はじめに

「骨盤の歪み」というと、どのようなことを想像されるでしょうか。
骨盤は背骨の一番下にある三角形の仙骨とその両側にある大きな骨である腸骨から構成されます。3つの骨がくっついているので、つなぎ目の少しのずれから左右非対称になってしまったり、骨盤自体の傾きがその人の姿勢によって前後に変化します。ちょっとしたことですが、これが女性にとって大きな問題である妊娠や出産を左右することがあるのです。

骨盤が歪むと不妊になりやすいの?

子宮は骨盤の中に位置しており、周りにあるいくつもの靭帯によってあるべき場所に固定されています。そのため、本来左右対称である骨盤が歪むと、子宮の周りにある左右の靭帯の張力が対称でなくなり、子宮も左右どちらかに引っ張られるような形になります。その結果、子宮内膜の一部が薄くなるので、受精卵が着床しにくくなります。ほかにも、精子の通り道が歪んで通りにくくなったり、子宮の血流が悪くなって妊娠を維持しにくくなったりと妊娠に不向きな要素が多々でてきます。

また、骨盤の前後の傾きによって子宮口の向きも変化します。猫背姿勢の方に多い骨盤後傾の姿勢になると、本来体の後ろを向いているべき子宮口が下向きになり、受精卵が下に下りやすくなってしまいます。そういった点から、左右の歪みだけでなく姿勢不良も不妊につながってしまいます。

骨盤矯正は不妊に効果があるの?

上で述べたような理由から、骨盤の歪みを整えることで妊娠しやすい体を作ることができます。ただし、これはご自身とパートナーともに生殖器に不妊に関わる異常がない場合に限ります。

また、骨盤の歪みを整えることは不妊改善効果だけでなく、出産時に骨盤がスムーズに広がることで産道が広がりやすくなり、安産につながりますし、その結果生まれてくる赤ちゃんの体に対してかかるストレスが減ります。

さらには、出産後に骨盤の状態が元に戻りやすくなるため、産後の腰痛や内臓脱、失禁などのトラブルを減らすことにもつながります。

骨盤矯正で改善すべき歪みの原因は?

骨盤の歪みは日常生活の何気ない動作の蓄積で作られています。治療院や整体で骨盤の歪みを整えてもらうのはよいですが、歪みを作るような習慣を続けていれば、いずれ元の状態に戻ってしまいます。ですから、歪みの原因になる動作や習慣を知り、意識して少しでも減らすようにすることで、整えた骨盤の状態を維持することにつながり、そのような施術を受けていない場合でも少しずつ歪みを改善することが考えられます。

骨盤の歪みを作る動作としてわかりやすいものは、ショルダーバックやリュックサックをいつも同じ側の肩にかけることや、同じ側を上にして足を組む習慣があること、立っているときにいつも同じ側の足に体重が偏っていることなどがあります。これらは、気が付いたときにいつもと反対の足や手を使うようにして左右差をなくすことをこころがけるとよいでしょう。

仕事や趣味などでいつも同じ動作を繰り返したり、左右に偏った姿勢を取り続けることも歪みの原因となります。この場合は、なかなかそれ自体を回避することは難しいと思いますので、家に帰ってからこのあと述べるようなストレッチを行い、歪もうとする骨盤をこまめにリセットすることが大切です。

また左右非対称の動作以外にも、椅子に浅く座り背もたれにだらんと寄りかかる座り方は骨盤が後傾しますし、膝同士をくっつけて足先を外にだしてぺたっと座る座り方は骨盤が後傾するだけでなく、外向きに開く動作にもなります。骨盤を後傾させる姿勢は、前に述べたように受精卵が下に下りやすくなる姿勢になるので妊娠には不向きの動作と言えます。

そして、女性特有の出来事であり、骨盤にとって大切なのが産後のケアです。出産後数日すると、リラキシンという骨盤を緩めて開きやすくするホルモンの分泌が落ち着き、骨盤がしまり、固定され始めます。とはいえ、まだまだ骨盤が安定しない状態で負荷をかけるといつも以上に歪みやすくなってしまいます。ですから、産後はしっかりと骨盤ベルトなど補助のツールを使用し、生活習慣に気を付け、骨盤がよい状態で固まるようにこころがける必要があります。

自宅でできる骨盤矯正ストレッチ

骨盤矯正といっても、治療院や整体で行うよう施術のような一瞬の外力によって矯正することは、ご自分では難しいですし、痛みなどのリスクも伴うので、おすすめできません。
ここでは、過度な負担をかけずゆっくりマイペースで行うことのできる骨盤の整え方をご紹介します。

まず、膝を立てて仰向けに寝ます。そして左右にゆっくり膝を倒してみます。そのとき、多少なりとも倒しやすさが左右で異なるか、もしくは倒したときに骨盤が足についていくように浮いてしまう方があるかなどの左右差を確認します。
差があるとすれば、仙腸関節というお尻の上の方にある骨盤の動きや腰痛に大きく関与する関節の硬さや、骨盤周りの筋肉の硬さに左右差があって骨盤の動きを邪魔してしまっているということになります。
ですから、これが確認できたら、倒しにくい方を重点的に行い、最終的に左右差をあまり感じなくなるようになればよいと思います。ただし、一日で絶対左右差をなくそうとたくさんやりすぎてしまうと、腰や股関節周りが痛くなってくることも考えられますので、やりすぎには注意が必要です。

まとめ

不妊というと生殖器の異常が注目されがちですが、このように子宮を守っている骨盤のちょっとした歪みがこんなにも子宮に影響を与えているのです。不妊治療の1つとして、またずっと付き合っていくご自分の体の健康のために、是非骨盤の歪みについて今一度目を向けていただけたらと思います。

監修

・救急医、内科医 増田陽子

・救急医、内科医 増田陽子

専門分野 
微生物学、救急医療、老人医療

経歴
平成18年 Pittsburg State大学 生物学科微生物学・理学部生化化学 卒業
平成22 年 St. Methew School of Medicine 大学医学部 卒業
平成24年 Larkin Hospital勤務
平成26年 J.N.F Hospital 勤務

資格
日本医師資格
カリブ海医師資格
米国医師資格
・救急医、内科医 増田陽子

・救急医、内科医 増田陽子

専門分野 
微生物学、救急医療、老人医療

経歴
平成18年 Pittsburg State大学 生物学科微生物学・理学部生化化学 卒業
平成22 年 St. Methew School of Medicine 大学医学部 卒業
平成24年 Larkin Hospital勤務
平成26年 J.N.F Hospital 勤務

資格
日本医師資格
カリブ海医師資格
米国医師資格

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