はじめに

頭痛は、様々な場面で起こり、私たちを悩ませます。一言で頭痛といってもその原因は様々で、中には命にかかわるものも存在することをご存知でしょうか。
今回は命に関わらないものから危険なものまで、その様々な原因を紹介し、原因ごとの対策もお教えします。

頭が痛くなる原因とは?

頭痛は大きく分けると2種類存在し、それぞれおおまかに原因が違ってきます。

1つが症候性頭痛と呼ばれるもので、例えば脳腫瘍、脳内出血のようなはっきりとした原因となる病気あります。それらの原因となる病気によって頭の中の神経が危険信号を発し、痛みが現れてくるというわけです。

症候性頭痛は頭の中で病気が起こったことに対する危険信号として痛みが発生していることが多いため、放っておくと命にかかわる可能性もある危険な頭痛です。


もう1つは機能性頭痛と呼ばれるもので、頭の構造自体には異常がなく、頭にある筋肉や血管が痛むことによって引き起こされる頭痛を指します。

一般的に頭痛という場合はこの機能性頭痛と呼ばれる頭痛がほとんどと言われており、代表的なのが片頭痛や緊張型頭痛というものです。 これらの病気では明確な異常が存在するわけではないのですが、極度に固くなった筋肉や、広がった血管などが頭の神経を刺激することで痛みが引き起こされます。

機能性頭痛では原因が頭蓋骨の外側にある場合がほとんどなので、慢性的なものが多く、命に関わるようなことはほぼありません。


その他では、蓄膿症、副鼻腔炎のような鼻の病気、眼性疲労、緑内障などの目の病気、歯の病気、耳の病気などによって頭痛が引き起こされることがあります。それぞれの病気による痛みが、頭全体の痛みとして感じられるのです。

多くは急を要するものではありませんが、緑内障では、放置してしまうと失明に繋がる可能性があるため注意しなければなりません。

頭が痛いときはどうしたら良いの?

頭痛がするときの対処としてもっとも大切なのは、その頭痛が危険な頭痛なのかそうでないのかを見分けることです。

頭痛の多くはそれほど命に関わる危険性がなく、ゆっくりと治療していけば問題はないのですが、危険な頭痛は見逃してしまうと命を落としたり、重大な後遺症が残ってしまったりします。なのでこういった危険な頭痛である可能性を感じたら、すぐに病院にかからなければなりません。

特に、普段から慢性的な頭痛を抱えている人は要注意です。頭痛が日常生活の一部となってしまっている人でも、危険な頭痛が突然起こってくる可能性はあり、そういった時にいつもの頭痛だと思って見逃してしまう危険性があるからです。
そうならないためにも、しっかり自分の頭痛が危険な頭痛なのか、そうでないのかを普段から意識しておかなければなりません。

では危険な頭痛を見分けるにはどうしたら良いのでしょうか。大切なのは、危険な頭痛の特徴をしっかりと覚えておくことです。

危険な頭痛のうち、最も注意しなければならないのが脳卒中、中でもくも膜下出血と呼ばれるものによる頭痛の場合です。
くも膜下出血の最も大きな特徴は、突然に、がんと殴られたような痛みがおこるということで、中には痛みの起こった時間を正確に何時何分と説明できるほど突然に起こります。また、吐き気や嘔吐を伴う場合も多いようです。
こういった痛みの場合は、すぐに医者にかからなければなりません。時間が経つほどに脳内での再出血や出血による脳の圧迫の危険性があがり、命に関わってくるためです。


次に注意すべきなのが解離性動脈瘤というもので、これは脳卒中の原因になることが知られてます。
解離性動脈瘤は40代の男性に多く、突然に起こる首や後頭部の痛みを特徴とします。またこの病気は頭の急な回転をきっかけとして発生することがあり、交通事故や水泳、ヨガなどで首の回転をしたあとに痛みが起きてきた場合は特に注意が必要です。


三番目は脳腫瘍です。脳腫瘍による頭痛では何日か、あるいは何ヶ月もかけて痛みが増してくる、朝起きた時に一番強く頭が痛む、という特徴があります。
また、脳腫瘍では吐き気がないのにもかかわらず突然吐いてしまい、吐いたあとは頭痛が楽になる、という特徴もあります。
これらに当てはまる頭痛であった場合は、早いうちに病院にかかりましょう。


最後はウイルス性髄膜炎です。
ウイルス性髄膜炎とは、風邪の原因となるウイルスが、頭の中にまで侵入してしまって炎症を引き起こすというもので、強い頭痛の原因となります。
多くの場合は安静にしていれば自然と治っていってしまうのですが、時には悪化して、脳全体の炎症へとつながってしまうこともあるのです。特にヘルペスと呼ばれるウイルスが脳の炎症を引き起こすと非常に死亡率が高いとされています。
なので、風邪を引いたあとに頭痛が長引くようであれば病院で一度検査を受けるようにしたほうがよいかもしれません。

部位別の頭痛の症状、原因、対策

では、今度は部位別に頭痛の種類を見ていきましょう。

<頭全体の痛み>
・くも膜下出血
先程も紹介した、くも膜下出血です。突然何かに殴られたような強い痛みを感じます。
原因は頭の中での出血で、すぐに救急車を呼んで医師に対処してもらわなければなりません。
・脳腫瘍
これも先程と同じく脳腫瘍による頭痛で、頭全体の痛みがだんだんと増してきます。
対策は医師による治療しかないので、疑いを持ったらすぐに病院にかかりましょう。
・ウイルス性髄膜炎
  ウイルスが頭の中にまで侵入してしまう病気で、頭全体のひどい頭痛を引き起こします。大抵
  は安静にしていることで自然と治りますが、症状がひどくなってきたり、長引いたりする場合
  は病院にかかるようにしましょう。
・緊張型頭痛
  緊張型頭痛は機能性頭痛の一種で、頭全体がぎゅーっと締め付けられるような頭痛を引き起こ
  します。これは同じ姿勢を続けたりすることによって、肩や頭の筋肉が固く凝り固まってしま
  うことによるもので、対処法としては、こりを解きほぐし、楽な姿勢でリラックスする時間を
  作ることが有効です。他にも、筋肉をほぐす薬剤や、理学療法なども有効とされています。

<頭の後側の痛み>
・解離性動脈瘤
  先程も登場した解離性動脈瘤です。何らかの原因で動脈の壁が裂けてしまうことによって起こ
  り、首のうしろから後頭部にかけて痛みを感じます。脳内出血の原因にもなりうるので、早め
  に医師にかからなければなりません。
・後頭神経痛
  後頭神経痛は、後頭神経という頭の表面の感覚を感じる神経が、筋肉の圧迫などによって刺激
  され、ピリピリとした痛みを感じる病気です。主に頭の後ろかてっぺんにかけて、あるいは頭
  の両側からてっぺんにかけて、痛みを感じます。
  治療には医師の処方する薬が必要であるため、医師に相談しましょう。

<頭の前側の痛み>
・群発頭痛
  群発頭痛は男性に多く、毎日ほぼ同じ時間帯に目から額にかけて片側の激しい痛みを
  感じるのが特徴です。原因はよくわかっていませんが、アルコールをきっかけとして痛みが発
  生するという事が知られています。治療法としては、酸素吸入や薬の投与などがあるため、医
  師にかかって相談するのが良いでしょう。

<頭の片側の痛み>
・片頭痛
  片頭痛は、頭の血管が必要以上に広がってしまうことによって起こるとされている頭痛で、頭
  の片側が脈にあわせてズキンズキンと痛むのが特徴です。また、痛みに伴って吐き気を感じた
  り、音や光によって頭痛がひどくなったりといった症状もみられることがあります。
  片頭痛では市販の頭痛薬が効かないことが多いのですが、医師の処方する薬によって痛みを抑
  えることができます。あまりに頭痛の頻度が高い場合では、片頭痛を予防する薬を用いること
  もあるようです。

  また自分でできる対処法としては、こめかみの部分の血管を抑えたり、痛みのある部分を冷や
  したりすることでも、痛みを軽くできるようです。

頭痛で吐き気を伴う原因は?

多くの場合、頭痛には吐き気を伴います。これはなぜかというと、吐き気を感じる役割をしている嘔吐反射中枢と頭の痛みを感じる神経が近くに存在しているためで、痛みの信号が神経を通るときに一緒に嘔吐反射中枢を刺激してしまうからなのです。

特に強い痛みであればあるほど、嘔吐反射中枢も強く刺激されて吐き気も強く感じることになるので、注意しなければなりません。 

まとめ

よく話題にも上がり、身近に感じる頭痛ですが、なかには恐ろしい結果につながるものもあります。
今回の記事では、そんな見分けるべき頭痛の特徴をまとめたので、少しでも当てはまるな、と感じたら病院にかかってください。
そうでない頭痛でも、薬や治療によってよくなる可能性は十分にあるので、一度医師に相談してみるのがおすすめです。

監修

・総合診療医 院長 豊田 早苗

・総合診療医 院長 豊田 早苗

専門分野 
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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