ナルコレプシーとは

ナルコレプシーとは夜間十分な睡眠時間を取っているにも関わらず、日中、場所や状況を選ばずに強い眠気が発生する睡眠障害のことをいいます。日本語では『居眠り病』と呼ばれることもあります。
夜間眠ることができない『不眠症』に対して、逆に起きていられないという『過眠症』という症状に苦しむ人が多くいます。日本人に比較的多い病気であり、珍しくはありません。自動車運転中や機械操作中に睡眠発作が起こってしまうと、重大な事故につながるおそれもあり、決して軽んじてはいけない病気の一つです。
ご自身や身の周りで心当たりのある人は正しい知識を得て、適切な対処をとりましょう。

ナルコレプシーの症状

日常生活に支障をきたすほど日中眠気に襲われるというのが、ナルコレプシーの主な症状です。大きく4つの症状が現れます。
てんかん発作には全般発作と部分発作があります。全般発作は脳の広い部分が刺激され起こる発作であり、以下の主な4つの症状は全般発作にあたり、意識がないのが特徴です。一方、部分発作は脳の一部分が刺激されそれにより発作が起こります。部分発作は意識があることが多く自分の意志でない動作や手足のしびれなどが起こります。部分発作は全般発作に比べて起こることが少ないですが、部分発作から全般発作に移行するなど複雑な仕組みがあります。

睡眠発作

日中突然襲ってくる眠気のことをいいます。どんな状況においても自分自身で制御できないほど耐え難い眠気です。自動車の運転中や会議中など、絶対に眠ってはいけない場面においても、眠気に逆らうことができません。重大な事故を起こしてしまったり、仕事でやる気がないと見られてしまったりする恐れがあります。

情動脱力発作(カタプレキシー)

喜・怒・哀・楽などの感情が高ぶった際に全身の筋肉が脱力し、ろれつが回らない、立っていられず倒れてしまうなどの症状が現れます。

睡眠麻痺

いわゆる金縛りという状態です。睡眠時に意識があっても手足を動かすことができなくなります。

入眠時幻覚

入眠時に強い幻覚を見ることがあります。よりリアルな夢を見ているような状態であり、現実と夢の区別がつかなくなることもあります。

ナルコレプシーの検査法

ナルコレプシーの診断には、検査入院をする必要があります。終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)および反復睡眠潜時検査(MSLT)という検査を実施します。
終夜睡眠ポリグラフ検査では、夜間の睡眠状態を総合的に評価します。測定項目は睡眠時の脳波、心電図、眼球運動、血中酸素飽和度など多岐に渡ります。
反復睡眠潜時検査は日中の眠気を評価します。脳波を測定し、入眠するまでの時間や脳だけが目覚めた状態を指す『レム睡眠』の出現を観察します。
その他の検査として、どのような病気にかかりやすいかを判断する白血球のHLA遺伝子検査が行われます。また、脳脊髄液中にあり、睡眠や摂食の管理をする『オレキシン』という神経ペプチドの濃度検査を実施する場合もあります。

ナルコレプシーの治療法

ナルコレプシーは完治の難しい病気といわれています。
治療には、薬物療法と生活改善を並行する対症療法が行われます。
薬物治療には眠気をとる中枢神経刺激薬、抗うつ薬を使用する場合があります。しかし、このような薬は副作用が強く出る場合があり、医師の指示に従って正しく服用する必要があります。自己判断で薬を増減したり、中断したりすることのないようにしましょう。
生活改善では、規則的な生活リズムを整える、夜間十分な睡眠をとる、日中に意識的に仮眠をとるなどが挙げられます。

ナルコレプシーは短期間で治療することが難しいため、長期にわたり病気と向き合っていく必要があります。

安定した睡眠をとる方法

安定した睡眠をとるためにはいくつか抑えておきたいポイントがあります。 

起床・就寝時間を決める

規則正しい生活の基本です。毎日同じ時間に起き、同じ時間に寝ることで体内リズムを整えることができます。起床後は日光を浴びるとより効果的です。

睡眠不足を避ける

夜間に十分な睡眠時間を確保します。日中適度に運動をすると、程よい疲労感から夜間深く眠りやすくなります。

昼休みを利用して仮眠をとる

絶対に眠ってはいけない場面で眠気に襲われることを避けるため、昼休みなどを利用して短時間でも仮眠をとります。横になることが難しい場合は机に伏せるようにしても良いでしょう。

アルコールを控える

アルコールの過剰摂取やストレスは良質な睡眠を妨げる原因になります。夜眠れるようにと飲酒することでかえって眠りを浅くしてしまう場合もあるので気を付けましょう。

おわりに

ナルコレプシーの症状や治療について紹介しました。
日中の眠気について自分自身にも当てはまると感じる人も多いのではないでしょうか。生活習慣の改善により良質な睡眠をとることは、誰にとっても大切なことです。入院しての検査は簡単ではありませんが、気になる方は医療機関に相談に行ってみてください。
睡眠の悩みを解決して、元気に活動的な毎日を送りたいものです。

監修

・救急医、内科医 増田陽子

・救急医、内科医 増田陽子

専門分野
微生物学、救急医療、老人医療

経歴
平成18年 Pittsburg State大学 生物学科微生物学・理学部生化化学 卒業
平成22 年 St. Methew School of Medicine 大学医学部 卒業
平成24年 Larkin Hospital勤務
平成26年 J.N.F Hospital 勤務

資格
日本医師資格
カリブ海医師資格
米国医師資格

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