はじめに

みなさんは自分の基礎体温を継続的に測っていますか?
「基礎体温なんて面倒で測っていない…」というかたもいるのではないでしょうか?
また、基礎体温を測っているという方でも、測るタイミングや場所など正しく測定できているでしょうか?

正しく基礎体温を測ることには様々なメリットがあるのです。
今回は、そんな基礎体温について詳しく説明していきます。

基礎体温とは

基礎体温とは、起床後すぐ横になったままの状態(安静にした状態)で測定される体温のことです。

成人期の女性は、排卵日を境に基礎体温が周期的に変化します。月経終了日から排卵日までを低温期(または卵胞期)と言い、排卵日から次の月経開始日までを高温期(または黄体期)と言います。相対的に低温期の基礎体温は低く、高温期の基礎体温は高くなります。

このような周期的な変化は、エストロゲン(卵胞ホルモン)やプロゲステロン(黄体ホルモン)などの女性ホルモンの働きによって現れます。毎日基礎体温を測定することで、排卵日や排卵の有無、月経時期、妊娠しやすい時期などを知ることができます。

基礎体温を測る意味(6つのメリット)

ここでは、基礎体温を測定することによるメリットをいつくか説明します。

1)月経予定日を知ることができる

月経は排卵後14日前後で始まります。つまり、高温期が続く期間も14日前後ということです。基礎体温を測定して、はっきりと低温期と高温期に分かれている人であれば次の月経予定日が把握できるため、旅行等の予定に役立てることができます。

2)排卵日や妊娠しやすい時期を知ることができる

低温期と高温期の境目になる日が排卵日になります。排卵日の3日から4日前、及び排卵日の1日から2日後の期間(つまり4日から6日間)は、妊娠しやすい時期に当たります。したがって、基礎体温を測ることで妊娠しやすい時期を把握できるため、家族計画に役立てることができます。

3)自分の体調を知る目安になる

実は、低温期と高温期ではホルモンバランスによって、体調が大きく異なります。

低温期はエストロゲン(卵胞ホルモン)の影響を受け、一言で言うと体調の良い時期です。肌の調子が良く、気分や意欲が向上し、脂肪燃焼もしやすいためダイエットに向いている時期です。

これに対して高温期はプロゲステロン(黄体ホルモン)の影響を受けるため、体調が良くない時期になります。ニキビなどの肌トラブル、むくみ(水分を溜め込みやすくなるため)、食欲が旺盛になりやすい、感情が不安定になる(落ち込みやすい、イライラしやすいなど)などが現れます。

基礎体温を測定して、低温期に当たるのか、高温期に当たるのかを予め把握しておくと、心身の不調に対して心の準備ができ、ダイエットの計画を立てるのにも役立ちます。

4)婦人科疾患の早期発見につながる

(1)無排卵月経の早期発見
低温期と高温期の体温の差は、0.3℃から0.5℃あります。この差がほとんどなく、低体温期のまま月経がある場合は、無排卵月経(排卵がないのに月経がある状態)である可能性があります。これは、何らかの原因によって、プロゲステロン(黄体ホルモン)が分泌されていないために起こります。

(2)黄体機能不全の早期発見
高温期の期間は11日から15日間です。これが9日以下になると、プロゲステロン(黄体ホルモン)の働きが十分ではなく、黄体機能不全という病気の可能性があります。

5)妊娠の早期発見につながる

妊娠期間中は、体温の高い状態が16日以上続くという特徴があります。したがって、月経予定日になっても基礎体温が下がらない場合は、妊娠している可能性があります。市販の妊娠検査薬で妊娠反応が陽性になるのは、妊娠4週から5週目以降とされています。これより前の段階では、妊娠していても陽性反応が出ないため、基礎体温はより早く、無料で妊娠の可能性をチェックできる方法と言えます。

6)更年期を知る目安になる

閉経を迎える年齢は個人差があるものの、平均で50歳頃と言われています。その前後5年くらい、つまり45歳から55歳頃の時期を更年期と言い、卵巣の機能が徐々に衰えていく期間です。更年期になると、始めは低温期が短くなります。それによって月経周期が短くなるため、頻繁に月経が来るようになります(頻発月経)。

そして、徐々に高温期も短くなり、高温期がなくなり(つまり低温期が続く)、閉経を迎えます。基礎体温を測定してこのような自然な体の変化を予め知っておくことは、自分で更年期に対する対策を取ることができます。それによって、更年期症状を軽減することにもつながると言われています。

基礎体温の正しい測り方

ここでは、基礎体温の正しい測定方法についてポイントをまとめます。

1)婦人体温計で測定する

通常の体温計は0.1℃刻みで体温が計測されます。しかし、婦人体温計はより細かく0.01℃刻みで計測することができます。基礎体温という微妙な体温の変化を把握するためには、婦人体温計が適しているため、婦人体温計で計測するようにしましょう。2,000円前後で購入できるものが多いです。

2)舌下で測定する

体温測定といえば、脇の下や耳で測定する人が多いのではないでしょうか。基礎体温は口腔(こうくう)内の温度を測るため、舌の下に婦人体温計をくわえるようにします。グラグラしないように、口を閉じ、唇で上手く固定しましょう(手を添えても良いでしょう)。

3)起床後すぐ、横になった状態で測定する

起床後、トイレや洗面所に行ったりすると体を動かすことになるため、正確な基礎体温を測ることができません。そこで、婦人体温計は枕の横などの手の届くところに置いておき、布団から起き上がる前に測定するように習慣づけましょう。

4)毎朝同じ時間に測定する

基礎体温を測定する条件が一定になるように、なるべく同じ時間に測るようにしましょう。(起床時刻がずれてしまった場合も、体温を測定し、その時刻をメモしておくと良いでしょう。)

正常・異常な基礎体温

1)正常な基礎体温とは

(1)低温期と高温期の差は0.3℃から0.5℃で2層性

冒頭でも触れましたが、正常な基礎体温は月経後から排卵日までの低温期、排卵日から次の月経開始までの高温期の2つの時期に分かれます。個人差はありますが、低温期と高温期の差は0.3℃から0.5℃くらいになります。こうした基礎体温の変化をグラフ化すると、排卵日を堺にはっきりと2層性になります。


(2)高温期は11日から15日間

月経周期(月経開始日から次の月経開始日の前日まで)は25日から38日と人によって開きがあります。これは低温期(卵胞期)の長さが人によって異なるためです。しかし、高温期(黄体期)は14日前後(およそ11日から15日)で一定になります。

2)異常な基礎体温とは

ここでは、異常な基礎体温の代表例を紹介します。異常な基礎体温が何ヶ月も続く場合は、婦人科疾患が背景にあったり、将来不妊症の原因となります。基礎体温を記録したものを持参して、近所の婦人科を受診するようにしましょう。


(1)2層性になっていないタイプ

通常基礎体温は、排卵日を堺に低温期と高温期の2層性となります。しかし、排卵がない場合は2層性にはならず、平坦なまま(低温期と高温期の差が0.3℃未満)になります。このタイプの基礎体温の人は、無排卵月経である可能性があります。無排卵月経とは月経はあるものの、排卵が見られないケースです。排卵がなければ妊娠はできません。また、無排卵月経の場合は、これといった自覚症状がないため、基礎体温を測定することが早期発見につながります。


(2)月経中も高温期が続くタイプ

通常、月経が始まると基礎体温は下がり、低温期に向かっていきます。基礎体温が下がらず、高いままの状態が続く場合は、子宮内膜症の可能性があります。子宮内膜症とは、本来子宮内膜に増殖するはずの組織(またはこれと似た組織)が、何らかの原因によって子宮内膜以外の場所に増殖してしまう病気です。子宮内膜で細胞が増殖することによって、受精卵が着床つまり妊娠しやすい環境となります。これが本来とは違う場所に増殖するため、不妊の原因となってしまいます。

子宮内膜症の主な症状は、激しい月経痛です。痛みの感じ方には個人差があるため、一概には言えませんが、①鎮痛剤が欠かせないほどの痛み、②学校や職場に行けないほどの痛み、③月経痛によって吐き気や食欲不振といった別の症状も現れる、などが月経の度にある場合は、一度婦人科受診をお勧めします。また、本来の場所とは違う場所に増殖した子宮内膜は女性ホルモンの影響を受けて増殖していくため、治療せずに放置していても症状が治まることはなく、徐々に悪化していきます。


(3)高温期が短い(14日未満)タイプ

通常、高温期は2週間(14日)以上続いて月経を迎えます。しかし、中には14日よりも短い日数で基礎体温が下がってしまうケースがあります。これは、高温期のカギとなる黄体の働きが十分ではないために起こるもので、黄体機能不全などの病気が考えられます。黄体の働きが十分でないと、受精卵が着床しやすい環境が子宮内で整わないため、不妊の原因となります。

おわりに

今回は基礎体温を測るメリット、基礎体温の正しい測り方、正しい基礎体温と異常な基礎体温についてご紹介しました。基礎体温を測る大切さは理解していただけましたか?

基礎体温を測ることには、自分の身体のことを知って、月経予定日を把握したり、病気の早期発見につながったりと多くのメリットがあります。

今まで基礎体温を測ることにあまり意味が見出せなかった方も、これを機に基礎体温を測る習慣をつくってみてはいかがでしょうか?

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野 
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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