体幹とは?

ここ十数年でよく聞かれるようになった『体幹』とはそもそもどこを指すのでしょうか。
体幹とは、胴体の深層(深い部分)にある筋肉を指し、別名『インナーマッスル』とも呼ばれています。

一般にトレーニングというと、割れた腹筋や盛り上がった背筋を想像してしまいますが、これは表面的な筋肉にあたります。
その筋肉よりもさらに内側の筋肉が、いわゆる体幹と呼ばれるものです。内臓の近くに位置して内臓を保護することや、姿勢を維持することが大きな役割となっています。
普段、意識的に使おうと思って使ている筋肉ではないので、意識して鍛えることが大事です。

体幹トレーニングの3つの効果

大きな1本の木にとても緑が茂り、枝葉を伸ばしているのを想像してみてください。木を支えている『幹』がどっしりと構えていることが、大きな木になるための大事な要素になります。
人間の身体もこれに似ており、体幹を鍛えて安定させることでメリットが生まれます。

1. 老化しにくい身体になる

表面の筋肉をどんなに鍛えても、内側の軸がしっかりしていなければ見かけ倒しの身体になってしまいます。
体幹の筋肉は内臓の位置を維持しているので、内臓が正しい位置にあることで、内臓のスムーズな働きを助けてくれます。また、ポッコリお腹も防ぐことができますので、見た目にも若々しさを維持していけます。
木の幹が年輪を重ねていくように、体幹も時間をかけて鍛えていくことで、老化しにくい身体を作っていくことができます。

2. 基礎代謝量がアップする

前項で「体幹の筋肉は意識して使っているものではない」というお話をしました。普段、呼吸をしたり、姿勢を維持したりすることに意識的な方は少ないと思います。
ですが、意識していないときも、体幹は常に働いています。

日常生活を送るのに最低限必要なエネルギーの消費量を『基礎代謝量』と言います。体幹を鍛えることにより、基礎代謝量が上がります。
すると、意識的な運動をしなくても、消費してくれるエネルギーが多くなるので、自然と太りにくい身体を作っていけるのです。

3. 正しい姿勢になる

体幹の役割には姿勢の維持をすることも含まれているので、姿勢がきれいになるというメリットもあります。
特に、次項でご説明する『ダイアゴナル』というトレーニングを行うと、『脊柱起立筋』などの背骨を支える筋肉を鍛えることができ、背筋の伸びたすらっとした姿勢を無理なく維持できるようになります。

体幹を鍛える4つのトレーニング

体幹トレーニングの最大のメリットとして、新しい道具を用意する必要がなく、自重で行えるという手軽さがあります。
ここでは、体幹にある『横隔膜』、『腹横筋』、『多裂筋』、『骨盤底筋群』の4つの筋肉の役割とトレーニング方法をご紹介します。

◇横隔膜の役割とトレーニング

横隔膜は『膜』とついているので勘違いされやすいですが、鍛えることのできる筋肉です。
横隔膜の大きな役割は、呼吸の際の息を吸うことです。横隔膜が下に凹む状態になると、肺が膨らんで息を大きく吸うことができるようになります。
さらにこの時、凹んだことで内臓が収まっている腹腔の圧が上がるため、排泄する際のサポートをしてくれます。
横隔膜を鍛えるには、腹式呼吸を行うようなトレーニングが効果的です。

【やり方】
大きくお腹に空気をためるような呼吸法をするだけで、横隔膜を鍛えることもできます。
さらに負荷を加えたい場合は、身近にあるペットボトルなどに水を入れ、お腹の上に置きながら腹式呼吸をすると、簡単にトレーニングすることができます。

【回数】
吸って吐いてを1セットとし、20回を目安に始めてみましょう。20回で慣れてきたら負荷を加えてみたり、回数を増やすなどしていきましょう。

【ポイント】
ゆっくりと大きく呼吸をすることです。

◇腹横筋の役割とトレーニング

腹横筋は、先ほどの横隔膜と対になる筋肉です。腹横筋と名付けられているので、お腹の横に位置するように勘違いされますが、こちらも、内臓を囲むように位置する薄い筋肉です。
鍛えることで、美しい腰のくびれを作ることにつながるので、男性も女性もぜひ取り組んでみてください。
腹横筋を鍛えるトレーニング方法は、『プランク』と呼ばれています。

【やり方】
①四つ這いになり、肘から手首を床につきます。
②脚を伸ばしてつま先で体を支え、頭から足先が一直線になるよう真っ直ぐに体を維持します。
③この姿勢を30秒間続けます。

【回数】
プランク30秒間とインターバル30秒間を1セットとし、まずは10セットから始めてみましょう。

【ポイント】
背筋をまっすぐにしておくことが特に大事です。辛いとお尻が上がってしまいがちなので、注意して行いましょう。

◇多裂筋の役割とトレーニング

多裂筋が位置するのは背骨の辺りです。骨と骨をつなぐ筋肉で、姿勢を維持する役割を持っています。
背中をひねったり、伸ばしたりするときに使われており、特に、腰をひねるゴルフやテニスなどスポーツには欠かせない筋肉です。
腹横筋とも関わりを持っており、鍛えることで腰痛予防にもなります。
腹横筋を鍛えるトレーニングは『ダイアゴナル』と呼ばれています。

【やり方】
①四つん這いの姿勢をとります。
②片手を上げ、背筋と一直線になるように真っ直ぐ前に伸ばし、10秒間キープします。
③上げた手を下ろし、反対の手も同じように真っ直ぐ前に伸ばし、10秒間キープします。
④手を下ろし、今度は片足を背筋と一直線になるように真っ直ぐ後ろにに伸ばし、10秒間キープします。
⑤上げた足を下ろし、反対の足も同じように真っ直ぐ後ろに伸ばし、10秒間キープします。

慣れてきたら、手足を同時に持ち上げることで、さらに負荷を増やせます。この時、上の写真のように右手を上げたなら左足を、左手を上げたなら右足を持ち上げましょう。
この運動によって、脊柱起立筋と多裂筋が鍛えられ、体幹のブレが少なくなり、腰痛予防に働きます。

【回数】
ダイアゴナルの姿勢を10秒間続けることを1セットとして、5セットから始めてみましょう。

【ポイント】
姿勢をキープするときは、背筋が丸くならないように、手先や足先からまっすぐ伸ばすことを意識しましょう。

◇骨盤底筋群の役割とトレーニング

骨盤底筋群は内臓が下に落ちないように支える働きをしています。
骨盤底筋群が弱ると、骨盤周りを支える力がなくなり、お尻が垂れてボディラインが変化したり、下半身が太りやすくなったりしてしまいます。内臓を支えているのですから、ポッコリとお腹が出てしまう原因にもなります。
継続的にトレーニングをして内臓を正しい位置に戻しましょう。
骨盤底筋群を鍛えるトレーニングは『ヒップリフト』と呼ばれています。

【やり方】
①仰向けに寝て膝を立てます。
②腕、肩、頭を床に着いたままお尻を浮かせるように持ち上げていきます。
③写真のように、膝から方までが一直線になるところまでお尻を持ち上げたら、一度停止します。
④息を吐きながらお尻をおろします。

【回数】
この上げ下げを1回として、10回×3セット行いましょう。

【ポイント】
床に触れている肩から立てている膝までを一直線にすることを意識します。
お尻を持ち上げるときは、息を吐いてお腹をぺたんこにするイメージで行いましょう。

おわりに

体幹を鍛えるのは難しいと考えがちですが、一つ一つの筋肉を鍛えるトレーニングの動きは、思ったよりも簡単と感じたのではないでしょうか。
どの筋肉を鍛えるときも同じですが、どこを鍛えているのかをきちんと意識しながら行うことで、より効果も出やすいでしょう。
普段意識していない筋肉を効率的に鍛えることで、代謝の良い健康的な身体を手に入れましょう。

監修

・救急医、内科医 増田陽子

・救急医、内科医 増田陽子

専門分野
微生物学、救急医療、老人医療

経歴
平成18年 Pittsburg State大学 生物学科微生物学・理学部生化化学 卒業
平成22 年 St. Methew School of Medicine 大学医学部 卒業
平成24年 Larkin Hospital勤務
平成26年 J.N.F Hospital 勤務

資格
日本医師資格
カリブ海医師資格
米国医師資格

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