プロテインの働き

『プロテイン』とは、三大栄養素の1つである『タンパク質』のことです。市販されているプロテインは、大豆や牛乳などのさまざまな原料から、タンパク質を精製したサプリメントのことです。
そのため、プロテインの働きとはすなわち、身体の中でのタンパク質の働きとなります。

食事で摂取したタンパク質は、胃や腸でアミノ酸まで分解・吸収され、血中や各組織に運ばれて体内タンパク質へと合成されるのを待ちます。
この時、合成をされずに血中や各組織に残るアミノ酸があり、これを『遊離アミノ酸』といいます。この遊離アミノ酸の総量を『アミノ酸プール』と呼び、これが『骨格筋(筋肉)』を作り出しています。
骨格筋は、1kg当たり3~4gの遊離アミノ酸を貯蔵しています。アミノ酸プールがいっぱいになると、アミノ酸は分解され、主に尿として排泄したり、グリコーゲンや脂肪として貯蔵されたりします。

タンパク質は分解されてアミノ酸になった後、必要な部位でタンパク質となったり、筋肉や臓器などの構成成分となったりします。筋トレをして筋肉を大きくしたい方にとっては、筋肉の構成要素であるタンパク質は大量に必要です。
さらに、タンパク質は、『成長ホルモン』や『インシュリン』を作る材料にもなります。これらには、筋肉を肥大するために必要な『同化作用(細胞が栄養吸収する作用)』があるため、筋肉を大きくするのに大切です。

プロテインの種類

1. ホエイプロテイン

ホエイプロテインは牛乳から乳脂肪やカゼインを取り除いて作られます。製法にもよりますが、吸収力が高いことが特徴です。トレーニング後だけでなく、トレーング前の食事が摂れない時などにも有用です。
ホエイプロテインは製法による種類の違いがあります。

■WPC製法
WPC製法は、『濃縮乳清製法』や『濃縮膜処理』とも呼ばれ、原料の乳清を膜でろ過して濃縮している製法です。筋肥大に必要な材料のタンパク質だけでなく、ビタミンやミネラル等も摂取することができます。
しかし、『乳糖(ラクトース)』と呼ばれる、牛乳に約99%含まれる糖分も含まれているため、乳糖に耐性がない方は下痢になってしまいます。
他の製法のホエイプロテインと比べると、コストが安いため、選びやすいですが、牛乳を飲んで下痢をしたことがある方は、この製法のホエイプロテインは飲まない方が良いと思われます。

■WPI製法
WPI製法は、『分離乳清タンパク質製法』や『イオン交換法』とも呼ばれています。この製法では、WPC製法で分離されたタンパク質をさらにイオン交換しているため、タンパク質以外の成分であるビタミンやミネラルが除去されています。
しかし、先ほどご説明した、乳糖がほとんど存在しないため、お腹を壊して下痢をしてしまうことがなくなります。また、タンパク質の吸収力がWPC製法よりは良いともいわれています。
イオン交換する手間がかかるため、価格は若干高いようです。

■WPH製法
WPHは『加水分解乳清タンパク質』や『加水分解ペプチド』とも呼ばれています。微生物に含まれる酵素などを使い、WPCを分離しています。
ホエイ含有率が約95%と高くなり、吸収が早いため、トレーニング後に飲むプロテインとして最適といえます。
しかし、価格も高めのものが多いので、トレーニング中級者以上におすすめします。

2. カゼインプロテイン

ホエイプロテインと同じく牛乳を主成分としています。ホエイプロテインが水溶性で吸収が早いのに対し、カゼインプロテインは不溶性で固まりやすく、体への吸収速度がゆっくりであることが特徴です。

睡眠前にホエイプロテインを飲んでも吸収が早い分、すぐに体内で消費されてしまいます。しかし、カゼインプロテインはゆっくりと吸収されるため、睡眠中に体内のタンパク質を満たした状態を保ち、筋トレによる筋肥大を促進します。

3. ソイプロテイン

ソイプロテインは、大豆に含まれるタンパク質を精製して粉末にしたものです。ソイプロテインも吸収が遅いため、睡眠前の摂取に向いています。
また、牛乳、ホエイ、カゼインなどのアレルギーがある方には代替品として有用です。
しかし、一説には植物性タンパク質は吸収が非常に悪いと言われています。現在もその説が正しいかどうかは不明ですが、筋トレの目的である筋肉を付けるためには、ファーストチョイスにならないプロテインと言えます。

1日に必要なタンパク質の量

1日に必要なタンパク質の量は年齢や体重によって異なり、研究によっても大きな差があります。
これが正しいと言える答えは出ていませんが、体重60kgの成人で、1日180gの筋肉などの組織を合成し、同量の180gを分解しているという報告もあるようです。合成に利用される180gの内100gは体内のアミノ酸プール(アミノ酸の貯蔵)から再利用されていますが、残りの80gは食事から摂取した新しいタンパク質が利用されます。

したがって、1日に必要なタンパク質は「体重×1.4~2.5g」と言われています。筋トレをして筋肉を肥大させたい方は「体重×2g以上」のタンパク質を摂るのが好ましいでしょう。体重60kgなら120g以上のタンパク質が必要となります。
食事で摂取しようとすると、卵なら20個分、鶏胸肉なら480g以上と、かなりの量になります。
また、1回の食事で吸収できるタンパク質の量は20~30gと言われていますが、これにも諸説あり、必要以上にこだわる必要性はないと思います。

プロテイン摂取のポイント

まずは、以下の方法でタンパク質の摂取量、食事回数、プロテインの使用を考えましょう。

1. タンパク質の必要量
自分の1日のタンパク質の摂取量を「体重×1.4~2.5g」で計算する。

2. 食事回数
1日のタンパク質の摂取量を食事回数で割る。生活に支障のない範囲で4食以上に分けて摂るのがおすすめです。

3. プロテインの使用
食事でタンパク質量の確保ができない場合、食事自体が摂れない場合にプロテインで補うようにします。

プロテインを飲むタイミング

プロテインを飲むタイミングは主に4つあります。1~4のタイミングでは、ホエイプロテインを摂取するのが良いでしょう。5の就寝前は、カゼインプロテインかソイプロテインをおすすめします。

1. 筋トレ前

筋トレの1時間ほど前にプロテインを飲みましょう。

筋トレしている時は、体内に蓄積してある糖分を使用してエネルギーを作り出しますが、トレーニング中に枯渇すると、アミノ酸プールにあるアミノ酸を使用してエネルギーを作り出します。

常にアミノ酸プールを満たした状態を目指すことが筋肥大につながるため、トレーニング前に飲むのが良いでしょう。そうすることで、トレーング中からすでに始まる筋肉の回復を補助することができます。

2. 筋トレ後

筋トレ終了後は『ゴールデンタイム』と呼ばれるほどタンパク質の吸収が良くなります。効果的に筋肥大をさせるために、このタイミングでタンパク質を摂取しましょう。
この筋トレ後に限っては、食事よりプロテインの方が筋肥大に有効と言えそうです。

3. 食事時にタンパク質量が足りない時

タンパク質をアミノ酸に分解して、分解したアミノ酸を筋肉のタンパク質に合成するためには、タンパク質だけでなく、さまざまな栄養素が必要となります。
そのため、食事にタンパク質が足りない時はプロテインを飲んで補うと良いでしょう。食事で摂取する他の栄養素との相乗効果や、インシュリンの分泌などによる吸収力の向上も期待できます。

4. 食事をとれない時

現代では、時間に追われる生活をしている方が多いと思います。4食以上を食べるのは、なかなか難しいため、代わりにプロテインを摂取するのも良いでしょう。
しかし、フィットネス業界ではプロテインだけより、しっかりと食事でタンパク質などの筋肥大に重要な栄養素を取るのが重要だと強く言われています。そのため、食事の代わりにプロテインを摂取するは最低限にしましょう。

5. 就寝前

諸説ありますが、睡眠時に成長ホルモンなどのホルモン分泌が盛んになることから、睡眠中が筋肥大に重要な時間と言われています。
睡眠時には栄養を取ることができないので、アミノ酸プールのアミノ酸が少なくなるのを防ぐために、消化吸収がゆっくりカゼイプロテインを摂取ることが推奨されています。
ある研究では、就寝30分前に40gのカゼインを摂取すると、筋肥大を促進させることが証明されています。カゼイプロテインが体に合わない場合は、ソイプロテインで代用するのも良いかもしれません。

おわりに

プロテインの役割や種類ごとの特長、1日に必要な量や飲むタイミングについて解説しました。

タンパク質の摂取量やタイミングには諸説ありますが、初心者は、まずは食事内容と回数を見直し、プロテインだけに頼らずに食事でタンパク質をとるようにしましょう。
プロテインの飲むのは、オーソドックスに運動前後と就寝前とし、トレーニングに慣れてきたら徐々に回数を増やすことを考えると良いと思います。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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