背筋とは

『背筋』という言葉は、背中の筋肉の総称として一般に使われています。
胴体の背面にある背筋は、浅層と深層の2つに分かれています。浅層の背筋は肩や腕などの上肢に関連し、肩甲骨や上腕骨に付く骨を主に動かしています。

代表的なものには『僧帽筋』と『広背筋』があります。広背筋は人体中で最も広い筋肉で、背中の真ん中辺りから腰まで背骨に沿って広がり、二の腕にまで達しています。僧帽筋は頭から背中にかけて広がる筋肉で、頭、首、背骨の上の方から始まり、肩甲骨や鎖骨に達しています。

深層の背筋は『固有背筋』ともいい、背骨の両側に沿って後頭部から骨盤まで縦に走る筋肉です。
代表的な筋肉は『脊柱起立筋』で、主に、直立姿勢を支持したり、背中を反る運動をしたりする際に働きます。※参考1

広背筋を鍛えると、背中のシルエットが逆三角形に近づき、背中全体が美しく見えるようになります。脊柱起立筋や僧帽筋を鍛えると、背中の筋肉一つ一つが協調され、立体的に見え美しく見えます。

背筋の筋トレの方法

ここでは、前項でご説明した、広背筋、僧帽筋、脊柱起立筋を鍛える筋トレをご紹介していきます。

1. バックエクステンション

バックエクステンションは学生時代に運動部で経験するいわゆる「背筋運動」と呼ばれている動きです。主に、脊柱起立筋に作用しますが、お尻にある『大殿筋』や、太腿の後ろにある『ハムストリングス』、広背筋など、背面の筋肉全体に作用してくれます。
ここでは、初心者から上級者まで方法をご紹介します。

【方法1 初心者レベル】

① 床やマットの上でうつ伏せになり、手を頭の後ろで組むか手を足の方向に伸ばします。
② 顎を引いた状態でゆっくりと上半身を起こします。
③ ゆっくりとうつ伏せの状態に戻ります。
④ 上半身を上げて下ろす動きを1回とし、10~20回を3セット行います。

※顎を上げて上半身を起こすと、過剰に脊柱が反ってしまい、腰痛や頸部痛の要因となるので注意してください。

【方法2 中級者レベル】

① 床やマットの上でうつ伏せになり、万歳をするように両腕を真っすぐ頭上に伸ばします。
② 顎を引いた状態で上半身と下半身をゆっくり上げ、逆エビ反りのような姿勢になります。
③ この状態を7秒間キープします。
④ ゆっくりと元のうつ伏せ状態に戻ります。
⑤ 身体を反らして戻す動きを1回とし、10~20回を3セット行います。

【方法3 上級者レベル】

① ベッドやベンチにうつ伏せに寝て、上半身だけを出します。
② ベッドから飛び出している上半身を腰から曲げ、お辞儀をするように「くの字」になるようにします。
③ 顎を引いた状態でゆっくりと上半身を起こしていきます。
④ 全身が一直線になるところまで上半身を上げたら、動作を止めて約3秒間維持します。
⑤ 元の前屈位に戻ります。
⑥ 身体を起こして戻す動きを1回とし、10~20回を3セット行います。

背中をあまり反らなくても負荷をかけられるので、腰痛になりやすい人におすすめの筋トレです。
また、足を固定できるよう補助をしてもらったり、固定する器具を使ったりすると、よりやりやすくなります。

2. ワンハンドローイング

ワンハンドローイングは主に、広背筋と僧帽筋を鍛えるためのトレーニングです。前傾姿勢をとるため、脊柱起立筋群にも刺激が加わります。
家にある適度な大きさのペットボトルに水を入れて負荷として使用しましょう。自宅にダンベルなどある方はダンベルを使用すると良いと思います。

① 椅子の上に片膝と同じ側の片手を置いて前傾姿勢になります。
② 重りを持った手を肩甲骨が引っ張られる感覚がある位置まで下に垂らします。
③ この状態から肘をできるだけ後方に引きます。
④ 引き切った所で3秒間止めます。
⑤ 元の位置に腕を戻します。
⑥ 肘を引いて戻す動きを1回とし、左右それぞれ10~20回を3セット行います。

3. 懸垂(チンニング)

懸垂は広背筋を鍛えてくれる、とても高負荷で効果の高いトレーニングです。
公園にある鉄棒などを使って行いましょう。また、最近では低価格の懸垂マシーンもあるため、トレーニング上級者はチャレンジして欲しいと思います。

① 自分から手の甲が見えるように順手でバーを握ります 。
② 手を肩幅より広く広げ、しっかりと腕を伸ばし切ってバーにぶら下がり、腕から肩甲骨までしっかり引っ張られるのを感じます。
③ 胸をバーに近づけるイメージで肘を曲げて体を持ち上げます。
④ 胸がバーに近づいたら、最初の位置に戻ります。
⑤ 胸をバーに近づけて戻す動作を1回とし、10回3セットを目標に行います。

しっかり腕を伸ばし切ることで広背筋がしっかりと引き延ばされ、懸垂の効果を増大させることができます。
3セット以降行える余裕がある方は、バーの握りを逆手(手のひらを自分の側向けて握る)で、もう3セット行ってみましょう。

背筋を鍛える頻度

理想の筋トレ頻度は週2回だと言われています。
ただし、普段トレーニング習慣がなく、初めて筋力トレーニングする方の場合、週に1回でも十分効果があると思います。慣れてきたら週2回行うと良いでしょう。

背筋を伸ばすストレッチ

1. 脊柱起立筋群(腰部)のストレッチ

① 床やマットの上に仰向けで寝て、腕を少し身体から離して広げます。
② 膝を顔に近付けるように脚を持ち上げ、背中を丸めます。
③ この状態を20秒~1分間保ちます。

腰から背中にかけて引っ張られる感覚があれば、上手くストレッチできています。筋肉の伸びをあまり感じられない場合は、膝の位置を頭側に少し持ち上げてみましょう。
顔を下にしたり、回旋したりした際に首に痛みがある方は、行わない方が良いでしょう。

2. 僧帽筋中部、広背筋のストレッチ

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① 手を身体の前で組みます。
② 肘を外側に向け、組んだ手を前方向に遠くへ伸ばしていきます。この時、大きなものを抱きかかえながら、腕を遠くへ伸ばすイメージで行います。
③ 手順②の動きに連動して軽く背中を曲げ、肩甲骨が体の外へ開いていくようなイメージで背中を伸ばしていきます。
④ この状態を20秒~1分間保ちます。

3. 広背筋ストレッチ

① 両手を合わせて組みます。
② 手のひらが天井に向かうよう、頭の上で腕を伸ばします。
③ ここから身体を横に倒します。
④ この状態を20秒~1分間保ちます。
⑤ 横に倒した身体を真っ直ぐに戻し、反対側に倒して再び20秒~1分間保ちます。

筋トレやストレッチの注意点

腰や背中を反らしたときに痛みが出る方は、筋トレを控えるようにしてください。
もともと腰痛や背中の痛みのある場合は、脊柱起立筋群や広背筋の緊張や収縮が、さらなる痛みの発生の要因になることがあります。
このような場合、筋トレではなくストレッチを行うことで痛みが緩和する場合があります。

また、腰や背中を曲げたときに痛みがある方は、ストレッチの動作により、症状を悪化させることがあります。このタイプの方は、トレーニングが腰痛予防などに効果的な可能性がありますが、ストレッチは避けた方が無難です。

どんな運動やストレッチも痛みが発生するリスクがあるので、無理をせずに慎重に運動やストレッチをすることをおすすめします。
腰背部の疾患歴がある方、治療中の方、何か心配事がある方は、専門医に相談をしましょう。

おわりに

背中に筋力が付くと、基礎代謝が上がり、生活習慣病や腰痛などの予防に役立たちます。
もちろん、スタイルも良く見える効果もあり、背中のストレッチは腰痛や背部痛の予防改善にもある程度の効果を発揮してくれます。
週1回行うだけでも、得られるベネフィットは大きいと思います。
ぜひ、継続的に筋トレやストレッチを取り入れていきましょう。

参考文献

※参考1
筋骨格系のキネシオロジー カラー版 第2版
【著者】Donald A.Neumann
【出版社】医歯薬出版

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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