指圧とあん摩の違い

■日本生まれの指圧、中国生まれのあん摩

指圧は、一点に圧をかけることをメインにした独特の施術法です。英語でも”Shiatsu”と呼ばれるほど一般に親しまれ、日本のマッサージといえば「指圧」というイメージを持つ外国人も多く、世界に浸透しています。
一方、あん摩は古代中国で生まれ、奈良時代に日本へ伝わったとされる手技療法です。
『按摩』とも書き、『按』はおさえることを、『摩』はなでることを意味します。

このように、指圧とあん摩は歴史が違います。日本発祥と言われている指圧と、中国発祥のあん摩に加え、マッサージはヨーロッパが発祥といったイメージです。
簡単に言えば、押すことをメインとしているのが指圧で、揉むことをメインとしているのがあん摩ということです。

■どちらも国家資格が必要

近年の日本では、マッサージという言葉が急速に普及し始め、指圧もあん摩もマッサージのカテゴリーの一つといった分類になってしまいました。

しかし、あん摩や指圧を用いた施術をするには、『あん摩マッサージ指圧師』という国家資格の取得が必要です。施術者は国や県から認可を受けた学校で、3年以上生理学や解剖学など、人体についての正しい知識を学んだ者に限られます。
街のリラクゼーションサロンと違い、国家資格を持った専門家が『触診』や『手技』と呼ばれる細かな手の動きを用いた施術を行います。

指圧の特長と効果

指圧は、明治から大正時代にかけて日本で成立しました。「指圧の心は母心。押せば命の泉湧く」というのは、現代指圧の基礎を作ったとされる浪越氏の有名な言葉です。

指圧の特長は、手や指を使って全身の筋肉の凝りを刺激することで、血流を改善することです。
筋肉が硬くこわばって動かなくなる状態を『拘縮(こうしゅく)』と言い、これは姿勢や体の使い方によって筋肉が疲労し、血行不良になることで起こります。
このように拘縮した筋肉を指圧する(手や親指で一時的に強く圧迫する)ことで、『血管拡張物質』を発生させます。これにより、硬くなった筋肉がほぐれてリラックスし、血流の改善を促します。
局所の血流を改善することにより、痛みや凝りを軽減させる効果があると考えられています。

あん摩の特長と効果

中国から伝わったあん摩は、東洋医学の考えに基づき、『気血(きけつ)』や『経絡(けいらく)』の変調を整えることを目的とします。
「あんまさん」と呼ばれ、昔から親しまれてきた施術者の中には、目の見えない方も多かったようです。しかし、最近では晴眼者(せいがんしゃ)の割合も増えてきています。

あん摩の特長は主に、『遠心性(えんしんせい)』の手技を用い施術することです。遠心性とは、体の中心、すなわち心臓から手足に向かって施術を行うことです。
指圧と違って押すだけでなく、「もむ」「さする」「なでる」「たたく」などの手技を使って筋肉をほぐします。こうして全身の血行を良くすることで、疲労や肩こりなどを改善させていきます。
また、筋肉内組織の『リンパ液』の循環に働きかけることにより、新陳代謝を促し、むくみ改善などにも効果が期待できます。

指圧、あん摩はどんな人におすすめ?

■改善が期待できる症状

指圧やあん摩は、以下のような症状のある方におすすめです。

・身体の変調
・疲労
・肩こり
・頭痛
・めまい
・不眠
・神経過敏
・食欲不振
・便秘
・腰痛

指圧やあん摩はヨーロッパから用いられたマッサージと違い、衣類やタオルの上から施術を行うことが多いので、着替えに抵抗がある方や、くすぐったがりの方にもおすすめです。

■病気の予防、健康管理にも効果的

指圧やあん摩は東洋医学の概念にのっとっているので、治療としてだけではなく、体質の改善や健康増進といった健康管理にも効果が期待できます。
東洋医学の基本的概念には、『未病治(かかる前の病を事前に予防すること)』があり、指圧やあん摩は病気にならないための健康的な身体づくりにも優れた効果を発揮します。
リラックス効果により心身のバランスを調整し、自己治癒力を高めて健康な生活を送る手助けをするのです。

おわりに

指圧とあん摩の違いと、それぞれの特長や効果について、ご説明しました。

指圧やあん摩は一度経験するとその心地よさからリピーターになる方が多くいらっしゃいます。うまく生活に取り込むことで気分転換やリフレッシュ、リラックスすることができるだけでなく、人間が本来持っている自然治癒力が高められます。

痛みや凝り、めまいや不眠などさまざまな症状の改善にも効果が期待できるので、忙しい日々の中でお疲れの方は、ぜひ一度試していただければと思います。

執筆

はり・きゅう師 村中 僚太

はり・きゅう師 村中 僚太

専門分野
鍼灸、介護、メディテーション、海外鍼灸

経歴
2008年 はり・きゅう師免許取得
2012年 国立大学法人筑波技術大学臨床研修課程終了
2013年 英国spa会社 Steinerにて豪華客船鍼灸師としてのキャリアをスタート、6年で約4,000人の外国人を治療
2019年 コーカサス地方のジョージアという国でJapanese Acupuncture Tbilisiを開業

資格
はり、きゅう師、ケアマネージャー

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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