リンパとは

むくみが激しかったり、疲れを感じたりするときに「リンパが滞っている」と表現されることがありますが、そもそもリンパとは何でしょうか?

ヒトの体には、血液の流れる血管のほかに『リンパ液』が流れる『リンパ管』があります。リンパ管も血管も同様に体の細部まで全身を巡っています。
リンパ管の主な役割は、不要な老廃物の運搬ですが、他にも、免疫力を維持するために細菌などをブロックする働きも持っています。リンパの流れで回収・運搬された老廃物は、体の各所にある『リンパ節』でろ過され、体の外に排泄される仕組みになっています。

リンパの詰まりとむくみの関係

血管よりも詰まりやすい?

リンパ管の働きに「体の老廃物の運搬」があることを先ほどお伝えしました。
血管にも体の老廃物や栄養分を運ぶ働きがあり、心臓がポンプの機能を果たして血管を動かしています。
しかし、リンパ管の場合は、このポンプになる臓器がないので、筋肉の収縮によって流れが促されています。そのため、血液よりも流れは緩やかで、詰まりやすいといえます。

運動不足や同じ姿勢は禁物!

運動によってリンパの流れは促進されますが、反対に同じ姿勢を長時間続けていたり、運動不足によって筋力が衰えてしまうと、リンパを流す働きも弱ってしまいます。こうなると、老廃物が体内に溜まり、むくみとなって現れます。

特に、女性の多くが悩む下半身のむくみは、冷えや運動不足などが原因でリンパの流れが滞って起こることが多いです。
下半身の場合、ふくらはぎの筋肉がリンパ液を流すポンプ機能をもっていますが、長時間座ったままでいると、ふくらはぎの血流やリンパの流れが悪くなります。これにより、下半身のむくみが起こってしまうのです。
また、リンパの流れが悪くなると、細菌などをブロックする機能が低下し、免疫力も下がってしまいます。

リンパマッサージとは

リンパ管には、リンパ液が逆流しないように弁があり、弁の部分は特に詰まりやすいと言われています。弁の部分の詰まりを解消し、リンパ液の流れを促すのに効果的なのが、リンパマッサージです。

リンパマッサージは、老廃物をろ過するリンパ節にリンパ液を流すように行いましょう。リンパ節は、首筋、脇の下、脚のつけ根、膝の裏などに多く集まっているので、これらにリンパ液を流していきます。
流す方向は、手先・足先などの身体の末端から、心臓に向かって行うのが正しいです。

また、リンパ管には『毛細管』と『本幹』があり、毛細管は皮膚に近い位置に張り巡らされてるので、グリグリと揉みこまなくても、皮膚の表面をさする程度のマッサージで効果が期待できます。

マッサージを行う前に

リンパマッサージの前には、水をコップ1杯飲んでおきましょう。水を飲むことで老廃物がうまく排泄を促してくれます。
水分だからと言ってお茶やコーヒーなどを摂取すると、それらの利尿作用により、かえって体から水分を減らすことになってしまうことがあります。そのため、身体に吸収されやすい水を飲むようにしてください。

また、マッサージはリラックスした状態で行うと、より効果が現れます。
血流が促進されることでも効果的な入浴は、リンパ管の循環促進にも有効です。入浴後のマッサージがおすすめされる理由が伝わると思います。

部分別:リンパマッサージのやり方

■頸部リンパ節のマッサージ

首を支えている大きな筋肉に『胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)』があります。首を左右に向けると、向いた方向とは逆側の首に浮き上がる筋肉です。
胸鎖乳突筋の表面にリンパ節があるので、この筋肉をさすることでリンパ液の循環が良くなります。

① 左手の人差し指から薬指の3本の指を、首の右側のつけ根に当てます。
② 3本の指の第二関節が首に沿うように、耳のつけ根にある『耳下腺リンパ節』へ向かって下から上にさすります。
③ 2秒間ほどでさすり、10回ほど繰り返します。
④ 右手を使い、左側の首も同じようにマッサージします。

マッサージは気持ち良いと感じる程度に圧をかけて行いましょう。
首のこりが激しい方はさすることが難しいかもしれませんが、続けることで効果を感じやすくなります。
耳下腺リンパ節のこりがなくなると、顔のラインもはっきりしますので小顔効果も期待できます。

■鎖骨リンパ節のマッサージ

『鎖骨リンパ節』は、鎖骨と肩の間にできる三角形のくぼみにあります。
鎖骨がきれいに浮き出ているのが、むくみのない状態ですので、リンパの流れを良くして鎖骨がしっかりとわかるようにしましょう。

① 指の腹を使い、胸の間にある『胸骨』から脇の下にある『腋窩リンパ節』に向かって鎖骨の下をさすります。この時、右の鎖骨リンパ節をほぐすなら、左の手の指の腹を使って優しく行います。
② ゆっくりとリンパを流し込むように、左右の鎖骨の下を1分間ずつさすります。

■腋窩(えきか)リンパ節のマッサージ

脇の下には、全身の中でも多くのリンパ節が存在しており、『腋窩リンパ節』はその一つです。
とても大事なリンパ節なので、入念にほぐしてあげましょう。

① 脇の下に親指以外の4本の指を入れ、それらの指と親指で肉を挟みます。
② ゆっくりと息を吐きながら、5秒間かけて押します。

腋窩リンパ節は詰まりやすく、マッサージの際に痛みが強く出る方が多いと言われていますので、ゆっくりと丁寧に行いましょう。
腋窩リンパ節をほぐすことで、二の腕をすっきりさせる効果も期待できます。

■鼠径(そけい)リンパ節のマッサージ

『鼠径リンパ節』は、股関節がある、足のつけ根の前面にあります。
このリンパ節が詰まってしまうと、下半身のむくみや下半身太りの原因になります。

① 両手のひらを使い、足のつけ根を太ももの外側から内側へさすります。
② 鼠経リンパ節に流し込むように、片方ずつ1分間さすります。

下半身のリンパ液は重力に逆らう形で下から上に流れるので、筋力が低下していると、足のつけ根まで登ってくることができずに滞留してしまいます。そのため、鼠経リンパ節だけではなく、足先から脚のつけ根まで脚全体をさするのも効果的です。

■膝下(しっか)リンパ節のマッサージ

『膝下リンパ節』は、膝の裏側にあります。
膝下リンパ節が詰まると、足首やふくらはぎのむくみにつながります。ふくらはぎは「第2の心臓」ともいわれ、リンパ管にとってポンプのような役割を果たしているので、しっかりとほぐしましょう。

① 足裏が見えるようにあぐらをかいて座り、両手の親指を使って片足ずつ足裏全体をもみほぐします。
② 足の甲が見えるように座り直し、こちらも両手の親指で片足ずつもみほぐします。
③ 両手を足に添えるように、足首から膝の裏の膝下リンパ節までを片足ずつさすり上げます。

老廃物を膝下リンパ節に流し込むイメージで丁寧に行うと、ふくらはぎのむくみが改善されるだけでなく、下半身のリンパの流れが良くなります。

リンパを流すストレッチ

ここでは、下半身のリンパを流すストレッチをお伝えします。
仕事から帰宅して一息ついたころに行ってみてください。

① 床に仰向けに寝ます。
② 手のひらを床に向け、両腕を体の横に置いて力を抜きます。
③ 両脚を閉じてくっつけたら、膝を曲げて両脚を胸に引き寄せます。
④ 天井に向けて脚を伸ばします。この時、脚が床と垂直になるよう、腰から足先までを真っ直ぐに伸ばしましょう。
⑤ 膝の裏に両手を添え、へそを覗き込むように頭を持ちあげます。
⑥ この状態で10秒間キープします。

おわりに

リンパとむくみとの関係、リンパの流れを改善するマッサージやストレッチをご紹介しました。
自分でできるものばかりですので、ぜひ試してみてください。

また、たまにはサロンでマッサージを受けるのも、日頃のストレス解消につながり、専門家にきちんとリンパを流してもらえるので良いかもしれません。日頃から自宅でマッサージの習慣をつけておくことで、サロンに行った際の効果をますますアップさせることができるでしょう。
下半身の筋力アップも、むくみ解消には効果的なので、あわせて行うと、さらにすっきりとしたボディラインをかなえることができそうです!

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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