はじめに

禁煙をすると離脱症状が起こります。

タバコには主にニコチンやタールといった物質が含まれていますが、このうちの「ニコチン」に依存性があります。タバコを吸い続けていると、このニコチンに脳が反応し、脳にあるニコチン受容体という部分にニコチンがくっつくことで、「ドーパミン」という快感を感じさせる物質が放出されます。これが依存性の正体です。

ニコチンを取り入れれば「吸うと安心する」といった快楽が得られ、脳はもっとニコチンをほしがります。それによって、タバコを吸いたくなるのです。タバコをやめたくてもやめられない人の原因はここにあります。

しかし、このニコチンが切れてくると身体にあらゆる症状がでます。これが、離脱症状です。

離脱症状とは

離脱症状とは、薬など依存性のあるものをやめたことによって現れる症状のことを指します。タバコの場合は、ニコチンに依存性があり、日常的に身体に取り入れていたものを急にやめてしまうと身体は「入ってきて当たり前」だと認識していたものが急になくなってしまうことになります。
それによって、身体に何かしら影響が及び、それが症状として現れるのです。

禁煙の離脱症状にはどんなものがあるか

禁煙の主な症状としては、以下の6つがあげられます。

・眠気、倦怠感
・イライラする、不安になる
・ぼんやりする、集中できない
・めまいや立ちくらみ、頭痛
・眠れない
・便秘

様々な症状が出ますが、このような症状は禁煙効果により起こることになりますので、身体にとっては正常な反応となり安心して頂ければと思います。

離脱症状の期間

離脱症状の期間は、それまでどのくらいの年数タバコを吸っていたか、1日にどれくらい吸っていたかなどによっても異なり、長い期間、そして1日の本数が多いほど離脱症状の期間は長くなるといわれています。また、離脱症状のピークは個人差はありますが、おおよそ2~3日から1週間程度といわれていますが、長い人は2週間以上にもわたる人もいます。これは、どんな症状が出るかによっても期間は異なります。ですが、この離脱症状が辛くてまたタバコを吸ってしまうと、振り出しに逆戻りになってしまいます。そのため、つらい離脱方法を緩和させる方法をご紹介します。

離脱症状を緩和させる方法

それでは、離脱症状を緩和させる、4つの効果的な方法をご紹介します。

ゆっくり深呼吸

深呼吸には身体を落ち着かせる作用があります。そのため、イライラしたり不安になったりしたときにおすすめです。イライラしたり不安になったりするときは、交感神経が優位になっています。交感神経とは身体を興奮状態にさせる作用があります。逆に副交感神経とは、身体をリラックスさせたり落ち着かせたりする作用があります。

実は浅くて速い呼吸のときには、この交感神経をさらに緊張させることが分かっています。そのため、ゆっくりと深呼吸をすることで副交感神経が優位になり、気持ちに落ち着きを取り戻せると考えられます。
特に副交感神経を優位にさせるには「息を吐くこと」に意識することが大切です。やり方としては、息を吸うときは口ではなく鼻から深く吸い込み、吐くときは口から細くゆっくりと吐きます。できればこれを5分ほど続けると、効果が表れやすくなります。

眠いときやだるいときは寝る、休む

とにかく離脱症状がつらい期間は、我慢しないことが大切です。眠いときには寝て頭を休めたり、リラックスすることは大切です。ニコチンは活動している以外にも、寝ている時間にもどんどん体外へ出ていきます。そのため、つらい離脱症状期間を乗り越えるには、自分が一番楽な過ごし方をすることが効果的です。

体を動かす、ストレッチをする

身体を動かしたりストレッチをすることで、身体の筋肉がほぐれます。また、運動をすることによって、血液循環がよくなり、酸素が脳をはじめ、全身にいきわたるようになります。これによりリフレッシュの効果が期待できたり、集中できないときやモチベーションが上がらないときの活力となります。

また、離脱症状で不眠に悩む方にもおすすめです。運動することで身体が適度な疲労を感じ、良質な睡眠を得ることにもつながります。

さらに、離脱症状で便秘に悩む方にもおすすめな方法だと言えます。便秘は腸の蠕動運動が低下することによっておこりますが、運動することで身体の血液循環をよくし、腸への血液量も増えます。これにより蠕動運動が促進されます。また腹筋や背筋など腰回りの筋肉を鍛えることで、排便に必要な筋肉が鍛えられるので、腹筋・背筋などの筋肉トレーニングや、腰回しなどの運動も効果的です。

飴やガムなどで気を紛らわす

どうしてもタバコを吸いたくなってしまったら、飴やガムなどを口に入れて、口さみしさを紛らわすといったことも手段の一つです。中には禁煙飴や、ニコチネルTTSのような禁煙をサポートしてくれるものもあるので、有効に活用してみましょう。

終わりに

禁煙による離脱症状はさまざまなものがあり、症状が出ている期間はとてもつらい思いをされると思います。ですが、これらの離脱症状がでるということは、身体にとっては正常な反応なのです。そのため、いかにそのつらい離脱症状の期間をのりきるかによって、禁煙できるかできないかに分かれるのです。離脱症状はつらいですが、その先には禁煙成功の達成感と健康があります。そのためにも、自分に合った対処法を見つけ、上手に離脱症状とつきあいましょう。それが禁煙への第一歩へつながります。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野 
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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