妊娠後期とは

妊娠後期とは、妊娠8~10か月(28~39週)のことを言います。
28週ではおよそ身長40㎝、体重1500gほどの赤ちゃんが、39週には身長50㎝、体重3000gほどになり、出産にむけてお腹の赤ちゃんは一気に大きくなります。

この変化に伴い、ママの体重も増えやすくなります。それだけでなく、腰痛や背中の痛み、胃の圧迫感や足のむくみなど、妊娠後期ならではの体の不調もいろいろと出てくることがあります。

妊娠後期の腰痛や背中の痛みの原因

妊娠後期の腰痛や背中の痛みの原因には、大きく分けて以下の3つがあります。

1. ホルモンの影響

妊娠後期になると『リラキシン』というホルモンが、多く分泌されるようになります。これは、出産時に骨盤が開いて赤ちゃんが出てきやすいようにするためのホルモンで、骨盤周囲の靭帯などを緩める働きがあります。
よって、このホルモンの分泌が増えると、重たいものを持った時などに通常以上に骨盤周りの関節に負担がかかり、関節が炎症を起こしてしまうことがあります。

また、緩くなった関節を固定しようとして腰などの筋肉が通常以上に働き始めるので、腰回りの筋肉が張ってくることもあります。

2. お腹が大きくなることによる影響

赤ちゃんの成長に伴ってママのお腹が大きくなると、重心の位置が妊娠していない時に比べて前方に移動します。腰はいつもより反りやすくなり、背中は反対にバランスをとるために丸まりやすくなります。
このような背骨の弯曲の変化により、腰や背中周りの筋肉の緊張する位置や強さが変化し、張りや痛みを感じるようになります。

3. 運動不足の影響

妊娠後期になると、体が日に日に重たくなり、日常生活内の動きも少なくなってしまいます。
運動不足になると筋肉が硬くなって血流が悪くなり、腰痛や背中の痛みの原因にもなります。

腰痛や背中の痛みに効くストレッチと注意点

状態が安定していれば、妊娠中はなるべくストレッチを継続することをおすすめします。
今までストレッチの習慣がない方も、違和感や張りを感じ始めたら、痛みがひどくなる前に行い始めましょう。動くのが苦痛なほどの痛みになってからでは、ストレッチが億劫になってしまいます。

ここでは、実際に妊娠中にできる腰痛や背中の痛みに対するストレッチをご紹介します。
まずは、ストレッチをする上での注意点をよく読み、無理をせずに行いましょう。

妊娠中のストレッチの注意点

妊娠中はホルモンバランスが不安定であり、関節の緩さが原因の痛みである場合は、ストレッチによって痛みが増してしまうこともあります。
強い痛みを伴うまでストレッチをしないよう気を付けましょう。最初のうちは軽めのストレッチから少しずつ行い、翌日に状態が悪くなっていないか確認しながら進めていきましょう。

1. ネコ&ウシのポーズ

床の上で四つ這いになり、ネコのように背中を丸めたり反らしたりを繰り返します。
背中が丸まった姿勢のときに、背骨の周りの筋肉がストレッチされます。
ゆっくり行うことと、背骨の動きを小さく始めて少しずつ大きくしていくことがポイントです。特に、反らしたときに腰が痛い場合は、無理をしないようにしましょう。

2. 腰ひねり

膝を立てて仰向けに寝て、そこから左右にゆっくりと膝を倒して腰をひねります。
膝を倒すときには勢いよく行わないように注意し、倒す幅も少しずつ大きくするようにしましょう。

仰向け自体が痛くてできない方は、無理をしないようにしましょう。
横向きに寝て少し慣れてから仰向けになったり、仰向けになった状態で腰の下に丸めたタオルを入れるなどして工夫をしてみると、痛みなくできる場合もあるので、無理のない範囲で試してみてください。

腰痛や背中の痛みのマッサージ

次に妊娠中のマッサージについてお話します。
基本的に腰や背中を自分でマッサージするのは難しいですし、妊娠後期ともなると、お腹が大きくなってなおさらやりにくいと思います。そのため、マッサージをする際は、なるべくパートナーや家族にお願いするようにしましょう。
ママが押されて気持ち良いと思う場所を、気持ち良いと感じる強さで押してあげるのが適切です。

注意しておきたい点としては、何度もお伝えするように、妊娠中は骨盤周囲の靭帯を緩めるホルモンが分泌されていて関節を痛めやすい状態にあることです。無理な力を加えたり、勢いよく押したりしないように、マッサージをしてくれる相手と話しながら行いましょう。ママの様子を確かめながら、ゆっくりマッサージしてください。

腰痛や背中の痛み対策グッズ

ストレッチやマッサージももちろん有効ですが、それでは対処しきれなかったり、すぐには効果が現れなかったりする場合もあるので、痛みに対するグッズをご紹介します。

1. 骨盤ベルト

腰が痛いときに持っておくと心強いのが『骨盤ベルト』です。
リラキシンによって緩んだ骨盤周囲の関節を固定する効果があるので、重いものを持つときや体勢を変えるときなどに、関節にかかる負担を減らすことができます。
また、腹筋や背筋をサポートしてくれるので、背骨の弯曲が強くなりすぎたり、関節を守るために筋肉が働きすぎたりすることも防いでくれます。

骨盤ベルトには、ガードルタイプや腹巻タイプなど色々な種類があります。自分に合ったものを見つけることや、お腹の赤ちゃんを圧迫しすぎないようにすることが大切です。

2. テニスボール

自分で腰や背中をマッサージしたいときに便利なのが、テニスボールなどの適度な大きさと硬さのボールです。
立位もしくは座った状態で、壁と背中や腰の間にテニスボールを挟んでゆっくりと体重をかけていき、自分の心地よい強さのところでしばらく止めます。押して離してを何回か繰り返していくうちに、硬くなった筋肉の緊張が緩和されます。

おわりに

妊娠中の腰や背中の痛みは、出産後に落ち着いてくることが多いです。
出産までなるべく健康的にマタニティライフを送るためには、腰痛や背中の痛みに対して早めに対処することが大切です。
症状が個人によって異なるため、今回お伝えした対処法が全ての方に通じるものではありませんが、参考にしていただきながら、無理せず体のケアを行ってみてください。
強い痛みやトラブルがあった場合は、すぐに医師に相談してください。

監修

・救急医、内科医 増田陽子

・救急医、内科医 増田陽子

専門分野
微生物学、救急医療、老人医療

経歴
平成18年 Pittsburg State大学 生物学科微生物学・理学部生化化学 卒業
平成22 年 St. Methew School of Medicine 大学医学部 卒業
平成24年 Larkin Hospital勤務
平成26年 J.N.F Hospital 勤務

資格
日本医師資格
カリブ海医師資格
米国医師資格

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