はじめに

猫背が体にあたえる影響は計り知れません。
生活の様々な悩みに猫背が影響しています。

猫背だと見栄えも悪くなり、良い印象を持ってもらえません。
施術前の問いやアンケートのどのような姿勢で悩んでいるか?という問いでも多いのがこの猫背なのです。
男女を問わず多くの人が姿勢の悪さを自覚しています。

しかし、自覚していながら、知らず知らずの内に猫背になってしまうという実態があるのです。

こちらではそんな猫背の原因や対策方法、そして高いパフォーマンスを維持する方法まで説明していきます。
参考にしていただき、より良い健康ライフをお過ごし頂ければ幸いです。

日本人は猫背になりやすい

最近のシニア世代は、昔と違って若々しく元気だといわれます。
確かに、以前の70歳のイメージと、今の70歳では大きく印象が変わっていることは間違いありません。
人気漫画の「さざえさん」の波平さんは54歳です。
現代の70歳に見えませんか。
第2の人生を謳歌しているという人も少なくないでしょう。
ご高齢でも若々しく見える方は姿勢も顔色もよく、私もそんな歳のとり方をしたいと憧れてしまいます。

しかし、元気なシニア層が増えている一方で、猫背に関していえば、昔から欧米人よりも日本人のほうが猫背になりやすいという説があります。

年配の方で腰が大きく曲がったご老人を見かけた記憶はありませんか。

私は富山県下新川郡宇奈月町(現・黒部市宇奈月町)の育ちなので、子どもの頃はそんなお婆さんやお爺さんをよく見かけました。

一方の海外では、そこまで腰が曲がった老人を見かけることがほとんどありません。

なぜでしょうか。

この違いは長く積み重ねられてきた文化の違いにあり、その文化の違いこそが日本人と欧米人との骨格の違いに関係しているといわれています。
そして骨格の違いこそが猫背になりやすい要因につながっているのです。

具体的に説明すると、農耕民族の日本人は田植えや畑仕事などが生活の主で、身体を前かがみにした状態で長時間の作業を行なってきました。
身体を伸ばすという動作よりも、引くとか縮むといった動きが生活の中で必要かつ自然な動きになっていきました。

一方の欧米人のルーツは狩猟民族で、槍や弓矢を使う文化でした。
要するに腹筋や背筋を使って押したり、伸ばしたりという動きが体の中に自然に備わっていったわけです。押すという動作は身体の後ろ側の筋肉をよく使います。背筋や太ももの裏側のハムストリングという筋肉がつきやすい身体が長い文化の中で培われてきたのです。

余談ではありますが、背中の後ろ側の筋肉(背筋等)は「走る」という動作に非常に関係のある筋肉です。
陸上の短距離で日本勢が世界のトップクラスの選手達と圧倒的な差があるのは、骨格の違いからくる筋肉の付き方が影響していることが考えられます。

先の北京世界陸上では日本代表のサニブラウン選手が注目を集めました。
彼の身体にはガーナ人の遺伝子が存在し、日本育ちではありますが、身体能力的には欧米人に近いともいえます。
また、高校野球で甲子園を沸かせたオコエ瑠偉選手も父親はナイジェリア人ですから、アフリカ系の身体能力が備わっているわけです。

話を戻すと、農耕民族の日本人と狩猟民族の欧米人とでは骨格が違うのは長きに渡る文化の差であり、それは骨盤の傾き方に最も違いが現れているのです。

狩りで速く走ることが必要だった狩猟民族は骨盤が前傾しているのに対して、俊敏な動作を必要とされなかった日本人の骨盤は後傾するようになったということが考えられます。
骨盤が後傾していることを意識しなければ、腰椎が後ろ彎曲して背中が丸まりやすくなる。これが日本人に猫背(特に背中猫背と腰猫背)が多いといわれる理由のひとつなのです。

・日本人の骨格や筋肉は、猫背になりやすいようにできている。

パソコン、スマホに要注意?

最近は食生活をはじめとする生活習慣が欧米化してきたため、若い人たちのスタイルはずいぶんとよくなったといわれます。

ただ、だからといって若い人たちの姿勢がよくなったというわけではありません。
渋谷や原宿など若者が集まる場所で観察してみると、背筋を伸ばして颯爽と歩いている人は、残念ながらほとんどいません。

みんなスマホを見ながら歩いたりして、どちらかというと下を向いて歩いている人がほとんどです。
また、地べたに平気で座り込んでいる若者もよく見かけます。
それをどうこういうつもりはありませんが、身体のバランスが悪い状態を長時間続ければ、背骨が歪んで姿勢が悪くなるのは当たり前なのです。

スマートフォンやパソコンが当たり前のように普及した代償というわけではありませんが、姿勢が悪くなる要因が増えたことは間違いありません。
スマートフォンを覗き込むとき、人は自然と肩よりも頭が前に出た状態になります。
まさに首猫背ですね。

もっと悪いのがパソコン作業です。
仕事は仕方ないですが、長時間座りっぱなしの作業は身体に負担をかけます。
先述したように日本人は、骨格、筋肉の問題で猫背になりがちです。

そのため、どうしても楽な状態で作業しようと、身体に悪い猫背の姿勢をとってしまいます。
一時的には楽かもしれませんが、結果的に、それが猫背を悪化させるなど、悪い姿勢につながることが多いのです。

椅子に座って作業をするのなら、正しい椅子の座り方を知っておくべきです。
人間は二足歩行の生き物ですから、直立しているときと同じ姿勢が自然な状態です。

とくに日本人は骨盤がもともと後傾しやすいので、椅子に座るとさらに骨盤が後ろ側に傾く感じで寝た状態になってしまいます。

お尻を座面に深くかけて、胸を張って身体の真横から見たときに背骨がS字カーブを描くようにする。

この座り方が、最も首や肩、背中に負担をかけない座り方なのです。
正しい姿勢をとることで肩こりや頭痛、目の疲れ、そして、うつ症などの精神障害などの防止にもなるのです。


長時間のパソコン作業は肩こりやドライアイを発端として不眠症を誘発し、最終的にはうつ病に陥る実例もあります。日常的な身体の不調に対して気をつける必要があります。
仕事やプライベートも含め、スマートフォンやパソコンを長時間使い続けることが猫背になる原因を作り、更には肩こりや頭痛、うつ病などに発展していく可能性もあるのです。

ついつい仕事に集中して、2時間以上、パソコンを見つめっぱなしで作業にのめり込んでしまう方も少なくないと思いますが、意識的に2時間以上、同じ姿勢をとらないよう気をつけてみてください。

また、休憩は5分~10分は必ずとって、作業の合間にも何度か小休止を入れるようにしてください。そうするだけでずいぶんと楽になりますし、長い目で見れば仕事の能率もあがるのです。

・意識的なクールダウンがあなたの身体を守り、仕事の効率を上げます。

骨盤が後傾している?簡単セルフチェック

ここでは骨盤が後傾しているかどうかチェックする方法についてご説明します。

・まずは、直立した状態で頭と肩を落して落ち込んでいるような姿勢を作ります。
そこから椅子に浅く掛けて、だらしなく座ってみてください。

体の真横から見たときに、恥骨(骨盤の前、下部分)とへそとみぞおちを結んだラインが180度以下の姿勢になっていると思います。
これが骨盤が後傾している状態です。
このラインが180度以上に開くと、骨盤が前傾した状態になり、スムーズな歩行ができるよい姿勢ということになります。

多くの人は骨盤が後傾していることに慣れてしまって、よい姿勢で歩く感覚を知らない人が増えているのです。

骨盤が後傾すると背骨が後ろに傾き、バランスを取るために背中が丸くなり顔が前に出て猫背になってしまいます。
(腰猫背→背中猫背→首猫背→腹猫背の順でおこる)

骨盤が後傾しなければ、前述の胸郭と肩の位置が保たれてすっきりと見栄えのいい立ち方ができるのです。

もうひとつ意識することがあります。

それは、太ももの前側の筋肉に力が入っていないか?
骨盤が後傾しなければ、太もも前側の筋肉には全く力が入っていないはずです。
この感覚を手に入れるためには、足を肩幅程度に開き、スクワットをするようにゆっくりとお尻を落としていきます。
お尻と足の付け根が伸びる感覚があると思いますが、そこから再び直立した状態に戻します。
このときに胸郭を上げる意識を持つことがポイントです。

ここで足裏の重心に注意が必要です。

足裏のどこに重心をかけるかが骨盤の後傾を防ぐ鍵を握っています。
かかと側に重心をかけると、後ろ向きに引っ張られて倒れてしまいそうになると思います。
こうなると太もも前側の筋肉に力が入ったり、骨盤を後傾させて倒れるのを防ごうとしてしまいます。
そこで、足裏全体に体重をかけるように意識してみましょう。
体の真横から見たときに、肩、骨盤、足裏の中心が一直線になるような直立姿勢を目指します。
骨盤が前傾していない状態を確認できたらそのまま歩き出してみましょう。

歩き出そうとすると自然に足が前にスムーズに出るはずです。
骨盤が後傾しているとこの足が自然に前に出る感覚は得られません。
猫背を矯正した状態で歩いていると気づくことがあると思います。

それは、猫背のときに比べて視界の上下動が少なくなることです。
また、姿勢を正すことで、かかとからつま先という重心移動を感じられるようになります。
骨盤が前傾して股関節の可動域が広くなると歩幅も大きくなります。

体重がかかとから拇指球に移り、親指から抜けていく感覚が感じられると思います。

アスリートはこのような歩き方を自然におこなっているのでナチュラルに速いペースで歩くことができるのです。

・骨盤の位置に気をつけてスムーズにラクに歩きましょう

もし、ぎっくり腰になってしまったら

ストレスや姿勢はぎっくり腰の原因となります。
もし万が一、ぎっくり腰になってしまったら、どう対処すればいいのでしょうか?
ここでは、対処法を説明していきます。

ぎくっとなったら、ぎくっとなった位置まで戻してそのまま90秒間動かないで身体を固定しましょう。
そうすると大概のぎっくり腰は激痛にならずに治ります。

もし、治らなった場合、またはつい動かして痛みが強く出た場合は次の方法で対処してください。
ぎっくり腰の痛みというのは、腰椎から出た神経が骨盤に入るところ(腰の付け根部分)にある腰神経叢といわれる神経が集まった部分で痛むことがほとんどだと言われています。
回復を早めるために、足を高くしてゆっくり横向きの姿勢をとってください。

発生後も痛みが続くようなら、アイシングをしましょう。
ちなみに冷湿布にはアイシングとは違い、冷やす効果はないため、面倒でも必ずアイシングを行なってください。

アイシングには末梢血管を収縮させることで痛みを和らげる効果のほかに、脳に伝わる神経に「冷たい」という刺激が加わることで、痛みの刺激を和らげる作用もあるので、痛みがラクになります。

ただし、腰痛の場合は長時間冷やしすぎると内蔵に負担をかけることがあります。
5分以上のアイシングは控えてください。5分冷やして、10〜15分インターバルをいれる作業を3セットほど行なうのが理想です。
過度のアイシングは血行が悪くなり過ぎて、逆に筋肉が固くなって回復の遅れの原因にもなるので注意してください。

とはいえ、まずは予防することが大切です。

ぎっくり腰を予防するためのポイントは、動作に入る前になるべく一呼吸おくことです。
荷物を持ち上げたり、腰を曲げるとき、スポーツをするときは、ウォーミングアップをするなど腰への負担をできるだけ軽くすることを心がけてください。

また、ふくらはぎの外側に長母趾屈筋という筋肉があり、この筋肉が腰椎5番から出ている神経に支配されていて連動するため、この筋肉を緩めると、腰痛は楽になることがあります。

・もし、ぎっくり腰になったら、最初の90秒が肝心。

猫背を効果的に矯正できるエクササイズ

ここでは、猫背を矯正し、腰痛を防止するためのエクササイズ法を紹介します。

仕事中に腰が痛いと感じて背中を伸ばしたり、屈伸をしたりすることくらいは、誰もがは普段行なっていることだと思います。
しかし、痛みを伴うために途中でやめたり、そもそもそれくらいでは解消できないという人がほとんどではないでしょうか。

腰痛を改善するためには、良い姿勢をつくることが必要になります。ポイントは、背筋を伸ばし続けられるような状態をつくっておくことです。

体に備わっている生理的湾曲を正常な状態に戻し、頭の重さを正常に逃がしてあげることで、今までの痛みが嘘のように腰痛は改善されていくのです。

頭の重さの負荷が生理的湾曲不全によりどこか一カ所にかかると痛みが出やすくなります。
1番負担がかかるところは、形状的に最も小さい腰椎5番(背骨の1番下の骨)のため、腰痛がこの箇所に出やすい傾向があります。

そして注意しなければならないのが、猫背の人が急に背中を伸ばしたり、床にうつ伏せになった状態から上半身を起こす背筋運動をすると腰痛が治るどころか、悪化の原因になることがあります。

ですから、エクササイズも正しいやり方で行なうことが何よりも重要なのです。

まずは床に仰向けになって寝た状態で、背中と床の間にストレッチポールなどを挟み、背中全体の筋肉をほぐします。
ストレッチポールがなければ、タオルなどを丸めて代用するのもよいです。

イスの背もたれを使って両腕を上に伸ばして背中を反るのも効果的です。
次に机か壁に両手をついて、両腕の間に頭を沈めるようにして背中を伸ばします。

伸ばしきった状態で10秒から20秒キープします。

これを定期的に繰り返すことで猫背が治り、腰痛を防止することにつながります。

また私がよく患者様にお伝えしている「100⇄ゼロ」体操も効果的です。

まずイス(動かないものを使用してください。)に深く腰をかけます。
思い切って胸を張った状態で10秒間キープします。
背中を反って、お尻を突き出すような態勢をイメージしてください。

10秒経ったら、一気に脱力させて身体が「くの字」を描くようにします。
これを何度か繰り返し行なう体操によって猫背を矯正することができます。

また、これらのエクササイズを行なうだけで背筋が鍛えられるので、椅子に正しい姿勢で座り続けるために必要な筋力も得ることができます。

・正しいエクササイズが、猫背克服の特効薬

子供の肩凝りが増えたのは猫背のせい?

欧米人よりも日本人のほうが圧倒的に多いといわれているのが「肩こり」です。
理由は単純に仕事のし過ぎであるとか、運動不足だとかさまざまなことが考えられますが、さらに問題なのは肩が凝っている子どもが最近急激に増えているということです。

一昔前には考えられなかったことですが、ご想像の通りテレビゲームやスマホのやり過ぎが原因のひとつです。
家にこもってゲームを長時間やる。
体を動かさないから筋力が落ちて姿勢が悪くなり、猫背になる……。
この悪循環が姿勢の悪化を呼び、肩こりの原因となっているのです。

肩こりとは病名ではなく症状のことですが、一般的には首の後ろや背中側、肩甲骨まわりに痛みや張りを感じるものを指します。
頭の重さは体重の約10%〜13%くらいといわれるので、体重が60kgの人なら約6kg以上の塊を首で支えているということになります。
ちょうどボーリングの球が首の上に乗っているとイメージしていただければわかりやすいかもしれません。
 
子どもに置き換えて考えても、猫背になっていると首への負担はかなり大きいことは想像できます。
子どもであっても悪い姿勢を続けていれば猫背になり、肩こりを引き起こしてしまうのです。
子どもから「肩が凝った」と言われて、「子どもが肩こりなんて大げさな……」と聞き逃さないでください。

肩こりから頭痛や視力低下などの悪影響が体に及ぶ可能性は十分にあります。

大人は肩や首まわりが重いと、気分まで重くなってしまうものですが、子どもたちも同じように重たい気分になっていることを見逃さないでください。

また、成長するうえで背骨に歪みが出たり、身体のバランスが崩れてスポーツが上達しにくくなるというデータもあります。

運動神経の発達は12歳前後までといわれていますが、運動神経の良し悪しは、複雑な動きや状況を的確に脳に送り、そこから筋肉に明確な命令を出せているかによります。

ですので単純に筋肉を鍛えても運動神経が良くなるわけではなく、神経の伝達が上手くできているかということが重要なのです。

猫背などで姿勢が悪くなっていると、脳から神経を通って筋肉に、信号を伝達するスピードが悪くなると言われているのです。

子どもの頃に何をやらせても、そつなくこなすクラスのスターがいませんでしたか?
もちろん、遺伝的な影響は多々ありますが、もしかしたら、その生徒は小さい頃から姿勢がよくて、神経伝達スピードが速かったのかもしれません。
反対に運動神経があまりよくなかったという人は、猫背などが原因で神経伝達スピードが遅かった可能性があります。

・姿勢は、子どもの運動機能にも影響を与える

まとめ

いかがだったでしょうか?

猫背が与える影響がたくさんあることがわかっていただけたと思います。

日々の姿勢や生活習慣は様々な病気に繋がる可能性があります。
猫背を解消すれば良い印象を持ってもらえるだけでなく、仕事や趣味のスポーツで高いパフォーマンスを発揮することができます。

ちょっとの気遣いや心がけで症状が改善する場合があるのです。
姿勢を見直して健康なライフスタイルを楽しみましょう。

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