はじめに

近年は「ストレス社会」といわれるほど、周りにはストレスがあふれる時代になりました。そんなストレス社会で、厚生労働省による「自覚症状の状況」という報告では、平成24年度において、肩こりは男性では全体の2位、女性では断トツの1位を占めています。これほどまでに身近な存在である肩こりですが、ストレスとはどのような関係があるのでしょうか。

ストレスで肩がこるメカニズムについて

肩こりは肩の血行が悪くなり、筋肉が収縮して硬くなることでおこります。つまり、肩こりは肩の筋肉が常に緊張している状態ということです。

通常、全身の筋肉は、「交感神経」と「副交感神経」という2種類の自律神経にて収縮・弛緩します。「交感神経」は興奮したり緊張させたりする神経で筋肉を収縮させ、「副交感神経」はリラックスしたり眠っているときに優位になる神経で、筋肉を弛緩させるはたらきがあります。

ストレスのない状態であれば、これらの自律神経がバランスよくはたらくため、肩こりはおこりにくいのですが、ここにストレスが加わると「交感神経」が優位になります。そのため、筋肉を緊張・収縮させるはたらきが強くなり、肩の筋肉が収縮して肩こりがおこるとされています。

ストレスによる肩こりの症状

ストレスが原因となっておこる肩こりの症状は、以下のようなものが多いとされています。

・首や肩がガチガチに凝り固まっている
・首や肩だけでなく背中の筋肉まで張るように痛む
・背中が鉄板のように固く、重たい
・首や肩の凝りから、頭痛やめまい、吐き気などが起こる
・全身が重く、倦怠感がある
・寝てもすっきりせず、疲労感が残る
・緊張するとひどくなる傾向がある

このように、ストレスが原因となる肩こりは、頑固で程度がひどいものが多くみられます。またその時の体調やストレスなどによっても、大きく症状が異なることも、特徴の一つです。

ストレスによる肩こりの治療法

肩こりがストレスからくるものであれば、ストレスを解消することが1番の治療法となります。ですが、ストレス自体を解消することはそう簡単ではありません。そのため、ストレスをこれ以上ためないように、うまく発散することが1つのポイントだと言えます。また、肩や腰、首周りの筋肉をほぐすことも重要なポイントです。

お風呂で身体を温める

身体を温めることは肩こりに有効です。特に湯船に浸かって全身を温めることはより効果が期待できます。肩こりは肩の血流が悪くなることでおこるので、身体を温めることで全身の血流をよくすれば、肩こりの改善にもつながります。

また、身体を温めることは「副交感神経」を優位にはたらかせることにもなります。そのため、ストレスからくる肩こりには最適だと言えます。

気分転換にショッピングやアウトドアなどに出かける

ストレス解消には気分転換が一番です。ストレスによる肩こりは、ストレスが軽減することで肩こりも少し緩和されることが分かっています。そのため、意識の中にストレスとなるものをためこまないようにします。そのため、一日普段とは違う場所に出かけてみたり、自然の澄んだ空気を思い切り吸うことで、心も体もリフレッシュされ、肩こりも軽減されます。

自分の趣味や好きなことをする

自分のすきなことをしてストレスを発散させるのも効果的です。思い切り身体を動かしたり、大きな声を出したり、たくさん笑うことはストレス解消につながります。ストレスがたまってつらいと感じたら、たまには自分だけの好きなことをする時間をもつことも大切です。

思い切りゆっくり休む

ゆっくり休むことは「副交感神経」を優位にさせるため、ストレスによる肩こりには有効です。ゆっくり休むことで全身の筋肉が弛緩するため、肩こりの改善につながります。たまには夜に早く寝てみたり、休日にゆったりと過ごすことも必要です。

適度な運動をする

適度な運動で身体を動かすことは、全身の血行を改善することにつながります。とくに全身運動であるウォーキングやスイミングなどの有酸素運動、ストレッチなどは効果的です。肩や首周りの筋肉を動かして血流をよくすることはもちろん、全身の血行をよくすることも大切です。疲れを感じない程度に気持ちよく運動を取り入れることで、全身の筋肉をほぐしましょう。

マッサージをする

首や肩、腰などの凝った部分を直接マッサージしてほぐすことも効果的です。時間やお金に余裕があれば、整体や指圧マッサージなどに行ってみてもよいでしょう。自宅でも、自分で1,2分揉みほぐすだけでもかなり違ってきます。凝り固まった部分にたまった乳酸も分解されて、身体が少し軽くなります。

ストレスによる肩こりの予防法

肩こりの予防法としては、軽い運動やストレッチを日常生活に取り入れることが大切です。ほんの1,2分だけでも肩や首を回して血流を良くしたり、ストレッチをすることで身体の縮まった筋肉を伸ばしたりするだけでも全然違います。

また、日ごろシャワーだけで済ませている人は、湯船に浸かる習慣を身に着けるとよいです。シャワーだけではどうしても中心部まで温まる前に出てしまいがちです。そのため、全身をゆったりと湯船で温めることで、中心部まで温まるとともに、副交感神経も優位にさせることができ、ストレスによる肩こりの予防にもつながります。

このように、日常生活にちょっとしたことを取り入れるだけでも肩こりの予防になるため、ぜひ取り入れてみてください!

まとめ

肩こりはストレスによっても引き起こされるつらい症状です。ですが、日常生活にちょっとした運動や身体を温める動作を加えるだけでもかなり有効な予防策になります。肩が凝ってつらい人は、たまには自分の時間を持って、リフレッシュしましょう。それがストレスによる肩こりの解消につながります!肩こりのない生活を送りましょう!

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野 
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

関連する記事

関連するキーワード

著者