内転筋とは

『内転筋』とは、関節が内転(腕や脚を胴体方向に閉じる動作)をするために収縮する筋肉のことを指します。
専門的には、肩関節なども含まれますが、一般には、太ももの内側にある筋肉群のことを言うことが多いです。『恥骨筋』、『長・短内転筋』、『薄筋』、『大内転筋』など、太もも内転筋は、複数の筋肉で構成されています。

脚を開いた状態から閉じる動作を主に行っていますが、それだけでなく、股関節の全ての運動に関わっています。
股関節の運動を安定かつスムーズに行ったり、良い姿勢を維持したりする役割も持っています。

内転筋を鍛える4つのメリット

1. 脂肪燃焼・セルライト予防

女性は皮下脂肪の比重が高く、下腹、太もも、お尻に皮下脂肪がつきやすいのは、皆さんもご存知だと思います。脂肪が付きやすい部分は、セルライトも発生しやすい場所となります。
一度セルライトができると、なかなか元に戻らないので、そうなる前に、脂肪を撃退することが重要です。内転筋を鍛えることで、基礎代謝をあげつつ、太ももの脂肪を撃退することが期待できます。

2. 太もものスタイルアップ

太腿の内側に脂肪が付くと、たるんで座った時などに脂肪が押し出され、必要以上に太ももが太く見えてしまいます。
内転筋を鍛えてたるみをなくすことで、立った姿勢はもちろん、座った時にも太ももが細く見えます。

3. 運動パフォーマンスの向上

内転筋群は股関節まわりの他の筋肉とともに、歩行やスクワットなどの動作の時に、骨盤を安定させる役割を担っています。
そのため、内転筋を鍛えることで、より重量の重いスクワットが行えたり、マラソンなどでは走行距離やスピードアップにつながったりします。

4. 姿勢の改善

立位でも座位でも、良い姿勢にするには、骨盤が軽く前傾していることが大切です。骨盤が前傾すると、お尻が持ち上がり、背筋が伸びます。逆に、悪い姿勢では、骨盤が後傾して尻が後ろに落ち、猫背の状態になります。
骨盤の前傾位を保つには、俗に背筋と呼ばれる『脊柱起立筋群』や、太腿の前にある『大腿直筋』と、内転筋群がしっかり働かないといけません。そのため、内転筋を鍛えることは良い姿勢作りにつながります。

内転筋の筋トレ

1. ワイドスタンススクワット

① 脚幅を肩幅よりも広くして立ち、つま先を外に向けてがに股になります。
② 胸を張って背筋を伸ばし、手を前で組むか、真っすぐ前方に伸ばします。
③ 息を吐きながら、お尻をゆっくりと下ろしていきます。
④ 限界まで下げたら、少しだけその状態を維持します。この時に多少、体幹が前傾姿勢になっても構いません。
⑤ 息を吸いながら素早く最初の姿勢に戻していきます。この時、広がった股を閉じるように意識すると、内転筋がしっかりと収縮してくれます。
⑥ お尻を下ろして上げる動作を1回とし、20回×3セットを目安に行いましょう。

立ち上がる動作の時に息を吐くようにすると、心臓への負担軽減や腰痛(伸展型)の予防につながります。
また、膝をつま先よりも前に出さないことも大切です。膝が出過ぎると、ケガにもつながる恐れがあるため、必ず確認しながらトレーニングしていきましょう。

最初は自重で行い、物足りなくなったら、水を入れたペットボトルやダンベルなどを使い、負荷をプラスしていきます。セット間に1~3分間程度のインターバルを入るなどして、無理のないように行いましょう。

2. サイドランジ

① 足を大きく左右に開き、背すじを真っ直ぐに伸ばして立ちます。
② 上の写真のように片側の脚を曲げ、曲げた脚側に体重を乗せながら、腰を下ろしていきます。
③ 曲げた方の脚の太ももが床と並行になるまで下げたら、伸ばした方の脚で身体を引き寄せるようにして元に戻します。
④ 身体を元に戻したら、反対側の脚を曲げ、逆側も同様に行います。
⑤ 片側の脚を曲げて伸ばす動作を1回とし、左右10回ずつ×3セットを目安に行います。

低い姿勢から元の姿勢に戻る時、股を閉じるように力を入れると、より高いトレーニング効果が得られます。
セット間に1~3分間程度のインターバルを入れ、無理のないように行いましょう。
また、足が滑るような場所では行いにくいので、床が滑る場合は、裸足でやるなど、工夫してください。

3. レッグスクイーズ

レッグスクイーズは、バランスボールを使って行うと効果的です。バランスボールがない場合は、サッカーボールや大きめのクッションなどで代用が可能です。

① 仰向けで寝てバランスボールを両足で挟みます。
② バランスボールを強く挟みながら、地面から軽く両脚を浮かせます。
③ バランスボールが落ちないようにゆっくりと両脚の力を緩めます。
④ バランスボールを強く挟んで緩める動作を1回とし、20回×3セット行います。

内転筋のストレッチ

1. 四股(しこ)ストレッチ

① 写真のように脚を大きく開き、膝が90度くらいになるように曲げます。
② 両脚のつま先を外側に向けて、がに股の状態にします。
③ 膝に両手を置き、相撲の『四股(しこ)』の姿勢をとります。
④ 右の肩を内側に入れ、右手で脚を軽く押しながら、上半身をひねっていきます。
⑤ この状態を20~60秒間キープし、内転筋がストレッチされているのを感じましょう。

脚を開く姿勢がつらい場合は、椅子に座って行いましょう。

2. 開脚ストレッチ

① 床に座って開脚します。この時、無理に開こうとせず、自然にできる範囲で開脚します。
② 重力に任せて自然に上半身を前方に倒していきます。
③ 自然な呼吸を続けながら、この姿勢を20~60秒間維持します。

3. 寝ながら開脚ストレッチ

① 壁の前で仰向けになり、お尻を壁に当て、両脚を壁に沿って持ち上げます。
② 膝を伸ばし、重力を使って自然に開脚します。この時、できる限り体をリラックスさせ、力を抜くように心がけましょう。
③ 自然な呼吸を続けながら、この姿勢を20~60秒間維持します。

おわりに

内転筋の構造や働き、筋トレ・ストレッチの方法をお伝えしました。
内転筋には、股関節の運動を安定させたり、姿勢を安定させたりする働きがあります。この「安定させる作用」により、ダイエットや筋トレがより効果的に行えるようになります。

筋トレ初心者がいきなり大きな筋肉のトレーニングをすると挫折しやすいですが、小さな筋肉が集まった内転筋の筋トレは、初心者でも辛いと感じずに続けられると思います。内転筋のトレーニングから始め、筋肉が安定してきたら、さまざまなトレーニングにチャレンジしてみると良いでしょう。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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