灸治療とは

お灸の歴史と作用

お灸は約3000年前に中国で発明され、日本には遣隋使や遣唐使によって持ち帰られたとされる、歴史ある民間療法です。
よもぎの葉の裏側にある白い綿毛を精製した『もぐさ』に火をつけ、ツボを刺激しながら体を温める温熱療法です。

よもぎは『ハーブの女王』と言われ、食物繊維、クロロフィル(葉緑素)、ミネラルが豊富に含まれています。
また、浄血作用、増血作用、止血作用があると言われ、松尾芭蕉は足にお灸をしながら旅を続けたという逸話もあります。
お灸でツボを刺激することで体が温まり、ツボに刺激された内臓の働きが良くなります。
さらに、女性特有の悩みである、生理痛や肌荒れ、肩こり、冷え性などに効果が期待できます。

お灸の種類

お灸には大きく分けて『直接灸』と『間接灸』という2つの種類があります。
直接灸とはもぐさを米粒くらいの大きさに捻り、直接肌に置き点火します。この方法は熱が体に伝わりやすいのですが、皮膚に痕が残ることがあります。
間接灸はもぐさと肌の間に台座を置いて空間を作ったり、生姜やにんにく、塩などを挟んだりします。
最近では『せんねん灸』などと言われる、煙が出ないお灸や、火を使わないお灸なども販売されています。

灸治療の流れ

①問診

治療はまず、カウンセリングから始まります。
日常生活のことやその中で何か気になることなどをいくつか質問されます。
代表的な質問は、どんな食事をしているか、何時間くらい睡眠をとっているか、どこか痛いところがあるかなどです。

②脈診

手首や首などから脈を診ます。
脈の拍動の強弱や速度、血管の動きなど様々な要素から身体の現状を探っていきます。

③触診

主にお腹の周りなどを軽く押したりさすったりするなど、痛みや違和感があるかなどを質問されます。
こうして調子の良くない原因のツボを探していきます。

④施術

③で探しあてたツボにお灸を置いていきます。
1つのお灸が点火されてから消えるまで、じんわりと緩やかに熱が入ります。
余熱も計算しながら、皮膚においたお灸が冷めたら取り除きます。
これをいくつかの場所に行ったり、何度か同じ場所に行ったりします。
刺激量を調整するために、燃えきる前にお灸を取ることもあります。
無理は禁物ですので、気持ち良いくらいを心がけてください。
また、お灸は鍼との相性が良く、一緒に施術してくれることが一般的です。

⑤確認

施術前と施術後で何か違いを感じるかどうか、具合が悪くないかどうか質問されます。
血流の変化によってフラついたりするなど身体に変化が起こります。
施術後はゆったりと確認しながら動くようにしましょう。
帰宅時にも変化が出る場合があります。無理せず少し休憩してから動くと良いでしょう。

灸治療の効果

お灸を定期的に長く続けることで体質が改善され、慢性的な症状を和らげることができます。
ここでは、お灸の主な効果をご説明します。

①体を温める

冷えは万病の元です。
お灸は温熱療法なので、もぐさに点火して熱を加えることにより、身体が温まります。
特に、足元にお灸をすることで冷えを和らげることができます。
あまりにも冷えていると最初はお灸の熱さも感じないこともありますが、繰り返し行っていくことで少しづつお灸の熱を感じることができるようになっていきます。
お灸で冷えを解消することにより、冷えが原因で起こる生理痛、生理不順、便秘などの症状の改善も期待できます。
朝にお灸をすると、体が温まって活動的になり、一日を快適に過ごせるでしょう。

②血液やリンパの流れを良くする

お灸では皮膚が直接温められるため、皮膚の下にある筋肉や血管リンパ管が刺激され、血流やリンパの流れが良くなります。
そうなると、顔色が良くなったり、くすみが改善したり、ニキビ・吹き出物が解消したりという美肌効果も期待できます。

③筋肉をほぐしてリラックスできる

お灸に使われるよもぎには、シネオールという精油成分があり、消毒、殺菌、鎮静、鎮痛作用があります。
お灸をすることでこの成分が皮膚から体内に入り、痛みを和らげてリラックスする効果が期待できます。
もぐさを燃やした時に出る煙にもリラックス効果があると言われ、肩こりなどの筋肉の痛みの改善につながります。
特に、夜寝る前にお灸をすると、心身ともにリラックスでき、ぐっすりと眠れます。

④免疫力がつく

お灸の熱やもぐさの成分によって血流やリンパの流れが良くなることで、免疫力も高まると言われています。

⑤内臓を活性化させる

お灸をツボに置くことで、それぞれのツボに関連している内臓の働きを助けることができます。

⑥むくみをとる

お灸の熱でリンパの流れが改善すると、老廃物が排出されやすくなり、むくみが取れます。

お灸の注意点

入浴の前後は身体が熱っていてお灸の効果が落ちてしまうので、避けたほうが良いでしょう。
長い入浴とお灸の組み合わせは、身体に刺激が入り過ぎてしまうので注意が必要です。

また、体の非常に弱っている所にお灸を置くと、火傷をしたり、水ぶくれができたりすることもあります。
あまりにも熱い時には、施術者に申し出てお灸を少しずらしてもらうなどの対象をしてもらいましょう。

施術後に異常が出た場合も、すぐに施術者や専門家に相談してください。

おわりに

お灸というとお年寄りがするイメージがありますが、最近は不妊治療に使われたりと、若い人の間でも一般的になってきました。

お灸を長く続けることで体全体のバランスが整ってくれるので、いろいろな効果が期待できます。

病気になってから症状を改善するだけでなく、病気にかからないようにするのがお灸です。
昔から受け継がれてきた安心できる療法なので、ぜひ試してみてください。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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