はじめに

慢性疲労の要因は複数あります。今回は基本的な慢性疲労の起こるメカニズムを理解していただき、その中で「食事での解消法」と「運動での解消法」更に、最近の研究をもとにした「日常で出来るちょっとした解消法」について説明して聞きます。

慢性疲労とは

「疲労」とは日常的に経験する発熱、痛みと共に身体のホメオスタシス(体内の環境を一定に保つ体の機能)の乱れを知らせるアラーム機能の一つです。疲労についての研究は歴史が浅くそのメカニズムについては、近年ようやくわかってきました。

「疲労」の定義は、「過度の肉体的および精神的な活動、または疾病によって生じた独特の不快感と休養の願望を伴う身体の活動能力の減退状態」です。

今回は疾病以外の「過度の肉体的および精神的な活動」による疲労が慢性的になった「慢性疲労」にフォーカスしていきます。

ストレス過多の現代社会では慢性疲労に悩んでいる人が40%近くいると言われています。是非、慢性疲労を予防改善して人生のクオリティーを上げていきましょう。

慢性疲労の原因は?

・脳内の「活性酸素」

疲労の原因は従来、筋肉に蓄積した乳酸と考えられてきました。しかし、近年は疲労についてのメカニズムが解明されてきて最も大きな要因は「活性酸素」だと分かりました。

実は疲れた時の脳内の変化をみると、視床下部や前部帯状回といわれる自律神経の中枢領域が疲労していることが分かったのです。この領域は心拍数を上げる、呼吸を早くする、体温調節、汗をかくなど生命維持装置があります。また、交感神経と副交感神経の調整もしています。

この視床下部や前部帯状回に活性酸素が蓄積すると、活性酸素が細胞を傷つけます。すると、細胞機能が低下して疲労を生み出します。また、損傷した細胞から出た老廃物により疲労因子という物質が放出されウイルスが活性化します。すると免疫が働き、その働きが脳に報告されて更に疲労を感じるようです。

このメカニズムで脳内の発生した活性酸素が慢性疲労の要因です。この活性酸素がによる細胞の損傷がなくなり、細胞が修復されない限りは寝ても疲れが取れないのです。

ちなみに、筋肉疲労の指標となる物質を調べると、かなりの強度の高い運動をしないと筋肉疲労が発生しないことがわかりました。という事は、肉体労働でない普通の生活をしている人が筋疲労で慢性的な疲労になる確率は非常に低いのです。

慢性疲労の解消法~運動で解消~

慢性疲労の解消におすすめなのは、負荷の高い運動を20分程度、週1~2回程度する事です。筋肉をある程度の高負荷で運動させると「マイオカイン」という物質が分泌されます。これは、炎症を抑える物質です。炎症を抑える事は活性酸素の除去にもつながります。また、筋力トレーニングにより成長ホルモンの分泌も促されるために損傷した細胞の修復が活発になります。

注意点は長時間の高負荷の運動を避けることです。高負荷の運動を長時間続けてしまうと、活性酸素が大量に発生するため体の老化が早く進んでしまいます。特にマラソンのような長時間に及ぶ高負荷な運動は慢性疲労や老化の要因になるため避けた方が良いでしょう。

運動初心者は、小さい筋肉から筋トレを始めると良いです。お勧めの種目は「アームカール」「サイドレイズ」「腕立て伏せ」です。10回から20回程度で限界がくる負荷を1セットとして、3セット行いましょう。インターバルは40秒から1分と短めにしましょう。運動上級者は40分程度の運動も可能だと思いますが、週3回程度にしてください。毎日の運動は必要以上の活性酸素を生み出し慢性疲労の要因になる可能性もあります。

慢性疲労の解消法~食事で解消~

1・鶏肉や野菜を食べる。

自律神経の中枢である視床下部での活性酸素が慢性疲労の要因です。この自律神経の中枢に働きかけて活性酸素を分解する物質の一つに「イミダペプチド」という物質があります。

特に渡り鳥の羽の付け根の筋肉に含まれています。「イミダペプチド」はカテキンやポリフェノールよりは抗酸化力は低いのですが、活性酸素に対する作用が長続きするため、慢性疲労に効果を発揮しやすいのです。渡り鳥を食べる事は難しいですが、鶏肉の胸肉や手羽元を日頃から食べる事は可能ですから慢性疲労を感じている人は是非積極的に食べたいところです。

しかし、この「イミダペプチド」は最も力を発揮するのは摂取開始してから継続して摂取して2週間以降です。そのため、食べ方に工夫が必要です。毎日メインメニューが鶏肉では飽きてしまいます。最もお勧めの食べ方がスープです。スープなら飽きずに継続して食べやすく、作り置きすることも可能です。

また、スープに野菜を色々な種類を入れる事で、野菜に含まれる抗酸化作用のあるビタミンC、βカロテン、ビタミンEも摂取できるので、慢性疲労に効果を発揮します。簡単なレシピは下記の通りです。野菜や調味料は慢性疲労に効果的な物を選んであります。分量はお好みで調節してください。

「最高のサプリスープ」
材料
・胸肉
・トマト
・人参
・オクラ
・サツマイモ
・キャベツ
・パプリカ
・バジル
(お好みで野菜を変えてもOK)
調味料
・天日塩
・コショウ
(お好みでコンソメを入れるのもOK)

2・疲れた時の「甘いもの」をやめる。

疲れた時に甘いものを食べると疲れが取れると思っている人が多いと思います。しかし、実際は逆で疲れを増大させてしまいます。

甘いものを食べると、急激に血糖値が上がります。すると血液の糖質を下げるために膵臓からインシュリンというホルモンが急激に放出されます。そうすると、今度は必要以上に血糖値が下がるため、アドレナリンなどの興奮剤のホルモンが放出され血糖値を上昇させます。

このアドレナリンなど血糖値を上げるホルモンは交感神経を必要以上に興奮させるため、視床下部で活性酸素を発生させやすくなります。また、砂糖は体内を弱アルカリ性から酸性に傾かせるために、逆に活性酸素を増やしてしまいます。

3・食べ過ぎをやめて、「MCTオイル」で慢性疲労を撃退

実は食べ物を食べて消化するのには大量のエネルギーを消費します。慢性的な疲れがあると食べてエネルギーを増やそうとする人がいますが、消化にもエネルギーが必要なのでそれが逆効果になることがあります。

そんな時は、消化にエネルギーを使わず吸収されやすい食事が必要です。一番おすすめなのは「MCTオイル」です。MCTオイルは中鎖脂肪酸で脂質の中ではすぐに体内でケトン体という物質に変わってくれます。ケトン体は上質なエネルギーになります。糖質や蛋白質でエネルギーを摂取するより、エネルギー効率が非常に良いのですし、ダイエットやアルツハイマー病の予防にも役立ってくれます。

お勧めの「MCTオイル」の摂取のしかたは、朝食にコヒーや紅茶に「MCTオイル」を入れて飲むことです。朝食は「MCTオイル」と飲み物だけがケトン体を出すために理想的です。どうしても他になにか食べたいようであれば、サラダなど軽い食事にしましょう。また、午前中にお腹がすいたら「MCTオイル」を適当な飲み物に加えて飲みましょう。この時の飲み物は、野菜ジュースなど糖質が高いものは避けた方が良いでしょう。

また、「MCTオイル」を摂取し始めた初期ではお腹が緩くなる人もいるのではじめは少しずつ飲んで、慣れたら大さじ4杯くらい摂取するのが理想的です。

慢性疲労の予防

1・マイクロスリープで慢性疲労を予防

20~30分のマイクロスリープで能力が睡眠前よりも34%向上するとの研究がNASAの研究で明らかになっています。昼に眠気が来て一瞬だけ意識が飛んで「カクン」となるをマイクロスリープといい、脳が瞬間的に脳を眠らせて脳を休ませようとしている身体作用です。

このマイクロスリープはセロトニンやドーパミンを正常レベルの分泌に戻してくれます。また、脳の老廃物は睡眠時に除去されることからも20~30分のマイクロスリープを積極的に生活に取り入れていきましょう。

2・睡眠の質を向上させる

人はミトコンドリアを使って脳の老廃物を除去するシステムが備わっています。特に睡眠中に活発にミトコンドリアが脳内の老廃物を除去してくれます。これが睡眠による疲労回復のメカニズムでもあるのですが、睡眠の質が悪いと、この脳内の活性酸素を含めた老廃物の除去が行き届かずに慢性疲労の原因となります。

慢性的な疲労を感じたら、睡眠の質が悪くないかチェックしましょう。また、先程説明した朝食を「MCTオイル」と飲み物だけに替えてエネルギーをケトン体に替える事でも睡眠の質は向上します。

3・姿勢を良くすることでストレスホルモンを減らす

視床下部の活性酸素を生み出す要因の1つにストレスがあります。そこでストレスを減らすために普段の姿勢を変えるだけでストレスホルモンを減らすことが出来ます。

アゴを軽く引き、お尻を引き締め、少しお腹を出し、胸を張った姿勢でいるだけで、ストレスホルモンであるコルチゾールが低下するのです。姿勢を良くすることは腰痛や肩こりの予防にもつながります。普段の姿勢を少し変えるだけでも慢性疲労の予防につながります。

おわりに

実は、動物に過労死はありません。疲労感は生体を防御するための機能だからだす。ところが人間は前頭葉の発達したために、ドーパミンやβ‐エンドロフィンといた興奮物質により自分自身をだましてしまう事が可能になりました。そのために疲れていても疲労感を持つことができない事があるのです。今現在、慢性疲労を感じている人も、そうでない人も日々の習慣に慢性疲労を予防、改善する方法を取り入れて自分自身を守ってください。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野 
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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