぎないように注意)をイメージします。
③②の状態を30秒間キープします。これを1セットとして、1日3セットを目標とします。

まとめ

今回は、体幹トレーニングの効果、タイミング、具体的な方法をご紹介しました。
体幹トレーニングと言っても、全体を鍛えるものから、腹筋を鍛えるもの、背筋や臀筋を鍛えるものなど様々です。自分が鍛えたい部分や、レベルに合わせて相応しいトレーニングを選びましょう!

監修

・救急医、内科医 増田陽子

・救急医、内科医 増田陽子

専門分野 
微生物学、救急医療、老人医療

経歴
平成18年 Pittsburg State大学 生物学科微生物学・理学部生化化学 卒業
平成22 年 St. Methew School of Medicine 大学医学部 卒業
平成24年 Larkin Hospital勤務
平成26年 J.N.F Hospital 勤務

資格
日本医師資格
カリブ海医師資格
米国医師資格

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