肩甲骨のこり・痛みの原因

ここでは、肩甲骨にこりや痛みを生じる、主な原因をご説明します。

■姿勢不良

肩甲骨には、たくさんの筋肉が付着しています。
背筋を伸ばして左右の肩甲骨を軽く中央に寄せたような姿勢でいると、肩甲骨が良い位置で維持でき、周囲の筋肉に負担がかかりにくくなります。

一方、猫背や巻き肩になると、自然と頭が前方に落ちます。これにより、首筋から肩甲骨にかけての筋肉は、重たい頭を支えるために常に緊張した状態になります。
このような状態が日常的に続くと、肩甲骨周囲の筋肉のこりや痛みにつながります。

■過度の負担

パソコン作業や洋裁など、身体の前で手先を使ったり、顔を前に出したりするような時間が長い方は、どうしても不良姿勢が長時間続いてしまいます。そのため、普段の姿勢が整っていても、肩甲骨のこりや痛みが生じやすくなります。

また、重たいものを持ち上げるなどの重労働が多いような方も、肩甲骨周りの筋肉に過度の負担がかかり、筋疲労を起こしてこりや痛みを生じやすくなります。

■血流不良

デスクワークが多くて運動不足になったり、年齢とともに活動量が減って家にこもりがちになったりしてしまうと、全身の血流が低下してしまいます。
筋肉への血流が低下すると、筋肉が硬くなり、こりや痛みを生じやすくなります。

こりに悩む方は、こっている場所に対するマッサージやストレッチだけでなく、全身の血流を良くするような有酸素運動や入浴も効果的です。

肩甲骨のマッサージの効果

ここでは、肩甲骨のマッサージを行うことで得られる効果についてご説明します。

■血流改善

肩甲骨をマッサージすると、その周囲の血流が良くなります。
背中周りがぽかぽかと温かくなるだけでなく、肩甲骨から末梢の腕や手先への血流も促されるため、末梢の冷えも改善することができます。

■肩甲骨周囲のこり軽減

マッサージによって肩甲骨周囲の筋肉に対する血流が改善し、緊張して硬くなっていた筋肉がほぐれます。

■四十肩・五十肩の改善

『四十肩』・『五十肩』とは、年齢とともに肩関節周囲の筋力が低下したり、周囲の筋肉が硬くなったりすることで、関節の動きが悪くなったり、痛みを伴ったりするものです。
肩関節は肩甲骨の受け皿に対して『上腕骨(肘から肩関節の間の腕の骨)』がはまる形で構成されているので、肩甲骨の動きが良いと、肩も動きやすくなります。
つまり、肩甲骨のこり解消が、四十肩・五十肩の改善にもつながるのです。

■スポーツパフォーマンス向上

野球や陸上競技の投てき種目など、投げる動作を伴う競技では、肩甲骨の動きが大変重要な要素となります。
肩甲骨がよく動くことで肩関節の可動域が改善すると、より速く、より遠くまで球を投げることができることもあり、パフォーマンスの向上に直結します。
また、肩甲骨がしっかりと動くことで、肩関節や腕の筋肉に対する負担が減るので、ケガを防ぐことにもつながります。

肩甲骨のマッサージのやり方

肩甲骨のマッサージについて具体的なやり方をご紹介します。

■肩甲骨内側マッサージ(菱形筋、僧帽筋中部線維)

肩甲骨の内縁には、肩甲骨を背骨側に引き寄せて胸を張る働きをする『菱形筋』や『僧帽筋』の中部線維があります。いずれも脊椎の『棘突起(背中から腰にかけて背骨の中央に並ぶ突起)』から、肩甲骨の内縁に向けて横方向に走行しています。

猫背姿勢によって肩甲骨が外側に流されることで、これらの筋肉に負担がかかったり、肩甲骨をあまり動かしていないことでこの筋肉にこりを感じたりすることも多いです。
そのため、マッサージでこの2つの筋肉をほぐしましょう。

1. 柱や椅子の背もたれの角など、背中を押し当てることのできる、硬く安定した場所を探し、そこに片側の肩甲骨の内縁を当てます。
2. 体重を後ろに預けるようにして、当てた部位に圧をかけていきます。
3. 数秒圧をかけてはゆっくり姿勢を戻すという動きを何度か繰り返し、少しずつ当てる位置を上下左右に変えていきます。
4. 慣れてきたら、狙った部位を当てたまま、肩関節をぐるぐる回すようにすると、ほぐれやすくなります。
5. 片側のマッサージが終わったら、反対側も同様に行いましょう。

■肩甲骨上部マッサージ(僧帽筋上部線維)

肩甲骨の上部には『僧帽筋の上部線維』や『肩甲挙筋』といった、肩こりの原因とされる筋肉があります。肩こりの方は、自然に手がいってしまう部位でもあります。
ここでは、それらの筋肉を効率よくほぐすことのできる方法をご紹介します。

1.ほぐしたい側と反対の手の人差し指から小指までをそろえて指先を軽く曲げ、ほぐしたい側の肩の上に当てます。
2.ほぐしたい側の肩の筋肉を伸張するように、反対側に首を軽く倒し、当てた4本の指の腹で圧迫します。
3.気持ち良いと感じる場所は長めに押し、少しずつ場所を変え、数秒間圧迫しては数秒間離すことを繰り返します。
4. 慣れてきたら、頭をまっすぐにした状態で狙った部位の筋肉を圧迫し、そのままゆっくりと反対に倒しては戻すという動きを繰り返します。
5. 片側のマッサージが終わったら、反対側も同様に行いましょう。

■肩甲骨外側マッサージ(棘下筋)

『棘下筋』は肩甲骨の表面から外側にかけて走行している筋肉で、こりを感じやすい部位でもあります。
肩甲骨内縁のマッサージと同じように硬い場所に当てて圧迫する方法もありますが、さらに簡易な方法がありますので、ご紹介します。

1. ほぐしたい方と反対側の手の人差し指から小指までをそろえ、指先を軽く曲げます。
2. その手をほぐしたい側の脇の下に通し、肩甲骨上のこっている場所に4本の指が触れるようにします。
3. 数秒間圧をかけてはゆっくり離すという動きを何度か繰り返し、少しずつ当てる位置を上下左右に変えていきます。
4. 慣れてきたら、狙った部位に指を当てたまま、肩関節をぐるぐる回すようにすると、よりほぐれやすくなります。
5. 片側のマッサージが終わったら、反対側も同様に行いましょう。

おわりに

肩甲骨のこりと痛みについて、原因と解消するためのマッサージの方法、その効果をご紹介しました。
肩や肩甲骨周囲のこりや痛みは、誰もが一度は経験するといっても過言ではないほど、多くの方が悩む問題です。

今回ご紹介したマッサージをうまく活用しながらも、こりや痛みを感じる前に、予防策も並行して行いましょう。姿勢や負荷に気を付けたり、入浴や散歩やジョギングなどの有酸素運動を行ったりすることが、こりの予防につながります。
症状が重くなる前に、早めの対処をし、ご自分の身体とうまく付き合っていただければと思います。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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