肩こりの症状と原因

肩こりは肩や肩甲骨周辺の筋肉が緊張し、血行が悪くなることにより発生します。
筋肉の緊張が長時間続くことにより、痛み発生物質が産生され、肩周辺に鋭い痛みやだるさ、重みを感じるようになります。

日々の生活でのちょっとした動作や普段の姿勢が、肩こりの原因となっていることが多くあるので、ご自身に当てはまるものを探してみてください。

いかり肩・なで肩

鎖骨の外側が上がっている方は『いかり肩』、下がっている方は『なで肩』と呼ばれます。

日本人の女性は、いかり肩が多いといわれ、いかり肩では、肩と首をつなぐ『僧帽筋(そうぼうきん)』が緊張しやすくなり、肩こりにつながります。
寒いときに肩がすくむと、肩こりが起きますが、これと同じようなことが、日常的に起こっています。

一方、なで肩は肩こりにならないかというと、そういうわけではありません。
なで肩の場合は、腕の重さに耐えきれず、肩や首の筋肉に負担がかかった状態になっています。このことにより、僧帽筋が常に働いている状態になり、肩こりが発生します。

猫背

背中や肩が丸まって首が前に出た、いわゆる『猫背』の状態では、身体に多くのデメリットをもたらします。もちろん腰痛もなりますが、肩こりも代表的なデメリットです。

首が前方に突出した姿勢では、頚部の筋肉が緊張した状態となり、肩こりにつながります。
また、肩が前に出ていると、肩甲骨が開いて背骨から離れた状態になります。この姿勢も、肩や首の筋肉に緊張を与えます。

重い荷物を持ちながらの歩行

重い荷物を長時間持ちながら歩行することにより、重さに負けないように肩周りの筋肉を働かせるため、筋肉が緊張してしまいます。

また、肩側で荷物を持つと、身体のバランスが崩れるため、さらに持っている側の筋肉に負担がかかります。

スマートフォンの長時間使用

スマートフォンを操作するときは、頭を下を向けて首が前に出る姿勢になります、これは、猫背と同様に首に大きなストレスがかかります。
その結果、首周りの筋肉が緊張し、肩こりにつながります。
この現象は、『スマホ首』と呼ばれるほど、近年多くの方が悩まされている症状です。

目の疲れ

スマートフォンやパソコンで作業を行っていると、目に疲労を感じます。目を酷使した作業を長時間行うと、目の周りや頭の筋肉が緊張します。
その結果、肩こりにつながってしまうこともあります。

身体の冷え

身体が冷えると、体温を上げるために、筋肉を緊張させます。
筋肉が緊張して血行が悪くなるだけではなく、寒いときには、肩が上にぎゅっとすくみますが、この姿勢で長時間いると、肩こりの原因となります。

肩こりに効く4つのツボ

肩こりの原因である血行不良には、ツボ押しが効果的です。
ここでは、自分で押すことのできる4つのツボを紹介します。道具が必要ないので、時間をみつけて試してみてください。
一つのツボに対して、「5秒押して、5秒離す」を1セットとし、5セットを目安に行ってみてください。

また、ツボ押しを行う前には、水分をしっかりと摂り、血流が流れやすいようにしましょう。
入浴後に行うと、身体が温まっているため、血流が促進されやすくなります。

肩井(けんせい)

下を向いたときに首の付け根に出る骨と、肩の先端の骨を結んだ線の真ん中あたりにツボがあります。

中指を皮膚に対して垂直に当てて押します。中指だけでは力が弱い場合は、人差し指、中指、薬指の3本指を使って押します。

天髎(てんりょう)

乳頭から真っ直ぐ肩の方に指をさすり上げて行きます。そのまま背中の方に指を下すと、肩甲骨の上部の一番とがった部分にぶつかりますが、そこにツボあります。

中指をツボに当て、皮膚に対して垂直に押します。

風池(ふうち)

後頭部の髪の生え際、首筋よりやや外側にある左右のくぼみの中にツボがあります。

頭を支えるようにして親指をツボに当て、頭の中心に向かって押します。

天柱(てんちゅう)

首の骨のラインを髪の生え際までたどり、頭蓋骨の下にあるくぼみの中にツボがあります。風池より指1本分内側で、やや下に位置しています。

頭を支えるようにして親指をツボに当て、頭の中心に向かって押します。

鍼灸院での治療

鍼灸治療は、ツボ押しと同じように、全身にある『経穴(ツボ)』を刺激することで、自己治癒力を高める治療です。
鍼灸治療院では、国家資格を取得したプロの先生が、状態に適した治療をしてくれます。

医師の指示書があれば、健康保険が適用となる疾患もありますが、肩こりでは適用されません。
そのため、肩こりで鍼灸治療を受ける場合には、自由診療となり、健康保険に比べて料金が高くなります。

鍼治療の内容

鍼治療では、肩こりの症状に合わせて、特定の部位やツボを鍼で刺激をします。
自律神経や免疫系などに作用し、筋肉の緊張を緩和させたり、血行を促進させます。ツボを刺激するだけでなく、鍼で作った傷に血液を集め、自然治癒力を高める効果もあるといわれています。

また、肩こりの原因となる冷えや、ストレスを解消してくれるツボも刺激できるため、様々な原因や症状に対し、複合的に治療をすることができます。

灸治療の内容

灸治療では、ヨモギで作られた『もぐさ』を使用します。
灸は熱くてつらいイメージがありますが、最近ではテープで貼ることができ、自宅でも行えるものもあります。

ヨモギの成分である『チオネール』が皮下に浸透し、温熱効果によって血行が促進されます。
チオネールは、ローズマリーやローリエなどのハーブに含まれており、独特な香りにはリラックス効果があります。
さらに、灸の熱によってリラックス効果や鎮痛効果が得られるので、灸は肩こりの治療に適しているといえます。

おわりに

肩こりの症状と原因、肩こりに効果的なツボや、鍼灸院での肩こり治療に関してご説明しました。

鍼灸院では、治療だけではなく、肩こりに対して様々なアドバイスをしてくれます。不明な点はぜひ質問してみてください。

鍼灸治療やツボ押しで血流を促すと、肩こりの症状は軽減しますが、普段の姿勢や生活習慣を改めないと、根本的な改善にはつながりません。肩こりの原因となっている習慣を見つけ、予防にも努めましょう。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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