太ももの筋肉構造と筋トレ方法

下半身の筋肉を付けようと筋トレをすると、下半身の筋肉を肥大させることの難しさを感じると思います。「どの筋肉がどの動作をしているかを知ること」はトレーニングにおいて重要です。
まず太ももの筋肉がどのようになっているかを簡単にご説明します。

自分が鍛える箇所の意識を高めることも大切です。
初心者が自宅で行っても、中級者がスポーツジムで行っても、効果的なメニューはそれぞれにあります。
コンディションを管理するためのストレッチ方法や、トレーニングの効果を高める食事についても紹介していきます。
効率よく、正しい方法で美しい体を手に入れましょう。

太ももの筋肉構造

筋肉は表面から何層にも大きい筋肉から、小さい筋肉まで多くの筋肉で構成されています。
ここでは、主に外見に関係する太ももの筋肉構造を紹介していきます。
「太ももの筋肉を付けるために構造を知る必要性があるのか?」と疑問に思う人もいるかもしれません。
しかし、トレーニングの効果を上げるためには「意識性の原則(マインドコネクト)」という理論があります。それぞれの筋肉に注目し、その筋肉の仕組みを意識することで、筋肉1つ1つを効率よく鍛えていくという理論です。
初めは簡単にでも良いので、筋肉と動きをイメージしながら理解を深めるようにしていきましょう。

1)太ももの前面

太ももの前面にある大きい筋肉は大腿四頭筋といいます。
これは外側広筋、中間広筋、内側広筋、大腿直筋と言われる4つの筋肉で構成されています。
大腿四頭筋は、膝を曲げた状態から伸ばす動作(膝関節伸展)を行う時に使う筋肉です。

さらに、大腿直筋は太もも全体を持ち上げて股関節を曲げる動作(股関節屈曲)を行う働きもあります。

2)太ももの後面の筋肉

太ももの後面にある大きい筋肉は、主にハムストリングと大殿筋の2つです。
ハムストリングは大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋といわれる3つの筋肉で構成されています。
膝を曲げる筋肉(膝関節の屈曲)と太もも全体を後ろに引き上げる動作(股関節伸展)を行う筋肉です。
大殿筋は、主にお尻の筋肉で太もも全体を後ろに引き上げる動作(股関節伸展)を行う筋肉です。

それぞれの筋肉を鍛える方法

今回紹介するトレーニングは、初心者が自宅で行っても、中級者がスポーツジムで行っても、効果が得られやすいメニューを紹介します。
最も重要なのは正しいフォームで行うことであり、正確なフォームでトレーニングを実施することで、筋肥大が期待できます。
鏡などで確認しながら、しっかりとしたフォームでチャレンジしてみてください。

1)フルスクワット


1. 両足は肩幅、爪先はほんの少し外へ向いた状態で立ちます。

2. 背中のラインを真っ直ぐにして、胸を張った姿勢のままの状態で膝を曲げ、お尻を後ろに突き出すようにして腰を落として行きます。ピーク時ではお尻が膝より若干低くなる位置までしゃがんでいきます。

3. その後、膝と股関節を伸ばし直立姿勢にします。スクワットは大腿四頭筋、ハムストリグ、大殿筋を鍛えてくれる種目です。

慣れてきたらバーベルやダンベルで荷重をかけて行います。
10〜20回を3セット実施すると良いでしょう。
負荷をどのくらいかけて実施するのか、しっかり設定するようにしてください。
わからない場合は専門家に相談しましょう。

2)シングルデッドリフト

1. 両手を体の前で自然に垂らします。

2. 右足を後ろに引き上げながら、上半身を前に真っ直ぐゆっくりと倒します。右足の先から頭までが、真っ直ぐ床と平行になるようにしましょう。このとき、軸足の左足を少し曲げ、浮かせた右足を後方に高く引き上げるとバランスがとりやすいです。

3.膝、股関節と背中を伸ばし最初の立位に戻ります。

10〜20回を3セット実施すると良いでしょう。
荷重を加えたい時は、手にダンベルなどを持つとより負荷をかけることができます。

筋トレ後のストレッチの方法

トレーニングで使った筋肉はそのまま放置せずにセルフケアを実施しましょう。
トレーニングの後や、入浴後などに、しっかりとストレッチをすることで疲れなどを残さないようにして、コンディションを整えていきましょう。
今回ご紹介するストレッチはトレーニング前に実施する場合は注意が必要です。
トレーニング前にストレッチを行うとパフォーマンスを下げる可能性があります。
準備運動は大切ですが、トレーニング前に体を緩めすぎないようにしましょう。

1)大腿四頭筋のストレッチ


1. 正座をします。

2. 正座の状態からそのまま上半身を後ろに倒して、仰向けの状態になります。

筋肉が硬くて仰向けになれければ、立位は伸ばした状態にして、片足ずつストレッチをしていきましょう。
ストレッチの継続時間は30秒前後に設定すると良いです。

2)ハムストリングのストレッチ

1. 足を前に投げ出して、左右の踵を付けます。(長座の姿勢)

2. この状態から前屈をします。この時に親指を外に向けるように大腿を外側に回した位置(股関節外旋位)で30秒前後ストレッチを行います。

3. 今度は逆に左右の足の親指をくっ付けるように大腿を内側に回した位置(股関節内旋位)で30秒前後ストレッチを行います。

この大腿を内外に回した状態で行うことで、ハムストリングを構成する、大腿二頭筋と半腱、半膜様筋のそれぞれをしっかり狙ったストレッチをすることが可能です。
一見普通のストレッチですが、少しの工夫でトレーナーが行うような効果的なストレッチにすることが可能です。

筋トレ効果を高める食事

1)食事の間隔

トレーニング後1時間をピークに筋肉の蛋白質の合成が増大します。そのため、この時間帯は「ゴールデンタイム」と呼ばれています。
しかし、この蛋白質の合成が増大する時間は少なくとも48時間(研究によっては72時間)続くと言われているので、この48時間の食事の量と質とタイミングが重要になってきます。(以下参考)
We conclude that exercise resulted in an increase in muscle net protein balance that persisted for up to 48 h after the exercise bout
(意訳)筋肉におけるたんぱく質の相対バランス量はエクササイズ後48時間でまで回復強化するのに使われます。
【著者】S. M. Phillips, K. D. Tipton, A. Aarsland, S. E. Wolf, and R. R. Wolfe
【サイト名】PHYSIOLOGY.ORG
食事のタイミングはトレーニング後の食事から3時間ごと20g以上の蛋白質を摂取することが、最も効率よく蛋白質を筋肥大につながると報告されています。3食の食事以外で、ゆで卵やプロテインで蛋白質を摂取しましょう。そうすることでトレーニングの効果を最大限に活かした筋肥大を期待できます。

2)卵の研究から分かるトレーニング効果を高める食事の考え方

ボディービルダーやヒィジークの選手が卵の卵白だけ食べている映像を見ることがありますが、近年の研究で卵は全卵を摂取した方が、筋肥大しやすいと結論付けています。その理由は、単離(栄養素から切り離された)されたタンパク質のサプリメントを摂取するよりも、食品そのものからタンパク質を摂取したほうがトレーニング効果は高まるからです。
We show that the ingestion of whole eggs immediately after resistance exercise resulted in greater stimulation of myofibrillar protein synthesis than did the ingestion of egg whites, despite being matched for protein content in young men. Our data indicate that the ingestion of nutrient- and protein-dense foods differentially stimulates muscle anabolism compared with protein-dense foods.
(意訳)被験者の若い男性のタンパク質含量と一致したもとで、抵抗運動後すぐに全卵を摂取することが、同運動後すぐに卵白だけを摂取するより筋原線維タンパク質合成に優位な影響を及ぼすことが研究結果として現れた。栄養素やタンパク質が高密度の食品と、タンパク質のみが高密度の食品を摂取した場合とを比較すると、筋肉の同化作用に差次的に刺激をもたらすことが、私たちのデータから示唆できる。
【著者】van Vliet S, et al. Am J Clin Nutr
【サイト名】PubMed
主に卵黄は、食物繊維とビタミンC以外の全ての栄養素が含まれています。
筋肥大に蛋白質も重要ですが、栄養素は単体のみではその効果を効果的に発揮できない可能性があります。
プロテインを摂取するだけよりも、卵や魚などそのまま全部食べるというホールフードの考えを取り入れた方がトレーニング効果を高めてくれる可能性があります。

さらに、脂質の成分であるホスファチジン酸は、筋タンパク質の合成を促進するmTORという物質を活性化させ、トレーニング後の筋肥大に非常に貢献してくれます。
まずは、サプリメントを充実させるより、卵やお肉を3時間ごとにしっかり食べることから始めてはいかかでしょうか。

おわりに

下半身の筋肉は面積も大きいので、基礎代謝が上がりやすくダイエット効果など健康面に大きなメリットがあります。
しかし、外見に反映されるまで時間がかかる上に、筋肉が大きい分、トレーニングの負担は高度になり敬遠されがちです。
しかし、カッコよく肉体を作るには欠かせないポイントです。
結果をすぐに求めず、継続的に工夫を加えながら頑張りましょう。

監修

・救急医、内科医 増田陽子

・救急医、内科医 増田陽子

専門分野 
微生物学、救急医療、老人医療

経歴
平成18年 Pittsburg State大学 生物学科微生物学・理学部生化化学 卒業
平成22 年 St. Methew School of Medicine 大学医学部 卒業
平成24年 Larkin Hospital勤務
平成26年 J.N.F Hospital 勤務

資格
日本医師資格
カリブ海医師資格
米国医師資格

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