美容鍼とは

鍼灸はWHO(世界保健機構)でも正式に認められている治療法です。
美容鍼はその鍼灸の良さを活かして行う方法です。
鍼灸治療は、薬を使わず治療するので、副作用が少なく、安全性が高いことが特徴です。
施術後のリスクは、めまいがしたり、血液循環に変化が起こるなど、本来の目的以外の好ましくない反応が起こることもあるので、細心の注意を払って行われます。

鍼治療は古くから体の不調を整えたり、病気を予防したりするのに使われてきました。
美容鍼はこの技術を美容分野に応用したものです。
鍼を直接顔に打ち、肌荒れやむくみ、たるみ、しわなどを軽減します。
化粧品やエステでは肌の表面を手入れしますが、美容鍼では組織や細胞、血管、神経などを鍼で直接刺激して体の内側から働きかけます。

東洋医学では、「健康であることによって美しさが保たれる」と考えます。
顔が疲れていたり、むくんでいたり、クマができていたりするということは、何らかの身体の不調が顔に現れていると考えます。
ですから、治療の初めには必ずカウンセリングがあります。
カウンセリングでは、普段の食生活や睡眠時間、仕事の状況などについて先生からいろいろな質問があります。このような日常生活の一つ一つの出来事が私たちの体に影響を及ぼしているのです。

カウンセリングを終えて施術に入ると、お腹や手足などを触ってどう感じるかを質問します。
少し触れるだけで激痛が走る場合もあるので、最初は特に慎重に行われます。
だいたいの場合、触って痛いところは弱っていたり、不調があったりします。
美容鍼では、その不調が顔にも表れていると考え、その不調のある場所と、顔と両方に鍼を打つ場合もあります。
部位や狙いによって鍼を刺入していきます。
鍼の太さは様々ですが、中には0.1~0.2mmくらいで髪の毛よりも細い鍼を使用する場合も多いです。
刺す深さも2~3mm程度がほとんどなので、鋭い痛みなどはほとんど感じません。

治療後、一時的にかゆみが出たり、発熱や発汗があったり、眠気が出たりするなど体に変化が起こる場合があります。
これは「好転反応」と呼ばれることもありますが、鍼治療の体に対する影響は人それぞれです。
施術を受けた後はなるべく落ち着いてゆっくりとされることをおすすめします。
治療後は全身の血流が良くなったり、新陳代謝が上がったり体に様々な変化が起こります。
体が正常な状態へ向かうために必要な過程でもあるのでしっかり休ませてあげましょう。

ほうれい線ができる原因

ほうれい線とは鼻の両脇から唇の端に伸びる線のことです。
実は、生まれた時からこの線はあるのですが、若い頃は肌に張りがあって上がっているのであまり目立つことがありません。
しかし、加齢とともに頬がたるんで下がり始めると、ほうれい線がはっきり表れるようになります。
ほうれい線は厳密にいうとしわではなく、たるみが原因で表れることが多いです。

肌がたるむ原因としては、加齢や紫外線、ストレス、ホルモンバランスの変化、喫煙などが上げられます。こうしてコラーゲンが変性減少し、肌の弾力がなくなるとともに、顔の筋肉が老化して硬くなります。

ここでいう顔の筋肉とは「表情筋」と呼ばれ、本来重力に逆らって働く筋肉です。加齢のためにこの筋肉が弱まると、重力に負けて筋肉が引き下げられ、顔がたるんでしまいます。
これがほうれい線が目立ってしまう原因です。

美容鍼でほうれい線が消えるメカニズムと美容鍼の効果

美容鍼の施術では、弱ってしまった皮膚や表情筋を、顔全体のツボに鍼で刺激を与えて活性化させることでリフトアップを狙います。

鍼を用いて皮膚に小さな傷をつけると、私たち自身が持っている自己治癒力が働き、皮膚を修復しようとします。
この過程で肌の弾力を作っているコラーゲン繊維の生産が高まり、筋肉も活性化されます。
筋肉やコラーゲン繊維が活性化されることで、肌に張りが出て頬が引き上げられ、ほうれい線が目立たなくなるのです。

また、美容鍼を施術することで、表情筋に刺激を与えることができます。
表情筋は「皮筋」と言われる皮膚に直接ついている筋肉に繋がっているため、表情筋を引き締めることで、皮膚も引き締まります。
普段、私たちは化粧水や美容液を使って肌の潤いを保とうとしていますが、これらは肌のごく表面にしか浸透しない可能性があります。
美容鍼では鍼をうまく使用することで、皮膚の内側に直接作用させることができます。

さらに、鍼でツボを刺激することで、気と血のめぐりを良くすることができ、新陳代謝を助けます。
新陳代謝は年齢を重ねるごとに低下していきます。
10代の頃は20日で肌が新しい皮膚になりますが、40代になると、この2倍で約40日、50代で55日、60代で100日と代謝が落ちるとされています。
こうして老廃物を排出しきれないことが、たるみ、ほうれい線の原因になります。
そこで、頭や顔に鍼を打つと、血液の流れが良くなります。
栄養たっぷりの新鮮な血液が循環することで、皮膚に潤いを与えて肌のターンオーバーを促進させたり、たるみを緩和させたりします。

ほうれい線に効くツボ

ほうれい線に効くツボには以下のようなものがあります。

●天容(てんよう):両耳の下、えらの裏側のところ
●地倉(ちそう):口の端から小指約1本分外側のところ
●顴髎(かんりょう):目の外側から真っ直ぐ下がっていき、鼻の穴の少し上の高さと交わるところ
●巨髎(こりょう):黒目の中心から真っ直ぐ下がっていき、鼻の穴の少し上の高さと交わるところ

美容鍼ではしばしば、体の弱ったところに鍼を打つと、外・内出血を起こすことがあります。
しかし、心配する必要はありません。
美容鍼を施す施術者は、出血時にも適切な止血を行うので後に残りにくいです。
また顔に残ってしまった場合でも、当初は見た目は気になりますが、時間とともに治癒していく過程で自然となくなっていきます。
施術後は、すぐにお風呂に長時間浸かったり、サウナに入ったりすると、余計に内出血しやすくなるので注意してください。施術後は、体に負担がかかることは避けた方が良いでしょう。

美容鍼を受ける頻度

美容鍼は施術後すぐに効果を感じられることがほとんどです。
肌がもちもちししたり、ハリが出るなどの効果を感じられるでしょう。
施術後の効果は3~4日後をピークに少しずつ元に戻っていき、だいたい10日~2週間ほど続きます。

施術を始めたばかりであれば、2週間に1回くらいのペースで通うのが良いでしょう。
全身に変化が現れ始めると、効果が長続きします。
通っていくうちに月に1回くらいでも、効果が感じられるようになるので、経過がよければ徐々に頻度を下げて様子をみるのも良い方法です。
担当施術者のアドバイスもよく聞いて、普段の生活で気をつけられることは実践してください。

美容鍼の費用

美容鍼の施術はだたい1時間ほどです。
鍼灸院によっては、施術する範囲や鍼の本数で費用が変わることがあります。
費用は約6,000円~15,000円くらいのところが多いようです。
中にはもっと高額な治療もあります。
初めての施術の場合、初診料がかかることもあるのではじめに確認しておくと良いでしょう。

鍼の効果の範囲はそれぞれですが、1本の鍼でも広範囲に作用する場合もあります。
また、鍼の本数は必ずしも多ければ良いというものではありません。
たしかに、たくさん打ってもらうことで効果が上がることもありますが、重要なのは人それぞれに状態を把握してもらうことです。適切な刺激を鍼によって入れることが大切なのです。

上手な先生であればたくさんの鍼を打たなくても、大切なツボに上手に打ってくれるので、十分に効果が得られます。

最近は巷でもよく聞くようになった美容鍼ですが、激安美容鍼の広告などは注意が必要です。
コース内容や担当者など、聞きたいことや、気になる点は遠慮なくしっかりと確認しておきましょう。
説明を丁寧にしてくれるところが、良い治療院であることが多いでしょう。

おわりに

年齢と共に目立つようになってくるほうれい線が気になっている方は多いでしょう。
最近では、ほうれい線に効果の高い美容液が開発されるなど、美容外科の施術も発達しており、様々なお悩みにも改善が可能になってきました。
美容鍼もこの一つであり、体の内側はもちろんお顔の調子を引き上げてくれます。

美容鍼の特徴は、本来体が持っている治癒力を引き出しお肌の調子を整えてくれることです。
薬を使わない自然療法であるということ、そして肌の内側を適度に刺激してくれる治療です。

自分の内なる力を信じ、ナチュラルに美しくなりたいという方にぴったりの方法です。
鍼治療という昔から行われている治療法であり、顔だけではなく体全体の調子も整えてくれます。
美容鍼を日々の生活に取り入れてみてはいかがでしょうか?
お顔の調子が上がると、自然と気持ちも上げてくれます。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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