はじめに

食物アレルギーは子どもに起こることが多いですが、大人になってからも突発的に起こることがあります。食物アレルギーの原因食材として、鶏卵、牛乳に続いて3番目に多いのが小麦アレルギーです。

小麦は離乳食期から使用する食材の一つであり、多くの食品に含まれるので気にする保護者の方も多いようです。そこで今回は、小麦アレルギーについて原因や症状、治療法についてまとめてみました。

小麦アレルギーの原因

人間の体は、外部から異物が入ったと感じると免疫グロブリンE(IgE抗体)という抗体を産生して異物を排除しようとします。このときに起こる反応が過剰になり、人間にとって障害を及ぼす状態になることをアレルギーといいます。

小麦アレルギーの場合、小麦に含まれるたんぱく質を体が異物として扱い、免疫グロブリンEを生産してしまいます。特に乳幼児は、胃腸の機能が未熟なためアレルギーを起こしやすいですが、成長とともに胃腸の機能が備わってくると小麦に含まれるたんぱく質を分解できるようになってくるため、アレルギーが改善することも多いです。

また、小麦以外の大麦、ライ麦、オート麦も小麦とたんぱく質の構造が似ており、同じようにアレルギー症状を起こしてしまう人もいますので注意が必要です。

小麦アレルギーの症状

食物アレルギーの場合、症状がでるまでの時間は短く、原因となる食材を口にした直後から約2時間以内にはアレルギー症状が発現します。小麦アレルギーの際にでる症状としては次のようなものがあります。

1. 皮膚
かゆみ、赤み、蕁麻疹

2. 口やのど
唇・舌・のどの違和感や腫れ、かゆみ、口内炎、声の枯れ

3. 消火器
腹痛、吐き気、嘔吐、下痢、血便

4. 眼
充血、まぶたの腫れ、かゆみ、涙

5. 呼吸器
くしゃみ、鼻水、鼻づまり、咳、喘鳴、呼吸困難

上記の症状が複数同時に起こる場合を『アナフィラキシーショック』と言います。ひどい場合には急激な血圧低下、頻脈、意識消失などを伴うショック状態に陥ることもありますので、注意が必要です。

また、小麦は『食物依存性運動誘発性アナフィラキシー』という特別なアレルギーを起こすこともあります。『食物依存性運動誘発性アナフィラキシー』とは、アレルギーの原因となる食材を口にしただけではアレルギー反応が起きないのに、食べた後に運動することでアレルギー症状が誘発されるというものです。全身の蕁麻疹、血圧低下、呼吸困難、意識レベル低下など重篤なアレルギー症状を引き起こすことがあります。

小麦アレルギーの治療法

食物アレルギーの治療は大きく分けて3段階からなります。

1. アレルゲンの特定

食物アレルギーの治療を行うにあたってまず重要なのが、アレルギーの原因となっている物質を正確に特定することです。

血液検査やアレルゲンを皮膚に乗せて反応をみる皮膚クリップテストといった基本的な検査のほかに、アレルゲンと思われる物質を数週間除去して症状がでないか確認する食物除去試験、アレルギー症状がでても対応できる病院内でアレルゲンと思われる物質を少しずつ量を増やしながら摂取してみる食物負荷試験などがあります。これらの検査結果から、アレルゲンの特定とアレルギーの程度を明確にします。

2. アレルギー物質の除去

アレルゲンが特定でき、その程度が重篤な場合はその物質を一定期間完全に除去する『除去食療法』を行います。

重篤な場合とは、少量の摂取でもアナフィラキシーショックを起こしてしまう場合、アレルギー症状が強く日常生活に支障をきたす場合、アレルギー薬を使用しても効果がみられない場合などを言います。『除去食療法』を行う期間については症状の強さなどから医師が判断しますが、だいたい1~2年ほど行うことになります。

3. アレルギー物質の再開

『除去食療法』を一定期間行った後、またはアレルギー症状が強くなく完全な除去までは必要ないと判断された場合は、アレルギー物質の摂取を少しずつ再開していきます。アレルギー反応がでないか確認しながら、通常の量を摂取するまで1年ほどかけて戻していきます。

小麦アレルギーに注意が必要な食品とは

小麦アレルギーであることが判明した場合、日頃から小麦を含んでいる食品に注意していかなければならないことになります。パンやうどん、スポンジケーキやクッキーなど小麦を主成分としているものは分かりやすいのですが、それ以外にも微量ながら小麦の成分を含んでいる食品が多々あります。
そこで、ここでは意外と見落としがちな小麦を含む食品についてまとめてみました。

1. 麦茶、ブレンド茶

麦茶は大麦から作られており、小麦アレルギーの方はアレルギー症状がでる場合があります。食品に比べて体内への吸収も早いため、短時間で症状がでることがありますし、飲まなくても皮膚に触れることで発疹がでることがありますので、特に小さなお子様は注意が必要です。

また、最近は色々な種類のお茶をブレンドしたお茶がよく売られていますが、その中には小麦や大麦が微量ながら含まれている場合がありますので成分表をよく見ておく必要があります。

2. シチュー、ホワイトソース、ミートソース

シチュー系の料理はとろみをつけるために小麦を使用しています。ホワイトソースだけでなくミートソースにも使用されている場合があります。パスタは注意していてもリゾットならと安心してしまいがちですが、リゾットもソースに小麦が使用されていることは大いにあり得るので注意が必要です。

3. フライ、天ぷら、ムニエル

フライや天ぷらは衣に小麦が使用されています。また、ムニエルも魚などに薄く小麦粉をはたいて焼くという調理法になりますので、注意しましょう。

4. ハンバーグ

家庭内で小麦粉を使用しないハンバーグを作れば全く問題ありませんが、外食などで食べるハンバーグにはつなぎに小麦粉を使用している場合があります。

5. 蕎麦

市販のそばは小麦粉とそば粉をブレンドしたものが多いようです。そばアレルギーがない場合には、十割蕎麦を選ぶようにすることで小麦を回避することができます。

6. お麩

離乳食にもよく使用されるお麩ですが、小麦グルテンという成分から作られています。お味噌汁などに含まれていることがありますので、外食時は確認するようにしましょう。

7. 醤油

家庭での調理には欠かせない調味料ですが、原料に小麦が含まれています。小麦アレルギー用の小麦を含まない醤油も販売されているようなので、そういった代用品で対処するのもよいでしょう。
ここまで小麦を含む食品や飲料を並べてみましたが、パンではアレルギー症状がでるのにうどんは問題ないというように同じ小麦を使用していてもアレルギー症状がでる食品とでない食品がある場合があります。
この理由ははっきりと解明されていませんので、それぞれの人が実際に食べたときの反応を優先するしかありません。

また、卵アレルギーの方は、加熱処理をすることでアレルギーを起こさないようになることもありますが、小麦の場合は加熱処理を行ってもたんぱく質の構造が変化しないので、アレルギー症状を抑えることはできません。これらのポイントをおさえて、知らないうちに許容量以上の小麦成分を摂取してしまわないように注意して下さい。

おわりに

今回は小麦アレルギーについて原因や症状、治療法をまとめていきましたが、アレルギーの反応は個人によって異なるので、あくまでも一般論になります。
うまくアレルギーと付き合いながら克服していけるように、ご自分の体の反応をしっかりと観察し、主治医に相談しながら治療をすすめてみてください。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野 
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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