漢方とは

漢方の考え方

漢方とは、中国の伝統医学の考え方です。
「病名ではなく病人をみる」という考え方に基づき、症状に合わせて漢方を選びます。
例えば、「鼻詰まり」の症状がある人に対し、鼻詰まりに効く薬を出すのではなく、その人の食生活、生活リズム、鼻詰まり以外の体の不調などを考慮して治療が行われます。

『漢方』と『漢方薬』

漢方と聞くと、薬局などに売っている漢方薬をイメージすると思いますが、実は漢方と漢方薬は別物です。
漢方は食生活や鍼灸なども含めた医学を指します。
一方、漢方薬は漢方の考え方に基づいて処方された医薬品のことです。

漢方を日常生活に取り入れる

漢方専門の仕事があったり、薬に関する仕事に就いている方の中にも、漢方を生涯学習としている方がいるほど、漢方は非常に奥深いものです。
漢方の考えに「人体も自然の一部」という考えがあります。漢方や漢方を形成する『生薬』は、人工的に作られたものではなく、すべて自然界にあるものから作られています。

例えば、代表的な漢方に『ヨクイニン』や『ショウキョウ』などがあります。これらの名前を聞いても、ピンとこない方も多いと思いますが、実際は食用としてなじみのある『はと麦』や『生姜』から作られています。
このように、成分が何からできているのかが分かってしまえば、日常生活に取り入れることは、それほど難しくないでしょう。

肌荒れの原因

皮膚は「内臓の鏡」、「体調の現れ」ともいわれるほど、身体のさまざまな変化を表しています。また、肌荒れの原因だけでなく、症状もニキビ、しわ、しみ、たるみ、赤みなどさまざまです。
ここでは、肌荒れの原因となる主なものを6つご紹介します。

紫外線

紫外線は夏にかけて特に強くなりますが、その時期に限らず、1年を通して私たちの肌に届いています。
紫外線に当たると、肌が乾燥したり、シミやたるみできたりするなど、あらゆる肌トラブルを引き起こします。

乾燥

冬は寒暖差の影響で、特に肌が乾燥しやすい季節です。また、夏場でもエアコンの風で肌が乾燥する方が増えています。
乾燥している肌では、表皮の外側にある角質層がめくれ、肌の水分が蒸発しやすくなっています。そのため、せっかく高級な美容液を使っても、蒸発して効果を発揮できないことがあります。

冷え

女性は男性に比べて筋肉量が少ないため、血流が悪くなり、体が冷えやすいです。冷えによって肌を含めた全身の新陳代謝が悪くなり、ターンオーバーが乱れてくすみができやすくなります。

ホルモンバランスの乱れ

女性ホルモンには『卵胞ホルモン』と『黄体ホルモン』があります。
卵胞ホルモンの『エストロゲン』は、肌や髪をつややかに整えたり、女性らしい身体を作ったりします。一方、黄体ホルモンの『プロゲステロン』は、妊娠には欠かせませんが、むくみや過剰な食欲の原因にもなります。
特に、生理前に黄体ホルモンの影響で、ニキビなどの肌トラブルがでてくる女性が多いです。
基本的には、黄体ホルモンが出る時期に肌トラブルが増え、卵胞ホルモンの時期に改善されていきますが、ホルモンバランスが乱れると、肌トラブルがおこる時期が増えてしまいます。

ストレス

ホルモンバランスが乱れる原因として一番多いのがストレスです。
ストレスはホルモンバランスだけでなく、自律神経にも影響します。自律神経の乱れにより、便秘や体の不調も現れ、その結果として肌荒れが起こります。

自分に合わないスキンケア

乾燥肌の方が洗浄力の高い洗顔料を使ったり、油脂の多い肌の方が油分の多い乳液を使ったりすると、肌荒れを悪化させてしまします。
また、自分に合わないスキンケアを続けていると、症状が悪化するだけでなく、他の肌トラブルも招いてしまします。

肌荒れに効く4つの漢方

当帰飲子(とうきいんし)

『当帰飲子』とは、10種類以上の生薬を混ぜた、乾燥肌に効果のある漢方です。
配合されている『四物湯(しもつとう)』という漢方の効果により、質のよい血液を作り出し、肌に栄養が運ばれます。これにより、肌の乾燥を防ぐことができます。

ヨクイニン

前にも少し触れましたが、ヨクイニンははと麦のことです。漢方だけでなく、『ハトムギエキス』としてサプリメントでも販売されています。
イボや肌のキメに効果が期待できるほか、体内のいらない水分や老廃物の排出も助けてくれます。

『薏苡仁湯(よくいにんとう)』という漢方薬もありますが、こちらは関節痛や筋肉痛に適したものですので、間違えないようにしてください。

桂枝茯苓丸薏苡仁(けしいぶくりょうがんよくいにん)

婦人薬の代表である『桂枝茯苓丸』にヨクイニンを足した漢方です。
桂枝茯苓丸は、年齢とともにひどくなる冷えや頭ののぼせに適した漢方です。それにヨクイニンを加えることで、ニキビやしみに効果的な漢方となります。

黄連解毒湯(おうれんげどくとう)

『黄連解毒湯』は口内炎ができやすい方や、肌の炎症が起きやすい方におすすめの漢方です。体にたまった余計な熱を取り除くことで、肌に作用します。
ただし、体を冷やす漢方なので、冷え性の方には向きません。

漢方を使った肌荒れ予防・対策レシピ

漢方を食材から取り入れるためのレシピをご紹介します。

はと麦のミネストローネ

【漢方の効果】
前項でご紹介したヨクイニン(はと麦)には、イボなどの肌トラブルを改善し、キメの細かい肌にしてくれる効果が期待できます。
また、トマトには、美白や抗酸化作用のある『ビタミンC』と『ビタミンE』が豊富に含まれているので、美肌を目指す方にぴったりの食材といえます。
【 材料 】(4人分)
・ 玉ねぎ         中1/2個
・ 人参           小1/2本
・ セロリ          1本
・ キャベツ         1~2枚
・ ホールトマト(カット)  1缶
・ ニンニク         1片
・ はと麦          50g
・ ローリエ      1枚
・ 塩            適量
・ こしょう         適量
・ オリーブオイル      大さじ1

【作り方】
① はとむぎを3時間ほど水につけておきます。
② 玉ねぎ、セロリを1cm角、人参を5mm角に切きります。
③ 鍋にオリーブオイルを入れて弱火にかけ、みじん切りにしたニンニクを炒めます。
④ ニンニクの香りが出たら、玉ねぎ、キャベツを加えて炒めます。
⑤ 玉ねぎに火が通ってきたら、人参、セロリを加えて炒めます。
⑥ 水650ccとホールトマトを加え、はと麦、ローリエを加えて煮込みます。
⑦ はと麦が柔らかくなったら、塩・こしょうで味を整えます。
美肌を作る - 薬膳レシピ
【引用元】ブヘサ中村固腸堂

鶏肉のトマト煮

【漢方の効果】
このレシピは、夏におすすめです。
トマトとナスなどの夏野菜は、強い紫外線を浴びて育つため、野菜自身に紫外線を防ぐ効果があります。その栄養を摂取することで、紫外線に負けない肌作りをサポートしてくれます。
また、鶏肉、トマト、ナスには、夏の紫外線で火照った体を冷やす効果や、滋養強壮効果があり、疲労回復にもつながります。

【材料】(2人分)
鶏もも肉      1枚
ナス        2分の1個
パプリカ      1個
ブロッコリー    2分の1束
マッシュルーム   2個
トマト缶      1缶
オリーブオイル   適量 
ニンニク      4分の
塩・こしょう    適量

【作り方】
① 鶏もも肉と野菜類、マッシュルームを食べやすい大きさに切り、ニンニクをスライスしておきます。
② フライパンにオリーブオイルをしき、ニンニクを加えて香りを移します。
③ 鶏もも肉→野菜類・マッシュルームの順番で入れ、火が通るまで炒めます。
④ トマト缶を加え、中火~弱火で煮込みます。
⑤ ブロッコリーが柔らかくなったら、塩・こしょうで味を調えます。

【アドバイス】
・鶏もも肉は皮を取った方が、余分な油を落とすことができます。
・オリーブオイルはサラダ油でも代用ができますが、オリーブオイルの方が生活習慣病の予防効果があります。
・最後に塩・こしょうで味を調えますが、少し控えた方が効果が高まります。

おわりに

漢方の肌荒れへの効果や、肌荒れのときに取り入れたい漢方、漢方を使ったレシピをご紹介しました。

漢方と聞くと、「苦そう」「難しそう」「お年寄りが飲むもの」などというイメージがあると思います。なかなかとっつきにくい印象ですが、食材に置き換えると、一気に身近なものに感じ、生活に取り入れやすくなると思います。
薬に抵抗がある方や自身の免疫で改善したい方は生活に取り入れてみてください!

監修

・救急医、内科医 増田陽子

・救急医、内科医 増田陽子

専門分野
微生物学、救急医療、老人医療

経歴
平成18年 Pittsburg State大学 生物学科微生物学・理学部生化化学 卒業
平成22 年 St. Methew School of Medicine 大学医学部 卒業
平成24年 Larkin Hospital勤務
平成26年 J.N.F Hospital 勤務

資格
日本医師資格
カリブ海医師資格
米国医師資格

関連する記事

関連するキーワード

著者