腹筋の構造

『腹筋』は腹部にある筋肉の総称で、『腹直筋』、『外腹斜筋』、『内腹斜筋』、『腹横筋』の4つの筋肉から構成されています。

■腹直筋の構造と働き

腹直筋は、みぞおちから『恥骨(股間前面に触れる骨)』に向けて縦方向に走行している筋肉で、腹筋群の中で最も浅層(皮膚に近い部分)にあります。
体幹を屈曲させる(腰を曲げる、前かがみになる)ことが、主な作用です。寝ている状態から起き上がるときや、重たいものを持ち上げるときなどに強く働きます。
『シックスパック』と呼ばれる腹部の6つの盛り上がりは、腹直筋の6つの筋腹が、皮膚の表面から見えている状態をいいます。

■外腹斜筋の構造と働き

外腹斜筋は体幹の側面にあります。肋骨の外側から始まり、体幹に沿って斜め下前方向に走行し、腹直筋の外縁や鼠径部(足のつけ根)に停止します。
体幹を回旋させる(腰をひねる)ことが主な作用であり、右の外腹斜筋は左回旋(左向きのひねり)のときに、左の外腹斜筋は右回旋(右向きのひねり)のときに働きます。
外腹斜筋が発達していて脂肪の少ない方では、横腹から腹直筋の外縁にかけ、外腹斜筋の膨隆が皮膚の上からでも見えます。

■内腹斜筋の構造と働き

内腹斜筋は外腹斜筋と対角方向になる走行をしています。腰部や骨盤の後縁(両サイドの出っ張った部分)から始まり、体幹に沿って斜め上前方向に走行し、腹直筋の外縁に停止します。
外腹斜筋と同様、体幹を回旋させる(腰をひねる)ことが主な作用ですが、筋肉の走行の違いから、外腹斜筋と反対に動きます。つまり、左の内腹斜筋は左回旋(左向きのひねり)のときに、右の内腹斜筋は右回旋(右向きのひねり)のときに働きます。

■腹横筋の構造と働き

腹横筋は肋骨と骨盤の間の骨のない部分を埋めるように、巻き付いています。横方向の走行をした4つの腹筋群の中で最も深層にある筋肉です。
他の3つの腹筋群のように体幹を動かすことではなく、腰のコルセットのように体幹を安定させたり、固定させたりするインナーマッスルとして作用します。

シックスパックを作る筋トレ

シックスパックを作るためには腹直筋を鍛えてしっかり筋肉を膨隆させる必要があります。

■トランクカール

腹直筋の代表的なトレーニングです。

① 両膝を立てて仰向けに寝ます。
② 両手を頭の後ろまたは胸の前に組み、おへそをのぞくように頭、肩甲骨の順に持ち上げます。
③ 肩甲骨が床から浮いたら、今度は肩甲骨、頭の順にゆっくり下ろしていきます。
④ 手順②、③の動きを繰り返し行います。

このトレーニングができるようになったら、肩甲骨までだけでなく、完全に上半身を起こすところまで行います。
さらに負荷を上げるためには、おもりとなるボールなどをお腹の上に持って行うと、より効果的です。
反動をつけることなく、ゆっくりと行うようにしてください。

■プランク

腹直筋はもちろん、全ての腹筋群をバランスよく使って自分の身体を固定して支えるトレーニングです。

① 四つん這いの姿勢になり、両腕を肩幅に開きます。
② 肘を90度に曲げ、左右の肘から手首を平行にして床につきます。
③ 足を後ろに真っ直ぐ伸ばし、つま先だけ床につけ、腕とつま先だけで身体を支えます。
④ 横から見た時に肩から足首までが一直線になるように身体を浮かせ、30~60秒間、呼吸を止めることなく、この姿勢を維持します。

腰が反り過ぎたり、丸まったりしないように下腹を軽くへこますことと、肩に力が入り過ぎて肩がすくまないようにすることを意識してください。
また、肘でしっかりと床を押し、肩甲骨が背中から浮き出ないようにしましょう。

筋力的にこの姿勢を30秒間保持することが難しい方は、10秒間から始めてください。
また、つま先でなく膝をつき、膝下を床につかないように曲げて行ったりすると、負荷が下がります。

くびれを作る筋トレ

くびれを作るためには、腹横筋や腹斜筋を鍛えて体幹の側面を引き締める必要があります。

■ドローイン

腹横筋はなかなか収縮を感じるのが難しいので、腹横筋の単独収縮から始めます。
目に見える動きはありませんが、身体の力を抜いて腹横筋のみの収縮に集中すると効果が現れるでしょう。

① 両膝を立てて仰向けになり、身体の力を抜きます。
② 両手は体側の床面に置くか、下腹部に軽くあてるように置きます。
③ ゆっくりと息を吸いながら、3~5秒間かけてお腹をふくらませます。
④ 吸ったときよりもゆっくりと長く息を吐きながら、5~10秒間かけてお腹をへこませます。
⑤ 手順③、④のお腹の動きを協調させた呼吸を繰り返し行います。

■サイドブリッジ

主に腹横筋の力で身体を持ち上げるトレーニングです。

① 床に横向きに寝て、下になる方の肘から手首を身体の真横で床につき、上半身を支えるように起こします。
② 下になっている側の足の側面と肘から先だけが、床につくように腰を上げます。
③ 股関節や膝を伸ばし、頭の先から足首までが一直線になるようにします。
④ 手順③の姿勢まで腰を上げたら、今度はゆっくりと腰を床に下ろし、再び上げるという動作を繰り返し行います。
⑤ 片側が終わったら、身体の左右を変えて反対側も同じように行います。

筋力的にこの動作を正確に行うことが難しい方は、膝を曲げて足の側面でなく膝の側面を支点とし、身体を持ち上げるようにすると、負荷が下がります。

■サイドプランク

サイドブリッジで行った動きのまま固定し、身体を支えるトレーニングです。

① 床に横向きに寝て、下になる方の肘から手首を身体の真横で床につき、上半身を支えるように起こします。
② 下になっている側の足の側面と肘から先だけが、床につくように腰を上げます。
③ 股関節や膝を伸ばし、頭の先から足首までが一直線になるようにします。
④ 手順③の姿勢を30~60秒間、呼吸を止めることなく維持します。

サイドブリッジ同様、筋力的に姿勢の保持が難しい場合は足の側面ではなく膝の側面をつくようにすると、負荷が下がります。このとき両膝は90度程度に曲げ、肩から膝が一直線になるようにします。
また、姿勢の維持が難しい場合は、10秒間から始めましょう。

■トランクツイスト

腹斜筋を鍛える代表的なトレーニングです。

① 両膝を立てて仰向けに寝ます。
② 両手を頭の後ろまたは胸の前に組み、左肘が右膝につくように斜めにひねりながらゆっくりと起き上がります。
③ 左肘と右膝がついたら、ゆっくりと仰向けに戻ります。
④ 今度は右肘が左膝につくように斜めに捻りながらゆっくりと起き上がります。
⑤ 右肘と左膝がついたら、ゆっくりと仰向けに戻ります。
⑥ 手順②~⑤の動きを繰り返し行います。

ぽっこりお腹を防ぐ筋トレ

ぽっこりお腹を防ぐためには、腹部前面の腹直筋を引き締める必要があります。
特に出やすい下腹を引き締めるために、腹直筋の中でも、下部線維に負荷をかけることのできるトレーニングをご紹介します。

■レッグレイズ

① 両膝を立てて仰向けに寝ます。
② 両手は頭の後ろに組むか、体側の床の上に軽く置きます。
③ 両脚をそろえたまま膝を軽く曲げ、ゆっくりと上げていきます。
④ 両方の股関節が90度まで曲がったら、ゆっくりと両足を下ろしながら膝を伸ばしていきます。
⑤ 足が床につく一歩手前まできたら、またゆっくりと両足を上げていきます。
⑥ 手順③~⑤の動きを繰り返し行います。

■リバースクランチ

① 床の上に仰向けに寝て、身体の横のあたりで床に両手を置きます。
② 両足をくっつけた状態で膝を多少曲げ、足先が天井に向くように足を上げます。
③ 手の力や反動は使わないように気を付けながら、足先を天井に近づけるつもりでゆっくり腰を持ち上げていきます。
④ お尻が床から離れるところまで腰を持ち上げたら、ゆっくり腰を下ろしていきます。
⑤ 手順③、④の動きを繰り返し行います。

筋トレの頻度と時間

筋トレの効果を最大限に引き出すために、筋トレを行う最適な頻度や時間についてご説明します。

■同じ筋トレは2~3日に1回

10回連続で行うと、限界に達してしまうくらい追い込んだ強い負荷の筋トレを行うと、筋肉の線維では微細に断裂を起こします。
この断裂が修復される過程で、筋肉は『超回復』をします。超回復とは、元の筋力よりも強い力を発揮できる筋肉が作られることをいい、その過程には2~3日かかります。
微細断裂の修復が完了していない段階で、再び同じ筋肉に負荷をかけると、思うように筋肉が育ってくれなくなかったり、大きな損傷を負ったりしてしまいます。

よって、同じ筋肉に対する筋トレは2~3日以上あけて行う必要があります。
負荷が少なく、多くの回数を連続してこなせるような筋トレであれば、毎日行っても問題ありません。
ただし、この場合は筋持久力のトレーニングになり、筋肉の肥大は期待できませんので、注意してください。

■時間よりも回数やセット数

筋トレを行う時間は、何分でも構いません。
一つの筋トレのみ行う場合は、数分で終了することもあり、様々な筋肉に対して一度に筋トレを行う場合は、30分~1時間かかる場合もあります。

前に述べたように、同じ筋肉に対する筋トレは2~3日おきにするべきです。これをふまえると、週に1~2回筋トレの時間をとる方は、長い時間かけて全種類一気に行うこともできます。
一方、ほとんど毎日筋トレを行いたい方は、部位を分けて短時間ずつ筋トレを行うことになります。

また、筋トレを行う時間以上に大切なのが、1つの筋トレに対する回数やセット数です。
筋肉の肥大や引き締めを目的とした筋トレの場合、1つの種目に対して5~10回を1セットとし、それを2~3セット行うのが目安です。
これで全く筋肉に疲労を感じない場合は、その方にとって負荷が少なすぎるということになります。その場合は、筋トレのやり方を変化させたり、おもりをつけて行ったりするなど、負荷を増やすと良いでしょう。

おわりに

今回は、引き締まったお腹を手に入れるための腹筋トレーニングについてご紹介しました。
腹筋トレーニングといってもシックスパックやくびれ、下腹の引き締めなど、目的によって必要な筋トレも変わります。ご自身の目的に合ったトレーニングを適した頻度や負荷で行っていただきたいと思います。

また、筋トレの効果はすぐにはみられませんが、数週間以上継続することで、身体に変化が現れると思います。
ご自身の身体に期待した変化が出ているか、しっかりと確認しながら行いましょう。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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