はじめに

子供の肥満に関心を持っていますか?

子供の肥満は親も一緒に向き合う必要があります。
子供の肥満の原因や改善方法を知って自分のお子さんの健康を守りましょう。

また、現在お子さんが肥満でない場合も、きちんと予防法を知っておきましょう!

肥満の定義

子供の場合も大人の場合も、身長と体重のバランスから肥満度を表すことができます。ただし、子供の場合は年齢によって3つの指標に分かれているため注意しましょう。BMIだけは身長はメートルを、他の2つはセンチメートルを使用します。

1)高校生以上はBMI

高校生以上の年齢になると、大人と同じBMI(Body Mass Index)という指標を用います。
BMIの計算式は、体重(kg)÷身重(m)2です。

適正体重はBMIが22です。この体重が生活習慣病や骨粗鬆症など様々な疾患のリスクが最も低くなり、平均寿命が長くなる体重だと言われています。BMI25.0以上が肥満、BMI18.5から24.9が標準、BMI18.4以下はやせです。

ちなみに肥満の程度は、BMI25.0から29.9は肥満(Ⅰ度)、BMI30.0から34.9は肥満(Ⅱ度)、BMI35.0から39.9は肥満(Ⅲ度)、 BMI40.0以上は肥満(Ⅳ度)となります。

2)小学生から中学生はローレル指数

小学生と中学生ではローレル指数という指標を用います。
計算式は、体重(kg)÷身重(cm)3×10000000です。

99以下はやせ、100から114はやせ気味、115から144は正常、145から159は肥満気味、160以上は肥満になります。

3)小学生未満の乳幼児はカウプ指数

乳児(ただし生後3ヶ月頃から)から幼児の場合は、カウプ指数という指標を用います。
乳児体重(kg)÷身重(cm)2×10000です。

12.9以下はやせ、13.0から14.9はやせ気味、15.0から17.9は正常、18.0から19.9は肥満気味、20.0以上は肥満になります。

子供の肥満は増えているのか

1)身長と体重の推移

文部科学省が毎年実施している学校保健統計調査というものがあります。この調査は5歳から17歳までの男女が対象となります。この調査によれば、身長については昭和23年度以降、男女共に肥満が増加傾向にありました。しかし、平成6年度から平成13年度頃にピークを迎えてからは、横ばい傾向となっています。体重についても昭和23年度以降、男女共に増加傾向にありました。しかし、平成10年度から平成18年度頃にピークを迎えてからは、減少か横ばい傾向となっています。

2)男女の肥満傾向児の推移

実は、子供の肥満傾向児の出現率(肥満度20%の者の割合)は平成18年度から減少傾向になり、平成23年度以降は横ばい傾向(高止まり傾向)にあります。

平成26年度の男児の肥満傾向児出現率は5歳で2.55%、11歳で10.28%、14歳で8.16%、17歳で10.69%となっています。また、平成26年度の女児の肥満傾向児の出現率は5歳で2.69%、11歳で8.56%、14歳で7.68%、17歳で8.25%となっています。

この他、男児は女児よりも肥満傾向児の出現率はやや高い傾向にあります。地域別に見ると、東北地方の子供は他の地域に比べて肥満傾向児が多い傾向にあります。

子供の肥満の原因

1)食習慣に関するもの

(1)おやつのカロリーが高い

子供は胃の内容量が少ないため、一度にたくさんの量を摂ることができず、間食で1日に必要なカロリーを補う必要があります。しかし、間食として与えるおやつが糖質や脂質の多いもの(スナック菓子など)である場合は、カロリーを摂りすぎてしまうことがあります。また、喉が乾いたときに砂糖を多く含む飲料(清涼飲料水、炭酸飲料など)を与えるのも、カロリーを摂りすぎてしまったり、虫歯の原因にもなるため注意しましょう。


(2)栄養バランスが偏っている

外食を利用する機会が多いと、糖質・脂質の摂り過ぎ、ビタミンやミネラルの不足、塩分の摂り過ぎにつながります。味の濃いものやこってりした食べ物に慣れてしまうと、普段の食事が進まなくなってしまい、ますます栄養バランスが偏るといった悪循環に陥ってしまいます。


(3)欠食・夜食・早食いなどがある

朝食を食べない、夜遅くに食べる、早食いをするといった食習慣は大人同様肥満につながります。朝食を抜くなどして絶食時間が長くなると、食事をした際に栄養分が吸収されるスピードが早くなります。すると、同じ量を食べていても血糖値の急上昇を招いたり、体重増加につながってしまいます。 

また、夕食を食べた後にすぐ眠ってしまうと、日中のように栄養分が筋肉などで消費されないため、血糖値が下がりにくく、体重増加につながります。また、起床後の空腹感が乏しくなるため、朝食を抜くという悪循環を招きます。

そして早食いは、食事摂取後の血糖値の急上昇、必要以上に食べ過ぎるということにつながります。通常、胃に食物が入り、その刺激が脳に伝わって満腹中枢が刺激される(満腹感を得る)には20分程度の時間が必要になります。しかし、それよりも短い時間の間にどんどん食事を摂取してしまうと、自分が満腹感を得られる量よりも多くの食事を摂取することになります。

2)運動習慣に関するもの

(1)体を動かす遊びをしない

特に都市部に住む子供は、様々な事情によって公園などの外遊びをすることが難しくなっています。また、遊ぶ場所や時間が確保できても、座って携帯型のゲームに熱中してしまうと、活動量が少なく、体重増加につながります。


(2)車移動が多い

東北地方の子供に肥満傾向児の出現率が高い理由の一つとして、車移動が多い(歩く機会が少ない)ことが考えられます。登下校はバス通学、習い事には親の車で送迎、休日の外出は車移動といったことが重なれば、日常生活における消費カロリーは低くなってしまいます。


(3)塾などの習い事で運動する時間が持てない

少子化によって、1人の子供にかけられる(かけなければいけない)お金は数十年前に比べれば増えているでしょう。一人でいくつもの習い事をしている子供は珍しくありません。スイミングやサッカークラブなどスポーツ系の習い事をしていれば、そこで体を動かすことができます。しかし、学習塾、書道、楽器演奏といった文化系の習い事のみだった場合は、消費カロリーをアップすることは難しいです。


(4)家で体を動かす機会が少ない

スポーツでなくても、掃除や片付けといった日常生活動作でもこまめに消費カロリーをアップすることは可能です。家でこういったお手伝いをする機会が少ない場合は、見直してみるのも一つです。

3)睡眠不足

(1)睡眠不足の子供は増加傾向にある

子供は大人よりも多くの睡眠時間を必要とします。年代別の理想的な睡眠時間は、3歳の以下の乳幼児では12時間から14時間、4歳から6歳の幼児では10時間から13時間、7歳から12歳の小学生に当たる年齢では10時間から11時間、13歳から18歳の中・高校生に当たる年齢では8時間から9時間と言われています。

乳幼児の場合、朝7時頃に起床しようとすると、夜18時から21時頃までには就寝しなくてはいけません。しかし、ある調査によれば、夜22時以降に寝る1歳から3歳児の数が増加傾向にあると言います。


(2)睡眠不足はホルモンバランスを乱して食べ過ぎや高血糖招く

睡眠不足になると、食欲を抑える働きのあるレプチンというホルモンの分泌量が減り、反対に食欲を増進させる働きのあるグレリンというホルモンの分泌量が増えます。つまり相乗効果によって食欲が抑えられなくなります。

また、睡眠不足は血糖値を下げる働きのあるインスリンというホルモンの分泌量が減り、血糖値が高くなります。このように、睡眠不足は体内の様々なホルモンバランスを乱してしまい、食べ過ぎや高血糖につながります。

子供の肥満は何が問題なのか

では、子供の肥満は何が問題なのでしょうか。ここでは、3つの問題点についてまとめます。

1)生活習慣病のリスクが高くなる

子供の肥満は将来の高血圧、脂質異常症、糖尿病のリスクを高め、命に関わる心筋梗塞や脳梗塞といった生活習慣病につながる可能性があります。ある調査によれば、子供の頃から肥満があった人がそのまま大人になった場合、大人になってから肥満になった人に比べて心疾患による死亡率が高いと言うデータがあります。

2)太りやすい体質・やせにくい体質を作ってしまう

肥満に関わる脂肪細胞(※)が増えやすい時期は、大きく分けて3つあると言います。胎児期(お母さんのお腹の中にいるとき)、乳児期(生後1年未満)そして思春期です。こういった時期に必要以上にエネルギーを摂取すると、脂肪細胞の数自体が増えます。(ちなみに大人になってから肥満になった場合は、脂肪細胞の数自体が増えることはあまりなく、脂肪細胞の大きさが増大して肥満になります。)

子供が肥満になるということは、脂肪細胞の数も大きさも増大することになります。すると、いざ減量をしようと思っても一度増えてしまった脂肪細胞の数は減ることはないため、他の人に比べて痩せにくく、太りやすい体質となってしまいます。

※脂肪細胞とは、エネルギーとして使われずに余った場合に中性脂肪として体内に貯蔵しておく細胞です。アディポネクチンやレプチンなど様々なホルモンを分泌します。小さな脂肪細胞は体によって良い働きをもたらす善玉ホルモンを分泌してくれます。しかし、肥満が進行した大きな脂肪細胞は体にとって悪い働きをもたらす悪玉ホルモンを多く分泌するようになります。

3)運動が苦手になりやすい

筋肉量に対して脂肪量が多くなると、そうでない子供に比べ持久力に乏しい、瞬発力がない、跳躍力がないといった基本的な運動能力に悪影響を与えることが多いです。他の子と同じようにできないという思いから、運動することに苦手意識を持つことも多くなります。すると、ますます運動が億劫になって運動量が低下し、肥満につながることになります。

4)いじめの標的になることもある

太っているという外見上の特徴から、「デブ」などの酷い言葉を浴びせられることがあります。始めはからかい程度でもエスカレートするといじめになります。精神的ストレスから不登校になる可能性もあります。また、直接言葉をかけられることはなくても、体型がコンプレックスになり、劣等感から自分に自信が持てなくなる可能性もあります。

子供の肥満の予防・改善法

最後に子供の肥満を予防・改善するための方法についてまとめます。また、肥満を予防・改善するために、親や普段世話をする大人が子供の肥満に関する知識や関心を持つことが大切です。

1)食生活の見直し

(1)おやつ

高カロリーなスナック菓子を与えすぎないようにしましょう。家にストックがあると大人でも我慢することが難しいものです。ストックを置かない、目の届かない所にしまうなど対策を取りましょう。

グズったらすぐおやつを与える、何かのご褒美としておやつを与えるということが習慣化している場合は改善が必要です。砂糖の摂り過ぎは急激な高血糖後の低血糖(血糖値スパイク)を招き、イライラなどの精神不安定、何もする気がおきないといった症状が現れます。


(2)ジュース

水分補給がいつも清涼飲料水や炭酸飲料なのは見直しが必要です。水、お茶(カフェインが気になる場合は麦茶がお勧めです)を中心としましょう。スポーツドリンクには意外に糖分が多く含まれているため、スポーツ以外の場面で多量に摂取するのは控えましょう。


(3)外食の頻度

ファーストフードなど高カロリー・高脂肪な外食の頻度が高い場合は、利用頻度を落としましょう。また、可能であれば外食先で単品料理よりも品数の多いメニューを選択することで、栄養バランスを取ることができます。


(4)食べる時間帯

夜遅い時間帯に夕食を取っている場合は、寝る3時間前までに摂るようにご飯の時間を変更しましょう。また、朝はパン1枚に野菜スープだけでも良いので、何かしら胃に食物を入れるようにしましょう。


(5)親自身が太る食習慣をしていないか見直す

親やその他の主たる養育者が夜食、早食い、ながら食い、高カロリーな間食が習慣化していると、子供だけに改善を求めるのは難しいものです。子供のお手本になるように親自身が食習慣を見直し、改めるようにしましょう。

2)運動量を増やす

(1)体を使った遊び

近所に無料もしくは低額で利用できる体育館や公園などがあればそこを利用するのも一つです。あまりスペースを使わず、一人で遊ぶ場合は縄跳びやフラフープなどがお勧めです。また、最近は体育にダンスが必須科目として導入されているため、自宅で音楽に合わせて家族でダンスを楽しむのもストレス解消になって良いかもしれません。


(2)運動系の習い事

前述したようにスイミングなどの運動系の習い事を始めるのも一つです。スイミングの場合は、体重の多さが運動に与える影響も少なく、体育でも導入している学校が多いため、一石二鳥と言えます。


(3)親と一緒に体を動かす

親と一緒に散歩やジョギングに出かけ、その際に親子の会話を楽しむのも良いでしょう。また、掃除や片付けといった体を使う家のお手伝いをお願いするのも一つです。食生活と同様、親自身が家でダラダラしている場合は、子供のお手本となれるように普段の運動習慣を見直しましょう。

3)十分な睡眠時間を確保する

年齢が低いほど早く寝せるようにする

前述したように子供は低年齢なほど必要とされる睡眠時間は長くなります。3歳以下の子供であれば12時間から14時間も必要となるため、お昼頃に昼寝を挟み、夜21までには寝るようにしましょう。夜スムーズに眠りに入るためには、1時間前までに入浴を終える、午後に体を動かす、朝は太陽の光を浴びることが大切だと言われています。また、テレビやゲームなど脳を興奮させるものは、寝る1時間前までに終えるようにしましょう。

4)子供との関わりを増やしてストレスコントロール

いじめほどの強いストレスでなくても、親など重要他者との接する時間が少ないといった寂しさを紛らわすために食に走るケースもあります。これまで挙げてきた食習慣・運動習慣・睡眠習慣を改善しても、食べることに対する執着が強い場合は、何からの精神的ストレスを抱えている可能性も視野に入れた方が良いでしょう。

ちなみに、子供のうつ病は大人とは異なり、かえって食欲が増して過食になる傾向があります。子供と関わる・会話する時間を増やす、子供に関心を向ける(親が関心を向ける精神的余裕を持つ)ことが大切です。

終わりに

いかがでしたか?子供の肥満について理解していただけたでしょうか?

冒頭でも述べたように、子供の肥満には親の関心・対応が密接に関わっています。
大切なお子さんが肥満にならないよう、また、肥満を改善できるように親もしっかり対応しましょう。

 監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野 
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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